第三話

涼子が江戸時代に転移してから数日が経ち....今現在の涼子は北斎の家で居候しつつ、何とかこの時代に適応しようとしていた。


「何でスマホのバッテリーが無限なの....?」


幸いなことに、彼女の手元には何故か充電しなくても良い仕様になったスマホがあったため、未来の時代のニュースは見れるようになっていたことに対し、涼子は不思議そうに呟いた。


「でも、このことをSNSに投稿したらフェイク扱いされるだろうし.......とりあえずSNSは控えようかな?」


スマホの画面を見つめながら、そんなことをポツリと言う涼子。

その言葉が気になったのか


「えすえぬえす?何だそりゃ?」


北斎は彼女に対してそう尋ねた。


「えっと、未来の世界で人と人が対面せずに交流を深めるもの.......です」


涼子がそう答えると、北斎は驚いたような顔になると


「へぇ!!そんな便利なものが未来の世界にはあるのか!!」


興奮した顔でそう言った。


「あ、でも、SNS関連の犯罪や問題があるので良いところばかりじゃないんですけどね」


涼子がそう言うと、なるほどと言う顔になる北斎。


「ところでよ....涼子は物書きなのか?」


北斎がそう言うと、涼子はピクッと反応したかと思えば....汗をダラダラ流しながらこう尋ねた。


「も、もしかして.......私の二次創作の小説を見たんですか!?」


涼子がそう叫ぶと、北斎はニヤニヤ笑いながらこう言った。


「二次創作が何なのかは分からないが....良い内容だったぞ」

「あぁぁぁ....」


北斎の言葉に対し、恥ずかしそうに反応する涼子。

そんな涼子を見た北斎はキョトンとした顔になると


「お前の描いた物語、馬琴並みに良かったぞ」


彼女に向けてそう言った。


「.......馬琴って、八犬伝のあの曲亭馬琴ですか?」

「おぅ、そうだ」


ジッと見つめながらそう言う涼子に対し、あっけらかんとした様子でそう言う北斎。


「というか、お前物書きじゃねぇのか?」

「いや....その、アレは趣味でやってまして.....」


オタクである涼子にとって、小説を書くことは暇つぶしの趣味であった。

しかし、北斎にとってはそうではなかったのか


「はぁ!?馬琴の野郎にも劣らないあの物語を趣味で書いてるのか!?」


とても驚いた様子でそう言った。

そんな北斎にビックリしつつも、涼子は彼に向けてこう言った。


「あ、はい。私はどちらかと言えば既存の物語の延長線の話やもしもの話しか書けませんし、何より未来の世界にはそういう人がたくさんいるんです」


涼子がそんなことを言うと....北斎はワナワナと震え始めたかと思えば、彼女に対してこんなことを言った。


「おい涼子....テメェはそれをもったいないと思わねぇのか?」

「.......へ?」


北斎の言葉を聞き、思わず言葉を漏らす涼子。

そんな涼子に対し、北斎は


「確かに、お前が生きていた時代ではそれは趣味になるかもしれねぇ。だがよぉ....例え物語の延長線の話だとしても、お前が紡ぐ物語にはそれほどの価値があるってことを俺が証明してやる」


彼女の方を指差しながらそう言った。


「しょ、証明するって...どうやって?」

「それは後々考える!!」

「えぇ.....?」


そういうのは後で考えるのね。

心の中でそう呟く涼子だったが....この時の彼女は知らなかった。

この後、北斎がその言葉を本当に実行することを....

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