【完結】イピトAIは仮想空間をイネーブルする~未確認AIに高校生活を乗っ取られたら、もふもふワンコが助けに来てくれました。なぜか美少女アサシンに好かれてます~
Episode34 陽翔の危機に立ち上がったのは、
Chapter8 空を翔ぶ陽のきらめきに、木々の緑は共鳴し希望は光る
Episode34 陽翔の危機に立ち上がったのは、
転移した先はアレナ神殿の北の外れ、砂漠の
細く尖った岩が、空を刺すようにそびえ立っている。
ここからは未知の領域。
神秘的な遺跡のような
ココアが低く唸り声を上げた。索敵スキルが発動したようだ。
敵を察知してから二十秒以内にモンスターと遭遇する。
ウサギの姿のグレースが、
ココアが
現れたモンスターは石化した体を持った
死してなおも地下墓地を護る番人は、魔法攻撃を通さない鋼鉄の鎧を身にまとっている。
体が大きい。
レベルも高い。
引いた方がいいのかもしれない。
だが、ここで引いてもパーティを強化する事はできないのだ。
「
煌めく魔法陣が学術書の上に浮かび上がり、黒い霧のような防壁が
敵から視認され難くなり、的中率が著しく下がるシールド魔法だった。
グレースも魔法的中率が上がる祝福を
白龍神の祝福により学術書に光の魔法のページが増えていた。
越えられない壁は無い。
「ぐっ」
掠めただけの傷だが、以前とは比べ物にならない痛みが
左腕の痺れるような痛みに耐え、攻撃魔法を放つ。
「
圧縮された塊となった空気の層が門衛に覆いかぶさる。
その重みで門衛がぐしゃりとつぶれ膝を付いた。
門衛が仲間を呼ぶ雄叫びを上げる。
門衛2体と墓守老婆3体が現れた。
門衛は無限ループのように仲間を呼ぶ。
逃げ出したい、周りは敵だらけだ。
「
学術書を掴んだ手に衝撃が走る。
後ろに弾かれるような浮遊感とともに、金色の烏影が学術書から飛び去り、墓守老婆を次々と貫いた。
最初に攻撃を受けた墓守老婆のインジケータが、勢いよく減り黄色のエフェクトとなってはじけ飛ぶ。他の墓守老婆も効果的にFPが削られた。
門衛二体が
シールドの効果で一体は剣が
グレースが懸命に回復魔法を唱える。
門衛は
これでしばらくは仲間が呼べない。
墓守老婆が負傷している
攻撃は直撃し、
金色の鳥影は門衛を貫くと砕け散った。
魔法攻撃に耐性のある鎧には歯が立たない。
グレースは
その隙を狙って門衛が
モンスターの群れが
パーティ戦で挑むべきダンジョンである。
単騎の
ノアを救いたい一心で、
リアルの怪我と同じ痛みになるよう、システムの設定値を変更していたのだ。
しかも、自分以外の人間にだけその設定を有効にしている。
どこまでも汚い男だ。
立っていることも辛い。
錠剤として用意していたリカバリーを口に含み噛み砕く。
一瞬気が遠くなるほどの倦怠感に襲われたが、痛みは遠のいていく。
ぎゃうん、と鳴く声。
グレースは背中側に木のツルで編まれたシールドを張り、
門衛の剣がガスンガスンとツルを砕く音がする。
このシールドも岩のような門衛の攻撃に、いつまで耐えられるかわからない。
絶体絶命の危機がせまった。
命を直接奪う行為では無くても、死ぬほどの痛みを強制的に与えられたら脳がどうなるかわからない。
背筋がゾッとした。
斬られる痛みを思い出し指が冷たくなる。
足は震えていた。
魔法を放ってもあの鎧に阻まれてしまう。
至近距離から矢を放つ。
だが、岩の体と鋼鉄の鎧は弓矢など弾き飛ばしてしまう。
無駄なあがきだが、恐怖に支配された
何本も何本も門衛に向かって矢を放つ。
ザクリ、音のする先を見ると、唯一鎧で覆われていない左目に弓矢が刺さっていた。
痛みに暴れる門衛は、そのまま
ねっとりとした血液が
やけにリアルな感触に、胃から何かがせり上がり吐き気がする。
逃げようとしたが、倒れてきた門衛の体に足が挟まり逃げることができない。
門衛が叫びながら自らの手で左目に刺さっていた弓矢を抜く。
大量の血液が雨のように降り注いだ。
「うわぁーーーーーー」
✽✽✽
どぶ臭い下水道は絶望への入り口のようだった。
真っ暗闇の中で
暗いところに居ると、昔を思い出して自虐的になった。
そもそも自分は明るいところを歩める人間ではない。
表の世界に出ようとしたのが間違いなのだ。
太陽の光で輝くプラチナブロンドは日本では目立ちすぎる。
本当は対処するべきなのだ。
『きれいだね』あの日の
この髪は日本に来て初めて褒められた。
だから、短く切ることも、目立たない色に染めることも、
この髪は唯一自分の
最後の自我なのだ。
隙の無い動きだった。
ICSPOも調査に乗り出している。
捕まれば罪に問われるだろう。
記憶になくても自分はすでに汚れた犯罪者なのだ。
良くて投獄、それとも死刑か?
死のうとも思った。
生き証人である自分が居なければ、蒼井夫妻の罪が軽くなるかもしれない。
そんな実験はしなかったと言ってくれればいい。
しかし、愚かにもまだ生きたいと心が叫ぶのだ。
敵に寝返り、暗闇の中で野垂れ死にするのが、一番自分に合っているような気がする。
どうせ闇に生きるしか道が無い。
それとも
どちらにしても
夢を見た。
普通の女の子になり、陽の光の下で暮らす夢。
自分にできることはもう一つしかない。
今更、罪の一つや二つ重ねても変わりはしないのだ。
(脅威をすべて排除する)
コンクリートに溶け込むような、グレーの迷彩服とミリタリーブーツ。
武器を持って歩くなら、闇夜に紛れるのが一番良い。
✽✽✽
アグリが瞳を開けると、そこは広大な自然の広がる荒野だった。
『misora』は、人為的に造られたものだ。
わかっているがもう一つの現実のようだった。
だが、この景色は不自然である。
「まったくもって気味が悪いな」
レギュレーションパネルを開き、ダメ元で暗号通信のコードを叩いた。
思いがけずテキスト返信が来る。
>どうして、ダイブできているの?
>
同じようにテキストで返した。
>
>了解
そして、もう一つの暗号化通信のコードを叩く。
「そこで待て」とこちらは直ぐに返信が来た。
「お待たせしたかな。博士の指示で来ました。―――無茶しますね」
降るように目の前に現れたのは、アルベールだった。
「少しノイズが走るかもしれないですが僕と繋ぎます。イピトAI、アルベール VR Device Enable」
耳にキンと不快な音が一瞬響いたが直ぐに目の前がクリアになった。
うるさく目の前に表示されるエラーも消える。
ほっとしたところに、もう一人の助っ人が現れる前兆の金色の環が、大地に浮かび上がった。
その輪の真ん中に金色のエフェクトを輝かせながら、足から映像が浮かび上がる。
そこには、体格の良い
「久しぶりだな。スイスのツェアマットに移送されて以来だ」
「ご子息と林教授の息子さんが『misora』内で行方不明です」
「
カイは、レギュレーションパネルを開いた。
---続く---
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