切り札は最後までのこす物2

 俺と宗田の木刀が激しくぶつかり合う。


「君、剣道でも習ってたのかい?太刀筋が初心者のものではないな」


 宗田が激しく剣を交えている最中に、俺の動きを冷静に分析し始めた。

 こっちはお前の鋭い太刀筋を見切って、避けるのに頭使ってるっつうのによ……しかもこいつ絶対経験者だな、それも多分中級者でも上澄みの部類だ。一撃一撃がしっかりと急所を狙ってやがる。


「あぁ4ヶ月だけかな。まぁ練習がきつすぎて逃げたけど……」


 宗田の木刀をすんでの所で躱しながら、俺は答える。


「へーー4ヶ月しかしてないのにここまで僕と渡り合うなんてびっくりだ、もしかして相当才能があったんじゃないのかい?」


 よく言うぜ、今も渡り合うとか言ってるくせして片手しか使ってないくせに……

 まぁ才能ならあったのかもしれない……部活やってたときは俺が記憶力がいいのもあったんだろうけど、大体のことは簡単にできた、できてしまったといったほうがいいのかもしれないな……


「誰だって才能がありすぎたらいやだろ……」


「それはどういう意味だい……?」


 宗田はよくわからないような顔をしている。

 俺は質問を強制的にぶった切るために、宗田に無理やり質問する。


「お前はどうなんだよ、そっちこそ初心者じゃねーだろ?素人同然の目でいえば中級者クラスだ」


 俺は文句を込めた質問を目の前にいる男に投げつける。

 それを聞いた宗田は鼻で笑って、俺にこう言ってきた。


「何言ってるんだ。僕が中級者だって?笑わせないでくれよ、僕は中学校の頃は剣道の大会では全国常連になるほどのエリート中のエリートだったんだ、だからそこらの上級者で一括りにしないでくれないかな」


 その発言は俺の背筋を凍らせた。

 は?今なんて言った?全国常連?そんなの俺に勝ち目あるわけねーじゃん……

 やべぇ手震えてきた……それに冷や汗とまんねーんだけど……


「どうしたんだい?絶望した顔をして、何か悪いことでも聞いたのかな?」


 あ〜〜なるほど、あいつ絶対わざと言いやがったな?精神攻撃ってわけか……

 う〜〜んめっちゃ効くな……俺メンタル弱い方なんだけどな……


「いや、余裕だよ。ほらかかってこい」


 俺は今出せる全力の虚勢を張った。

 ここで俺がビビってるって知られたら、絶対あいつは全力で来る……そうなったら俺が勝てるわけがない……こちとら木刀持つのも久しぶりなんだ。俺がやるべきことはあくまで時間稼ぎだ、戦って勝つことじゃないんだ時間稼ぎなら色々とやりようはあるんだ。


「へーーそうかい、なら少しギアを上げようか」


 そう言って宗田の構え方が少し変わる。


「うわぁ怖っ、急に気配変わってんじゃねーーよ。嫌な気配しまくりだわ……」


 さっきまでの宗田の雰囲気を例えるなら、花が咲いているイメージだった。だが雰囲気が変わった今は、さっきと打って変わって鬼の顔が見えるんだけど……

 はは、もう手が震えすぎてやべーんだけど……


「それじゃあ、やろうか。頼むからすぐやられないでくれよ?」


 地面が大きく蹴られ、木刀が俺の目の前へ振り下ろされる。


「アッブネッ!!」


 横っ飛びで転がりながら俺は躱す。

 だが”ドゴッ”という音とともに、俺の躱した場所に木刀が振り下ろされる。


「は?何でただの木刀で地面が抉られてるんだよ!!あんなの当たったら痛いどころじゃすまねーじゃねーか!!」


 それにゲームの中にいるせいか、地面に当てれば折れると思った木刀も、ヒビ一つ入ってねーし!!


「どうしたんだい?さっきよりスピードが落ちているぞ?」


 くっそ、まだ反応できるスピードとはいえ、どんどんスピードが上がっていってやがる。いつまで耐えられるか……とりあえずなにか手を打たないと、このままじゃジリ貧で最終的にはゲームオーバーだ……


「ほら次々いくぞ?」


 はっや!!さっきよりもう1段スピードが上がりやがった!!こうなったら……


「くらえ、必殺目潰し!!」


 両指をつかい宗田の目にダメージを与える。

 すると俺の目論見通り、宗田が目をつむりながらよろける。


「グッ、卑怯だぞ……」


 うわぁぁぁぁぁぁ!!木刀をぶん回すんじゃねぇ!!


「卑怯だって?お前は馬鹿かよ、戦場で卑怯もクソもねーだろうがよ!!」


 なんにせよ、今が最大のチャンスだ。

 ここで宗田の意識を絶対に絶ってやる。


「さっさと沈んどけや、ボケが」


 木刀を大きく俺は振り上げ、勢いよく宗田の頭上に振り下ろす。

 その時だった。

 ――”カツン”という音とともに、木刀は俺の腕ごとふっとばされていた。


「は?」


 何で目が見えてんだ?俺今後頭部から殴りに行ったんだぞ?

 ていうか今はそんなことよりも、この体勢はマズイ!!俺今完全に胴体がら空きじゃねーか!!


「やっべぇ……」


 俺は急いで胴体を守る体制に入る。

 だが間に合わなかった……


「おぉよく動揺しなかったな、だが一歩遅れたな。これで君の奥の手も終わりだ」


 木刀が勢いよく俺の腹に飛び込んでくる。

 それは鳩尾に深々と突き刺さった。

 あまりの衝撃に、体が呼吸することを忘れている。


「あ……があ……あぐ……」


 息がうまくできねぇ……手がしびれてる……それに目の前がグワングワンだ……

 さっさと立ち上がらなきゃいけねぇのに、体に力が入らねー……

 くそ、あとちょっと時間稼ぎすりゃあいいだけなのに……


「これで終わりだ、僕の正体を知るものもいなくなりこれで僕達人狼陣営の勝ちが確定する。まぁ君にしてはよくやったほうじゃないか?」


 宗田が俺を見下ろしながら言った。


「それじゃあ終わりだ、久しぶりに楽しかったよ」


 そう言って木刀が高々と持ち上げられ、一気に脳天めがけて振り下ろされる。

 ”バキッ”という何かが折れる音が周りに響く。

 その音は、何故か宗田の胴体からなっていた。


「ガッ」


 かすれた声で苦痛の悲鳴を上げながら、宗田は転がっていく。

 その光景を見て俺は安堵の息を吐く。


「ふ〜〜ガチでギリギリじゃねーか。なぁ道草でも食ってたのか?」


 俺は若干皮肉を込めた言葉を、目の前にいる人間に投げつける。


「マジで危なかったんだからな?聞いてる?五色?」


 目の前にいるのは俺のボロボロさを見て、申し訳無さそうにしている五色だった。

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