第82話 年賀状

 この前日、一月一日。初詣に行った神社にはあでやかな着物で参拝する女性が多かった。お能登さまや弁天さんの柄を見ていた分、地味というか大人しい印象だった。今まで初詣でそんな視点を持ったことがなかった。それがあの夢を見させた、とも言える。

 コーヒーを飲みながら今更ながら年賀状を見た。前日初詣から帰宅した際に回収したものの放ったままだったのだ。このご時世、新年のあいさつはメールやSNSで済まされることが多い。だから何十枚も年賀状が来るわけではない。せいぜい数枚だ。その中で誰から送られてきたのかしれない年賀状が一通あった。住所はおろか送ったその人の名前もないのだ。しかも新年のあいさつの文も書かれていなかった。あったのは、カンゾウが一斉に開いている大野亀の風景画だった。写真と見紛うほどの画力。そんな美術家の知り合いはいない。あまりのぴったりしたタイミングが恐ろしくなった。宛名を見た直そうと反転させると、ふわっと香りがした気がした。頭に浮かんだのは杉池の光景だった。それからスタンプを目にした。調べたら風島近くのポストに投函された年賀状だった。

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