第26話 またもお使い

 池の主、と言われて思い浮かべたのは髭の長い魚とか、大きな魚とか、あるいは斧を持って現れる女神とか、だったのだが、

「これは珍しい」

 台座代わりの黒い石に座っている(?)のは白い蛇だった。弁天様――というかあの軽快さをすれば弁天さんと言い直した方がいいだろうか――があっさりと言っていたから簡単に着けるかと思ったのだが、ちょっとどころではなかった。蛇行する車道はトレジャーハンターかと誤認するくらいにうねっていた。風島からの車内で、なんなら俺一人で行こうとお能登さまに提案してみたが、「それはそれで腹が立つ」そうで、頑として同行を翻さなかった。ようやくたどり着いて辺りを見渡しても池の中を覗いてもそれらしい存在が見当たらないので、「主さ~ん」と思いつきで呼んでみたら、現れたのが蛇だったのである。さすがのお能登さまも一瞬面食らったようだが、相手が主ということもあって丁重な作法になった。弁天さんとの対応の差が著しい。

「なるほど、弁天殿か」

 白い蛇が首をもたげていた。それからお能登さま、俺と順に目を合わせてから、ふうっと息を吐いた。それは俺には笑みを浮かべたように見えた。なんだか嫌な予感がする。訪問したところごとに何事か押し付けられる。となれば、人ならざる存在に接触した折、意味深になった次の瞬間には

「実はな」

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