2年目の後

「…………」zzz


良い天気である、太陽が暖かくて、程よく風がある。そんな日は砦内にある大きめの木の上でのんびり昼寝をするのが今の俺の趣味である。


「残り3周!行くぞ!!」

「「「はい!」」」


「んぁ……?」


木の生えているグラウンドでは騎士達がキツそうなメニューをこなしてる。

わー、がんばれー。


「ふへへっ」


汗だくで頑張る人を見ながらのんびりするのは最高である。


『…………』

「む……?」


斜め上からの視線!


その視線の主は最悪の初対面だった砦の責任者、通称ツンデレおじさん。

俺と目が合うと、直ぐに目を逸らして窓を少し開いて部屋の奥へと消えていった。


「甘いの、あるかな……」


俺は木の上から魔法で浮かびツンデレおじさんの部屋へと向かう。


目を合わせてから窓を開けるのはお茶のお誘いなのだ、最初は直接言葉でちょっと来いと誘われていたのだが、そのうち視線だけで誘われるようになった。


あっ、もちろん誘われた時はビビってたよ?


でも『とある馬鹿が娘さんにあげてくださいと菓子を寄越してな、私は甘い物が好きじゃないからお前にやる。……全く戦場に娘が居るとでも思っているのか』なんて言われたらビビる必要ないなって。


「元気……?」

「また入ってきたのか、そこに座れ」

「ん……」


そう言って俺の前に紅茶とお菓子の入った箱を置いてツンデレおじさんは書類の前に戻った。


「ありがと」

「…………」


なんでくれるのか理由はわからない。

まぁ簡単にいえば餌付けされている感があって、俺に何か頼みたいのかとも考えたりしたけど特に何も無いまま2ヶ月ほど。


「…………」

「なんだ」

「いただきます」

「あぁ」


結構な頻度でもらってるから悪い人では無いけど、何故くれるのか理由を知りたい感じはする。


「ぉぉ……!」


まぁ、それはそれとしてお菓子タイム。

中身はクリームを使ったケーキっぽいやつ、小さいフォークでゆっくり食べていく。


「うま、うまうま……」

「…………」


たまに視線を感じつつもお菓子を完食、少女エルフなこの身体のせいで眠くなってしまい、そのままソファの上で軽く横になった。


「食べてから直ぐに横になるな」

「ねむ……ゅ」

「おい!寝るなと言っているだろ!」


ごめんよツンデレおじさん、ちょっと眠気に抗えないかな……


「…………」zzz

「はぁ、全く手を煩わせおって」


zzz


「…………」コツ コツ コツ


ちょうど良い揺れぐあい……zzz


「この辺りでいいか」

「んぅぅ……」


揺れが無くなった、冷たい、硬い。

眠りが浅くなった気がするぅ、床が不快ぃ……


「ん?リースじゃないか、なんでこんなとこで眠ってるんだ風邪引くぞ」

「ねむ、ねむ……」

「仕方ないな」


眠気vs不快感、眠ってるけど起きてるみたいな状況でヘレンの声が聞こえて床の不快感が消えた。


その結果、winner眠気!


「…………」zzz



ーーーーー


はっ!


「ん?起きたか」


いつの間にか自室のベットに移動してて、目を開けると同時にヘレンの声が耳に入ってくる。


「へれん、おはよ……」

「馬鹿者、もう夕飯の時間だ、こんなに寝たら夜起きれなくなるぞ」

「ごめん……」


この身体は夜になると自然に寝るから大丈夫さ!


……というか1ついいか?


「なんで、一緒に寝てる?」

「リースにくっ付いているとな、魔法で快適になるんだ」

「ん……?」


俺は自身の身体に魔法を大量に重ね掛けしている。

良い匂いがする魔法、汗をかいても不快にならない魔法、とか色々ね。

簡単にまとめれば、消臭!サラサラ!お風呂要らず!ってこと。


でも元日本人である俺は風呂に入らないと眠りが浅くなる、だがこの世界だと滅多に入れないから魔法をずっとかけているのだ。


っと、そんなことより大事なのはこの効果が俺の体に触れている存在にも適応されるということ。

それをヘレンは利用したのだ。


「シャワー、浴びた?」

「もちろんだ、前に訓練後にそのままベットに横になったらメリッサが怒っただろう?私は反省を次に活かせる女なんだ」

「ん、当たり前」


ドヤ顔でそう伝えてくるヘレンは出会った当初と比べて女の子レベルが上がっている。

出会った当初は訓練馬鹿で見た目など二の次だったヘレンだが、メリッサの『リースちゃんの教育に悪い』という言葉と共に色々なことを教え込まれ、髪の毛の手入れや言葉遣いを少しだけ矯正された。


「……」///

「ん?どうした?」


だからか、向かい合って抱き付かれているこの状況でヘレンから素直な可愛いさを感じ取ってドキドキしてしまった。


「あ、ぁぅ……」

「ん〜〜、わからん!

ご飯食べにでも行こうか」


バサっと掛け布団が取られ、ベットから降りて行く。


おい、のドキドキを返せ。

もう少し浸らせておくれよ。


「今日の夕飯はなんだろうな。

私達がボコリすぎたせいか最近は魔王軍の侵攻も減ったし、食材にも余裕があるからなぁ……」

「お肉」

「肉良いな!ガッツリ食べたい!」


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