第四話
葛飾北斎は江戸時代を代表する浮世絵師である。
なので、彼の元には漫画家の原稿を求める編集者のような立場の人々が浮世絵の下絵を受け取るために北斎の家にやって来ていた。
「北斎先生。良い絵が描けてるかい?」
「外野がゴチャゴチャ言うんじゃねぇよ」
そう言った後、男に対して浮世絵の下絵を渡す北斎。
そんな北斎を見た涼子は流石は時代に名を残す職人だなと思っていた時
「なぁ、あそこにいるのはお前の愛人か?」
突然、男にそんなことを言われたので涼子はギョッとした顔になったのだが
「はぁ!?んなわけねぇだろ!!アイツは面白い物語を書く物書き。断じて愛人じゃねぇ!!」
そんな男に対して北斎がそう言ったので、彼女がますますギョッとした後、北斎の仕事場に入るとこう叫んだ。
「ちょっ!?ちょっと待ってください!!確かに私は小説は書きますよ!!書きますけど一次創作は描いたこと無いです!!」
涼子がそう言うと、北斎は男に向けてこう言った。
「コイツの書く物語は馬琴並みに面白いぞ。俺が保証してやる」
「だから何で大物と並ばせるんですか!!」
自慢げにそう言う北斎に対し、涼子はそう叫ぶが....それが逆に男の興味を引いたのか
「へぇ!!この女の描く話はあの馬琴並みに面白いのか!!」
ワクワクとした表情でそう言った後、北斎は続け様にこう言った。
「あぁ、ただ今はその原稿を書いてないからまた今度見せてやるってよ」
「勝手なことを言わないでください!!」
涼子はそう叫ぶものの、男は北斎の言葉を信じたのか....その小説を読むのが楽しみだと言わんばかりの様子で帰っていく男を見た涼子は、あの時の北斎の言葉を思い出したのか....彼は対してやられたと思うのだった。
「ちょっと北斎さん!!何適当なことを言ってるんですか!!」
「適当なことも何も、事実だろう?」
彼の耳元にて、小声でそう言う涼子に対して北斎もまた小声でそう言った後....こうも言った。
「それに....お前だっていつまでも金を払わずに居候するわけにはいかないと思ってるんだろ?」
北斎がそう言うと、図星だったのか....涼子はピクリと反応すると
「まぁ、そうですけど....」
ポツリとそう呟いた。
渋る涼子に対し、北斎は彼女を顔を見ると
「どうせお前のことだから、先人の書いた作品を模倣をするのはダメだと思っているんだろうが....それはあくまで未来の世界の話。その作品をこの時代に合わせて書き直せばいいじゃないか」
細かいことは気にするなと言わんばかりにサラッとそう言った。
それを聞いた涼子はハッとした顔になると....こう呟いた。
「確かに....その時代に合わせた描写にすれば良いんだ......!!」
その顔にはこれなら書けるかもいう表情が映っていて、それを見た北斎は彼女に向けてこう言った。
「良いか?何かを作ったり書いたりすることは結局は何かの真似事から始めるのが基本。だからこそ手を抜くんじゃねぇぞ」
それは紛れもない職人の言葉で、その言葉を受け取った涼子は
「は、はい!!」
そう返事をした。
かくして、北斎の策略によって作家としての道を歩むことになった涼子なのだった。
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