襲撃

 ”ドゴッ”という鈍い音とともに、廃工場の壁に穴が開く。

 はっ?何だ、いきなり廃工場の壁がぶっ飛びやがった……

 でも土煙で何も見えねぇ……


「な、何だ?何がおきた!!」


 宗田が珍しく焦っている。

 そりゃあそうだ、いきなり壁がぶっ飛んだんだから。


「おいおい弱そうな奴らしかいねぇな!!」


 土煙の中から男性特有の低い声が響き渡る。

 それに加えこの地面から伝わってくる、無数の振動は……何だ?


「これやばいかもね……これ多分外に30人くらいはいるよ」


 五色がこの無数の振動から冷静に人数を導き出す。

 ――は?30人?おいおいどうなってんだ、ていうか何で俺等の位置がバレたんだ?

 だんだんと土煙がはれてくる。

 五色の予想通り、土煙がはれた中から大柄な男を筆頭に20人くらいの人狼が中にはいってきた。


「くっそここ外れっすね……弱っちそうな奴らしかいねぇっすよ」


 大柄な男の後ろからそんな声が聞こえてくる。

 どうやら今の発言から考えると、ここ以外にも人狼は襲撃してるらしいな……

 おいおい流石にこの人数はきつすぎるぜ……?


「宗田これどうすんの?こっから勝てる未来なんて見えないんだけど?」


 俺はとりあえず無線で宗田に助けを求める。

 だが宗田からの応答はない、あまりにも絶望的な状況に絶句しているらしい。

 その時だった。


「しょうがないここは俺と春川に任せて先行ってくれ」


 喜早が不意にそういった。

 俺は当然反論する。


「おいおい何いってんだ?全員で残ったほうが生き残れる確率上がるだろ?」


 そう喜早に問いかけるがどうやら自分の意見を変えるつもりはないらしく、全く意見が変わらない。

 その時だった、あまりここで時間を使うわけにはいかないと思ったのだろう。

 宗田が俺達の間に入ってきてこう言った。


「分かった。君の意見は認めよう、元から旗の防衛は君だったしな。だが、この二人で大丈夫なのか?」


 宗田は俺が思っていたよりあっさりと許可を出した。

 まじか、宗田ならもうちょっと反対すると思ってたけど……

 まぁ確かにここに俺等が残ったって何ができるかと言われれば、ただの肉壁になることだけだしな。

 ここを二人に任せるっていうのは一番の策なのかもしれない。


「分かったよ……ここはお前らに任せる」


 俺は流石にこのまま意地を張ってる訳にもいかないので、宗田の意見に渋々賛成する。


「その代わりちゃんと旗を守ってくれよ」


「分かった」


 そう言って喜早が俺等より少し前に出た。それと同時に春川も前に出てくる。


「話し合いは終わったのか?それじゃあさっさとやろうぜ?こっちは待ちくたびれてんだ」


 大柄な男がまた一歩前に出てきてそう言った。

 どうやらあまり無駄話をしている時間はないらしい、今にもあの大柄な男が突っ込んできそうだ。


「おいおい待っててくれたなんて優しいじゃねーか、頭が悪そうに見えて意外と空気読めるんだな?」


 喜早がわかりやすく挑発する。どうやら喜早と春川は準備万端らしい。

 その時だった。


「ふざけんな!!」


 ――怒号とともに、喜早の挑発に煽られて大柄な男が走り出す。

 それと同時に喜早と春川も人狼の大群に向けて走り出した。


「始まった始まった、とりあえず俺等はこっから一旦おさらばするぞ」


 俺はそう言って五色と宗田を連れて廃工場の外に出ようとする。


「静かに行くぞ、静かーに」


 ソロリソロリと忍び足で歩いたおかげか、人狼側に気づかれずに出口まで来ることができた。

 その時だった、”カツンッ”という無機質な音が廃工場内に響き渡る。


「あっ……」


 宗田だった、運悪く瓦礫を蹴ってしまったらしい。

 数人の人狼がこっちを振り返ってきた。


「おい!!あいつら逃げようとしてるぞ!!追いかけろ!!」


 数人の人狼が目の色を変えて追ってきた。

 俺等は見つかった瞬間に走り出す。

 やっべぇやっべぇ、捕まったら間違いなくゲームオーバーだ。


「逃げろ!!死ぬ気で逃げろ!!捕まったら終わりだ!!」


 俺はそう叫びながら走る。

 そんな俺の後ろを五色と宗田が走っている。


「そこを右に曲がるんだ!!」


 宗田が住宅街の方に指を指す。

 言われたとおりに曲がるとそこは路地裏だった。


「静かに」


 俺等は路地裏に息を潜めて、人狼が通り過ぎるのを待つ。

 ”ダダダッ”という足音とともに、人狼数人が目の前を通り過ぎていく。

 ようやく静かになったとき、俺等は路地裏からゆっくりと出てきた。


「ふーー危なかった……まじで間一髪……」


 俺は額の汗をゆっくりと拭った。


「それにしても宗田!!お前何やってんだよ!!」


 走って疲れた腹いせに、宗田に八つ当たりした。

 まだ息が上がって苦しいぜ……こちとらつい最近までただのニートだった、貧弱男だぞ……


「それで俺等はこの後どうするわけ?」


 俺は宗田に、この後どういう作戦で行くのかを尋ねる。

 さっきまで考えてた作戦はさっきの襲撃で崩れちゃったし……かといってこのまま何もしないでいても、ただの戦犯野郎になるだけだからな。

 作戦はとりあえず何かしらほしい。


「そう……だな、とりあえずこのままいてもしょうがないし、相手の陣地に乗り込もう。そして今は運がいいことに3つの班が襲撃されていて、多分相手の陣地にはほとんど人狼はいないと思うしな」


 なるほどね、特に作戦に穴はない……か……?

 まぁ俺も最初から攻め込むつもりではいたし、とりあえずは賛成だけど。

 問題は……


「でもそれって旗の位置とか分かるの?」


 五色が俺の気持ちを代弁するように言った。

 ですよね〜〜、やっぱりそこが問題だよな……

 俺は頭を抱えて考えるが、あまりいい考えは思いつかない。

 その時だった、宗田がゆっくりと手を挙げる。


「僕一つ作戦を思いついたんだが、いいかな?」


 そう言って宗田が喋りだした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る