第6話
さて、だいたい3日ぶりにやってきた(推定)村長宅だが、シリィ曰くおばあちゃんと呼ばれていたあの長老のような人…ハーピィは、毎回直すの面倒だな、もう人でいいか。
その人は俺が喋れるようになったことに随分と驚いている様子だった。
「まさか3日余りの短い期間でこちらの言語を扱えるようになるとは…かなり優秀な方の様ですね」
へぇ、意外と丁寧に話すんだな。
もう少し偉そうなのかと思っていた。
シリィにおばあちゃんと呼ばれ慕われている訳だ
まあ見た目のイメージで言ってるだけで実際のところ偉い立場の人がは分からないが。
「ありがとうございます。私を窮地から救い、この集落に置いていただけたことも改めて感謝します」
「うわ、なんか凄い丁寧。もっと気安く話してくれてもいいのに。一つ屋根の下で暮らした仲でしょ」
シリィはそうでもこの人とは殆ど初対面なんだよ。
なんならシリィに対しては更に迷惑を掛けてる自覚があるから丁寧にもなる。
あと翻訳は別の奴に任せてあるから少し硬いんだ。ブースト無しで喋れるようになれば治る。
「迷惑を掛けている身なので」
「その様な言葉遣いを何処で学んだのですか。この集落ではその様に喋る人は居ません。この地で言葉を学んだならおかしな話です」
へぇ、そうなのか。
まあ目の前にこの喋り方のモデルになってそうな人が居るけど、一度会っただけなのに真似できてたらそれはそれで変だな。
「知らない相手に対してならば、普段しない喋り方をする事もあるでしょう」
「……そういう事もあるかもですね」
何だろうか、警戒されている気がする。俺が怪しいのは間違い無いが、少し過剰だ。
人間だからだろうか。種族が違うというのは十分警戒するに値するだろう。常識が違うのだから。
「なんか怖いよ、おばあちゃん」
「人間がここまで知能の高い生物だとは思っていませんでした。少し動揺しているかもです。」
俺は特殊な例だから気にしない方が良い。俺もブースト抜きなら2週間は掛かったと思う。
「恐縮です」
このまま会話を続けても良いが、少し気まずいな
まあそろそろ切り出すか。
「一つお願いしたい事があります」
「…なんでしょう」
「私を元いた場所に帰してほしいんです」
「え、どうして?」
俺のお願いに反応したのはシリィだった。
さてどう言うべきか。
これ以上迷惑を掛けたくない?迷惑でないと言われたら終わりだな。長老は迷惑に思ってるかもしれないが、シリィはお人好しの卦がある。微妙な解だろう。
単純に故郷に帰りたいとでも言うか?あの辺りに家があるという体で。
言語が問題だな。
あの周辺に村がある可能性はあるが、言語がハーピィと共通だった場合、俺が喋れなかったのはおかしい。
そもそも格好が学ランなのが目立ちすぎるな。
異国の出身というのが妥当か?流石に全世界で言語が共通だったりはしないだろう。
違う言語を喋ってること自体には驚いていなかったしな。
「私は遠くの国からいつの間にかあの場に居ました。あの場所に飛ばされたのには理由があるはずです。調べれば帰る方法が解るかもしれません」
「転移の類でしょうか?確かにそれならば飛ばされた場所に門がある可能性がありますね」
「でもあそこにはガーゴイルが居たよ。ユウは襲われていたじゃない。帰りたいなら私が直接故郷まで連れて行くよ」
まあ飛べるならそう言うよな。わざわざ危険と解ってる所に行きたくないか。
でもシリィじゃなきゃあそこへの道は解らない。
それに地球は飛んでいける場所じゃないからな。
「あの地には仲間も共に飛ばされました。仲間の無事を確認しないことには帰れません」
「あの付近には人間の集落がありましたね。魔族は生息出来ないでしょうし、辿り着いていれば無事でしょう」
ちゃんと村はあったんだな。なら道なりに行けば辿り着いたか。森の中とは言え問題無く走れる程度には道が出来ていた筈だ。
というか長老も場所把握してるのかよ
「ではその集落まで連れて行ってもらえないでしょうか?」
「無理です」
「何故ですか」
「人間の集落だからです。私達は人間とは関わらないと決めています」
俺も人間なんだが…
いや、だから警戒されているのか。シリィが異端ということだ。
「人間に何か思うところが?」
「人間は私達を狩ります。それ以外に理由があるとでも?」
ああ、そういう感じか。
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