第73話 また酔いやがった
「あ~~~~」
ダイニングチェアに背もたれて、頭も反り返していた。午後一時過ぎトナカイは起きてきた。かと思ったらこの調子である。
「頭痛ーい」
そんな姿勢しているからなおのことなんじゃないか。
「飲み過ぎってか、ピッチをもっとだな」
「分ってます。さすがに反省です」
睡眠不足を加味してない点で、猛省に昇華させた方がいい。と言っているそばから遅めの昼食をがっついている。
「もっとクリスマスっぽくできないですかあ」
お能登さまや弁天さんがいないとこうも図々しく、というか偉そうになるのか。
「ナポリタンがクリスマスっぽくないとでも」
「せめてボロネーゼですね」
トナカイの分際でと言うと動物保護協会から注意喚起が入りそうだが、サラダとコンソメスープ付きをして愚痴を言われるのは心外である。現に完食したのだ。文句を言うくらいなら食うなよ。
「文句ではないです。ポジティブな提案です」
ならば調理に協力するのが筋ではないのか。二日経ってないのに二日酔いのトナカイは起床してからチェアに座っているだけだった。
「体調が優れた際にはそれもやぶさかではありませんね」
正す襟もなく、ただ背筋を伸ばすのみだった。だから、そういう姿勢で強調されるから弁天さんに目をつけられるのだ。何だったら今から本人連れて来てもいいんだぞ。
「それは置いておきましてですね」
咳払いをしてテーブルを指で叩いた。トナカイに茶を出してやった。ちょうど俺も飲みたかったので目をつぶるが、そう調子に乗っていたらお前の耳元に弁天さんの怒声を聞かせてやるからな。弁天さんのスマホ番号は入力済みだからな。
「そ、それなら私がこうして遠路はるばるおいでなさってやった訳をしゃべりませんよ」
分かった。スマホをタップし始めると、
「じょ、冗談です。たまには優越感に浸りたかったとりえのないトナカイを平にご容赦を」
額をこすりつけるほどに頭を下げているのだから、まあ許してやるか。
「やっぱり、羽場さんは一筋縄ではいきませんね」
弱った顔で茶を啜るが、俺のどこを評してそんなことを言う。お前がボケたから生真面目にツッコんでやっただけだからな。
「弁天様には会っているんですか?」
「いや、お能登さまが出て行った後一回会ったきりだ」
「良かった。ということは……」
「連絡はすぐとれるからな」
スマホを振って見せる。抑止力の行使は心得ているから。
「で、お能登さまのサンタプレイは終わったんだよな」
「ええ、その足で来たんですよ」
トナカイが相手なので油断して喋っていたが、こいつはこいつで変なところに地雷を仕込んでいる。依頼人とはいかないまでも、それなりに注意して会話することにしよう、自戒である。
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