学園2

 中には見かけたことのある顔、俺を入学へと導いた男がいた。


「どうも〜〜零だよ〜〜」


 この男の名前は、五色零ごしき ぜろ。入学試験で一緒になり、なんやかんや合ってこの学園で再開するのを約束していた。

 そして何故かその男が俺の部屋の中から、ひらひらと無気力な態度で手を振っている。

 おいおいどういうことだ?今俺の部屋に入ってきたはずだよな。

 だけど中では俺が寝るはずのベッドの上で跳ね回っている男がいる。


「あれ部屋間違えたかな?」


 とりあえず適当に誤魔化した後、右手を勢いよく手前に引いてドアを閉める。

 部屋って205号室で合ってるよな?――合って……るな。じゃあなんで五色が?

 いやまだ寝起きだから、そうだって薬で眠らされたんだ。幻覚の可能性だってある。いや絶対幻覚だ。そうに違いない。


「うんそう。絶対そうだ。だって俺の部屋なのに五色がいるはず――」


「あ、戻ってきた。ねぇいっしーこの布団めっちゃやわらかい!!触ってみなって!!」


 だが結果は変わらず五色が布団の上で跳ね回っている。

 布団から出る柔らかそうな音が、この光景は現実だと俺に突きつけてくる。

 もう一度部屋番号を確認するが205号室としっかり表記されている。


「あ、ちなみに部屋は間違ってないよ〜〜」


 白々しいまでの白状に俺は困惑する。


「じゃあなんで五色がいるんだよ!!」


 だが俺の言葉の意味がわからないのか、不思議そうな顔をしている。


「え?なんでって僕もこの205号室だからだけど。ちゃんとスマホ見てないの?」


 そう言って五色は生徒会長から、送られてきたであろうメールを目の前に差し出してきた。

 うわマジだ……下の方にちっさく書かれてやがる。これ書いたやつ絶対性格悪いだろ。


「それにしてもまさかこんなに早く学園内で会うとは思ってなかったよ。ていうかそもそも学園に入ってくるとは思ってなかったし」


 誤解が解けたのだとわかった五色は、本題に入るかのように話し始めた。


「俺にも色々心情の変化があったってことだよ。それにもうゲームばっかの生活は飽きてきた頃だったしな」


 まぁ俺も五色に誘われるまで入る気なかったしな。


「ふーん」


 五色は気の抜けた返事をしながら、スマホを取り出した。


「何してるんだ?」


「え?メール見てるんだけど。生徒会長から送られてきたやつね、なんか下の方にまだ続いててさ」


「そんなんあったか?」


「あるよ〜〜ある。どうせいっしーのことだから、寮の場所だけ確認してちゃんとメールの内容読み込んでなかったんじゃないの?」


「ギクッ!!」


 俺は鋭い眼差しに少し怯む。

 まぁ確かにメールを見たのは寮の場所を確認するだけだったが……


「やっぱりか……ほら僕と一緒に読もうよ」


 俺はメールを開いたあとそこに書いてあった文章をしっかり読み込む。


 えーと何々?

 ”皆さんそれぞれの寮へつくことはできましたか?どうも生徒会長です。明日皆さんには今日と同じ講堂に集まってもらいます。まぁ集まれる人だけでいいです。”

 なんだコレ?友人に向けて打つラインのメールかよ。

 どうもこの生徒会長のさっきのスピーチといい、このメールといい緩くてつかみにくいな。

 なんというか水みたいな人だな。


「だって早く寝よーよ」


 メールを読み終わった五色がベッドから乗り出してきながら言ってきた。

 たしかに明日は朝から活動しないといけないらしい、さっさと寝たほうがいいだろう。


「それでどっちがベッドで寝るんだ?見た感じベッドは一つしか無いんだが?」


 周りを見渡しても、人間がめいいっぱい身体を広げて寝れる寝具は一つしか無い。

 つまり快適な睡眠をゲットすることができるのは、たった一人というわけだ。

 そもそもなんで二人部屋なのに寝具が一つしか無いという問題に行き着くわけだが……


「何で決める?くじ引きとか運に頼るものにするか?」


「じゃんけんで決めようよ。それが一番公平でしょ?」


 少し悩んだあと五色はそう言ってきた。

 五色は俺の目の前に拳を突き出してくる。


「いいぜ、快適な眠りをかけた勝負ってわけね。おもしれぇじゃねーか」


「おっけ〜〜、負けても文句言わないでよ?それじゃあいくよ」


 俺等は勢いよく拳を突き出して気合を入れる。


「「最初はグー、ジャンケンポン!!」」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ガタッ!!


「いって!!」


 俺はソファから落ちた衝撃で目を覚ました。

 少し頭がクラクラするのを我慢しながら俺はゆっくりと立ち上がる。


「あーーまじ身体いてーー」


 身体が軋むのを手で擦りながら和らげていく。

 くそっ、こんなことならじゃんけんにしなきゃ良かった。


「おい起きろ。朝だぞーー起きろーー」


 俺はベッドの上で、すやすや眠っている五色を揺さぶる。

 だが相当寝心地が良いらしく、なかなか夢の中から戻ってこない。


「むにゃむにゃ。もう食えないよ……」


 拳を握る強さがどんどん強くなっていく。

 頭に血管が登っていく。


「起きろや!!!」


 俺は耳元で大きく叫ぶ。


「ふぁい!!さーせん!!」


 こうして俺の学園生活一日目が始まった。

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