第56話 風島へ
風島に着いた。駐車場から歩いて麓に行く。曇っているのにそれまでと違って寒くはなかった。むしろ不自然にじとっと温い感じだった。
鳥居をくぐると麓の神社に弁天さんが足を組んでそこに肘をついていた。
「あのなあ、こんな時間に来るやつがいるか?」
説教から始まった。午後四時を回っていた。とはいえ神様の面会時間が指定されているなんて聞いてないから、まずは開庁時間を教えてもらわないと。それに、置き手紙の文末があからさまに挑発的だったので、お答えに参ったつもりなんですが。「さよなら」とか「達者でな」とかで終わってなかった。「では」の後の空間。「では、お前はどうする?」と俺には読めたのだ。それに弁天さんの手紙には別離の一文字もなかった。「戻る」の主語は弁天さんだが、「さよなら」も「バイバイ」もなかった。だから、こうしておいしいところは最初ではなく最後にとっておいたのだ。ねぎらいの一つくらいはいただけるのでしょうな。
「お前は」
あきれているようで、立ち上がって頭を掻いた。そう言えばはしゃいでない、わざとらしい高い声でない口調は新鮮だ。
「まあいい。とっとと行くぞ」
うすうすは感じていたが、お能登さまの前での弁天さんのあのキャラは……いや、それよりどこに行くと言うのか。
「どうせ話しは一つしかないだろ。あんなの飲まずにしゃべれるか」
地を鳴らすような足取りでとっとと駐車場へ向かって行った。俺も頭を一つ掻いてその後を追った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます