第53話 起床

 目が覚めると布団の中だった。時計を見たら八時半を過ぎていた。寝入った記憶はなかった。といっても昨日の夜は酒どころか、ビールも飲まなかった、飲めなかった。だから、酔いつぶれたわけではなかった。それに夢を見なかった。「確かあんな夢を……」みたいなうる覚えな感じもない。まったく黒い景色から見慣れた天井へ視界が変わったのだ。

「夢……」

 口を開くとねっとりした感じがした。何も夢を見なかったことがさみしいような、ほっとしたような。どこかで夢を見ることを期待していた記憶がある。昨日の風呂上りの頃か。とはいえ、シャワーで済ませたばかりだが。

 寝返りを打った。瞼を閉じた。秒針が刻まれる音がしているように聞こえた。そんな音がする置き時計はないのに。体を起こした。

 洗面所で顔を洗った。昨日と同じまんまのタオルがかけてあった。それで顔を拭いた。

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