第7話

さて、ちょっと予想外の展開だな。

敵対関係かよ。ホントによく俺のこと村に置いてたな。

ブーストを暫く使い続けた性で頭が痛くなってくるし、翻訳に容量使ってる性で思考速度もたいして上がってないし、この状況からどう行動すれば良いか思いつかないんだが。

まずこの長老さんは俺を、というか人間をあまり良く思っていない訳だ。

だが、追い出すつもりも無いんだろうな、この感じだと。

シリィに請われたから飼うのは許すってところか。

「ユウは私達に嫌な事しようとしないよね」

「人間がそんな事をしていたことすら知りませんでした」

「あなたは本当にとても辺境からやって来た様ですね」

そりゃ世界が違うからな。

「どこまでなら譲歩してもらえますか?」

「どこまでとは?」

「私を外に連れ出してもらえるかどうかです。

私には自力であの場所まで戻る手段がありませんので、どうしてもあなた達に頼ることになります」

結局こうとしか言えないんだよな。

いくら考えても、ここが山の上にあって、出入り口が軒並み歩いて行けない場所にある以上は、飛んで行く以外の手段が思いつかない。

中央の大穴が下山に使える可能性もあるが、怪物達が居るのが解っていて入る気にはなれないな。

「あなたを外に出すことは出来ません」

「えっ、何で!?」

いやシリィが驚くなよ。

「この集落の存在が人間に知られることは、私達にとっては大きな不利益です」

「ユウは人に話したりしないよ!」

なんでそんなに信用してるんだよ、今日初めて会話しただろ。

「私はこの人間をそこまで信用出来ません。とにかく、この話はこれで終わりです。帰ってください」

仕方ないか。

このまま話しても堂々巡りになりそうだ。

「分かりました。諦めます」

「ユウ?」

「話を聴いてくださりありがとうございました」

一度考え直す必要がありそうだな。最悪大穴ルートも有りか。

「ちょっと、ユウ!」

一人先に家を出た俺に続いてシリィが追いかけて来る。

ハーピィあの身体で普通に走るんだよな、陸でも結構なスピードが出そうだ。逃げるのは厳しいかもな。

これを人間が狩ってるってホントかよ…。陸空両方高速で移動する人間サイズの鳥だぞ…、そう考えると銃でもあれば対抗できそうだな。

「良かったの?」

「ん?ああ、あれ以上話しても許してもらえそうになかったからね」

「あ、普通の話し方になった」

ほんとだ。シリィ相手だとこういう話し方になるのか。

いや、それはどうでもいいか。

「ねえ、ガーゴイルって強いの?」

「え?…うーん、物にもよるけど、普通は戦わないよ。強い弱いじゃなくて死なないから」

死なない?やっぱりあれは生物じゃないのか?

「確かあれも人間が作ったんだよね」

は!?

いや、そうか。どうみても石像だもんな。やっぱり必要があって造られた存在ってことだ。

そうなると尚更あそこは怪しいな。

「……気づかれない距離までなら送ろうか?」

「え!?」

「あの辺りは魔族もいないし、人里から離れててガーゴイルに見つからないような森の中までなら送れるよ」

いや、大丈夫なのか?どう考えても長老が反対するだろ、それ。

まあ送ってくれるって言うなら拒否する理由は無いし、下手なこと言うつもりはないけど。気変わり起こされたら大変だし。

「良いの?」

「うん!おばあちゃんもやった後だったら大して怒らないから」

事後報告かよ…もうそれ諦められてるだけだぞ。

あの長老も大変そうだな。

「じゃあ、お願いしていい?」

「任せて!」

なんだかよく判らないが、シリィの厚意でどうにかなりそうだ。

ずっとシリィに頼りきりだな…

っつ、頭が痛ぇ…いったんブースト切るか。しばらくは翻訳も要らないだろ。

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