第39話 潜入調査
次の寄港地は王国軍の施設だった。
ただし、正規兵ではなく、訓練兵の練兵場だった。
そこには雑多な人々が集められ、その適正を観察され、一人前の兵士として育て上げられていた。
もちろん、適性が無く淘汰され放り出されることもあった。
つまり、まだ兵士ではなく訓練兵という身分だった。
そのため、隣の領地の事件にも、王国軍は王都から遠征して来たのだ。
「つまり、若い兵ばかりということか」
「はい、13歳以上18歳未満といったところです」
これは凶悪犯の転生者の年齢——現在14あるいは15歳に当てはまる。
もしも更生を目指し、その【殺人技】スキルを有効活用しようと志せば、ここに居る可能性が高い。
「さっそく調べさせてもらおう」
俺たちは、特殊犯罪独立捜査機関として、この練兵場の責任者に会うことにした。
まずスケズリーが先触れとしてアポをとりに行った。
ここの責任者は、騎士団を引退した伯爵家当主だそうだからな。
礼を失するわけにはいかなかった。
「申し訳ございません。
ヴァルトフォーゲル伯爵に断られてしまいました」
「どうして?
王家直轄機関だと話したのだろう?」
「はい。
しかし、犯罪を行っていない者たちを調べるとは何事かと怒られてしまいまして……」
ああ、犯罪スキル持ちで危険だというのは、凶悪犯が転生しているという情報を知っているからであって、そうでなければ可愛い教え子たちってことだよな。
そこは捜査機関の者以外には話すわけにもいかないし、これは困ったことになったぞ?
「そこで、訓練に参加することで手を打って来ました。
所謂潜入調査です」
「は?」
スケズリー、優秀なんだけど、それって俺にとっては大問題じゃね?
この厳しそうな訓練に参加しろってことだよな?
「懐かしいものです。
私も、貴族子弟が通う訓練校で学んだものです」
そういや、スケズリーもカークも貴族家の三男以下で、実力で騎士爵の爵位を手に入れてたんだったか。
だから、この程度の訓練は屁でもないわけだ。
脳筋か!
俺は頭脳労働タイプなんだからね?
だが、訓練に参加しなければ、調査も出来ないか。
おのれ、外堀が埋まってるじゃないか。
こうして俺とカレンが訓練に参加することになった。
年齢的に俺、カレン、メイルが訓練生に該当していたからだ。
メイルは、その斥候能力で外の情報を集めることになっていて不在だ。
上手く逃げたな。
スケズリーとカーク?
彼らは教官として一時採用らしい。
それが交換条件って、ヴァルトフォーゲル伯爵、やり手だわ。
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