第60話 続き
絶世に美しい女神たる私の知り合いになあ、それなりに麗しい女神がいる。まあ、なんつうか何考えているか分からんやつなんだが、今しがた話した巫女に目を止めてな。身の回りの世話をさせるようになった。いろいろといわくのあった人間を使うこと自体そう多くはないことの上、その神が秘書のように呼び寄せるのは、それはそれで風聞になってな。それくらいで収まっていればよかったのだが、巫女の生来の性分のせいか、まあもうその生は終えてしまっていたのだが、変わらぬ性格みたいなのがあって、志朗が見ていれば分かるだろ。あの実直さ。それが女神の他の仕えや、ええっとそうだな社内の他部署なんかのやっかみになってな。性悪なのは人間ばかりでないということだ。ならば、思う存分働いてもらえばいいなんて意見に集約されて、押し付けるは押し付けるは。それでもあやつは全うしてしまうから、なおさら連中は腹に据えかねて、まあ完全に逆恨みだ、いやそれにさえなってない。稚拙この上ない。それでも元巫女は仕事をこなしていった。拾ってくれた女神の面目もあったろう。だから言われたことは何でもやった。私だったらブチ切れるような理不尽なものもあった。
その間、女神がしたことと言えば静観だった。まったく口出しをしなかったのだ。自分の侍女をないがしろにするなと強訴もしなかったし、仕事を持って来る連中を追い返すこともしなかった。本当に何を、いまだにそうだ何を考えているのか知れん。そんな女神につき従っているあやつもそう言ってしまえば何を考えているやら。
ただ一応神々の世界。阿呆ばかりではない。露骨に助け舟を出せば却って女神にも、あやつにもなお一層いたたまれない状況になりかねない。よって上手いこと雑務を入れることで緩和させようとしたのもいる。そんなことをしていたら、あやつに二つ名が付き始めた。いや、人間もニックネームをつけていたんだが。死神だとか、天使だとか、悪魔だとか、守護霊だとか、ハイヤーセルフだとか、サンタクロースだとか。
あやつもそうして職務に身を委ねることでしか、忘れることができなかったのだろう。いわずもがな、あの統領のことな。きっと遠い遠い掠れてしまった白黒写真みたいになったのだろうな。あやつが人間にもあだ名をつけられるほど活動できるようになったのだから。女神に従い始めた当初はほんの使いだと人間界に行くのも嫌がっていた。それだけは容赦してくれと、あのあやつが頑として譲らない。まあ、結局はトナカイではないが姿を変える術を習って一時だけ身を変えて使いをしたのだが。そのせいで悪魔とか死神とかになったのだがな。ああ、そうだ。習ったからといってそうした術ができるというのは、あやつの素質だ。だからこそ仕事が来る。人間の世界でもな。そう。人が神と呼ぶ存在やそれに類する存在は、人間の世界に住んでいる。いろんな理由があってそれは言えないがな。人の姿でいる場合もあれば、人には見えない状態で存在している場合もある。そういうところからもニーズがあってな。だからこそ、あやつの苦労を見逃せない者もいるのだ。そうだな、何を愚かしいことを言っているかと言われるかもしれない。良心のある神がいるとはな。……本当か……。いや、それは置いておくか。そうそう、どういう経緯で仕事が委託されているか私とて完全に把握しているわけではない。それでも今回の件は……
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