第89話 日常
リビングに戻ってダイニングチェアに座ると、お能登さまがフッと笑った。
「志朗は道先案内人だなと思って。船から降りた時も先ほども」
さっきまで挙動不審というか、どぎまぎしていたお能登さまではなく、よく見知ったお能登さまの雰囲気に戻っていた。
初夢の話しをした。お能登さまは渋い顔をしてから
「弁天が送ってよこしたでぃヴいでぃにそんな映像が入っていた」
恥ずかしげに顔を両手で覆った。さすがに弁天さんへメールを送った。すると間もなく返信が来た。「ああ、それな。お能登に『これがお前の深層心理だ』と言っといた」。そのせいでお能登さまは現在の行為(羞恥プレイ)に至ると。再度メールが来た。「で、今の状況を教えろ」と弁天さんからだったので、明日になって機嫌がよくて都合よく忘れなかったら返信してやぶさかではない。
そんなことよりも、だ。お能登さまの挙動不審なくらいに落ち着きのなさをなだめる方が断然優先される。
「志朗はいいのか、私は人間らしい人間ではないのだぞ」
目を伏せたまま合わせてくれない。
「今回の一連で、鳥らしい鳥とか精霊らしい精霊とか神様らしい神様とか鬼らしい鬼とかトナカイらしいトナカイとか見た記憶がないので、その辺はまあ大丈夫かと、あ、池の主らしい池の主には会いましたが」
もっと気の利いたセリフを考えようとして、他に言い様もないほどの事実の列挙だったのだが、それがむしろ効果的だったようで、
「全くお前と言うのは」
お能登さまはあきれるような表情でようやく目を合わせてくれた。
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