第54話 本来の

 ホットコーヒーだけの朝食にして、その後はテレビをつけた。ザッピングをしていたらBS放送で時代劇をやっていた。俳優やストーリーなんかは知らなかったが、そのチャンネルでリモコンを置いた。さすがに何の話なのか分からなかった。悪役はすぐに分かった。とりあえずその俳優がやられるまで見ていればよかった。放送終了。その後も別の時代劇の番組だった。やはりシリーズの大筋には乗り遅れていたが、追いつこうとも思わなかった。悪役が悪役らしいことをして成敗され終了。次もやはり知れない時代劇だった。大捕物、極秘裏の暗殺業なんかも続いた。

 カップラーメンを食べた後、自動車を走らせた。三十分ほどでレンタルDVDの店に着いた。目的のジャンルはなかった。同じ棚を何度も何度も巡回した。いや、もうあれは彷徨だ。お笑い、格闘技、以前から見たかった洋画シリーズのラベルを見てケースを手にしてみたが、裏面をちらと見ただけで棚に戻した。そんなことを何度したか知れない。足が時代劇のコーナーで止まった。太ももを撲って自動車に戻った。結局は何も借りなかった。「ネット動画で見られるし」、なんてことを誰に言う必要もない言い訳みたいなつぶやきをして、肩をすくませた。

 帰宅してテレビをつけた。料理番組、通販番組、バラエティ番組、歌番組いろいろ変えて見たけれど、うざいと胸が拒否をした。落ち着いた気分で見られたのは時代劇だった。だから、話しが分からないのにつけっぱなしにしておくしかなかった。

 それらを見ていて気付いたことが一つあった。お能登さまや弁天さんのような着物は誰も着てないということだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る