第五話

さて、北斎の発言によって未来の作品をテーマにした小説を書くことになった涼子は、頭の中をフル回転させたり、バッテリーが無限かつ何故か電波が立っているスマホを使ってどの作品をネタにしようかと調べたりと色々と模索すること数日後


「で、出来た〜!!」


ついにその小説を書き上げることに成功したのである。


「ようやく.....ようやく書けた....」


脳をフル回転しながら書いたからか、疲れた様子でそう言う涼子。

しかし、その顔にはやりきったという顔が出ていた。


「おっ!!例のやつが書けたのか!!」


ちょうどその時、彼女がいる部屋に北斎が現れたかと思えば....その原稿をジッと見ると


「....【絡繰機動隊】?」


その原稿のタイトルをポツリと呟いた。

涼子が書いた小説....【絡繰機動隊】は日本が誇るサイバーパンク作品の金字塔である【攻殻機動隊】を江戸時代版に改変した作品なのだが、この【絡繰機動隊】は漫画版ではなく映画版をモチーフにしたモノなのに加えて、この時代ではまだ発展していないSF(サイバーパンク)というジャンルの小説なので、涼子自身はこの作品が受け入れられるかどうかでドキドキしていた。


「んじゃ、読ませてもらうぜ」


そう言った後、【絡繰機動隊】の原稿を読み始める北斎。

【絡繰機動隊】の舞台は今から遠い未来の時代の江戸。

その時代では多くの人々が肉体を絡繰に改造していただけではなく、電脳世界と呼ばれる情報通信網に直接介入できるように脳を改造したりすることが当たり前になっており、それに伴った犯罪が続出していた。

そんな江戸で活動していたのが幕府直属の第九奉行所こと【絡繰機動隊】で、彼らは電脳を用いた犯罪や国家転覆を目論む犯罪者などの取り締まりをしており、主人公の草彅素子は【絡繰機動隊】の隊長として日々任務に励んでいた。


『私の魂がそう囁くの』


その言葉を口癖のように彼女はよく言っており、個性豊かな隊員達をそのリーダーシップで率いていた、

そんな彼女の前に立ち塞がったのは【人形使い】という電脳師ハッカーで、素子は【人形使い】を追う内にある事実に辿り着く....というのが【絡繰機動隊】のストーリーなのだが


「こいつぁ...たまげたな」


涼子の不安を他所に、北斎は凄いものを読んだと言わんばかりの声を漏らしながらそう言った。


「涼子、お前の時代にはこんなに面白い物語があるのか!?」


こんなに面白い物語という北斎の言葉を聞き....涼子はポカーンとしていたものの、彼の様子を見てこれはイケるのではないか?と思ったのか、北斎に対して恐る恐るこう尋ねた。


「これ、そんなに面白いんですか?」


その言葉に対し、北斎は


「俺は今まで、色んな物書きと仕事をしてきたが....こんなにも絵を描きたい欲が出る物語を読んだのは初めてだ!!」


興奮した様子でそう言ったので、涼子は未来の作品が偉人に認められたことが嬉しかったのか、その顔には嬉しそうな表情が映っていた。


「ほ、本当ですか!?」


涼子がそう叫ぶと、北斎は


「あぁ、そうだ。何せこの俺がそう言っているんだからな」


ニヤッと笑いながらそう言った。

そんな北斎の姿を見た涼子もまたニヤリと笑い、小説の完成を心から喜んだ。

そんなわけで、無事に小説を書き上げた涼子なのだった。

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