第65話 朝食

「志朗、感謝」

 けだるそうに起きてきて、伸びをした。さすがに神様を居間に放置するわけにはいかず、客間にお姫様抱っこをして運び、寝かしたのだ。

「先、顔洗って来てください」

 朝食はすでに準備ができていた。

 洗面所から戻ってきた弁天さんは飛び乗るようにチェアに座った。

「パンケーキぃ。ハチミツはたっぷりかけてくれ」

 弁天さんの機嫌が太陽光レベルになっているのは、朝食のメニューを女子が好みそうな物をそろえたからである。他にオムレツやサラダ、コーンポタージュスープ。スムージーと牛乳、そしてコーヒー。ちなみに弁天さんはブラックコーヒーが飲めないので、カフェラテというかコーヒー牛乳状態にしてある。

 ここまで並べたのは前日の晩の弁天さんが物騒だったからというわけではない。こうして誰かに腕を振るうというのはやはり楽しかった。危うく三人前を作りそうにはなったが。それにお能登さまだったら、

「お能登なら、『これはこれで差し支えないが、朝は和食の方が私には合っているな』とか言いそうだな、志朗」

 すっかりお見通しだった。まったく同じことを考えていた。いやしかし俺の手元を見ればトナカイだって気づいたか。自分のパンケーキにかけようとしていたのは、ハチミツではなく、のりの佃煮だったからである。

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