第47話この青年、やるべき事膨大につき危険
「父上、お時間をいただきありがとうございます」
僕は領地の事を相談するにあたって父上に時間を作ってもらった。本来であれば母上の補助で派閥内の貴族の力を借りて準備を進めるがそれは見込めなかったので関係者から少しずつ言質を奪って行くしかない。そもそも準備期間の半年後は冬である。スカル側の山脈の飛竜や魔物が活発になるのは春から夏にかけてで税はそこで徴収してしまう筈だ。悪意しかない。
しかも僕が動かなければ母上は僕に領地を与えた事も伝えないというおまけ付きである。
「ライアン、王妃から領地が決まった事を聞いたか。半年後から正式に管理権が切り替わるから、しっかりとやるのだぞ」
「その事なのですが父上、噂で聞いて対応できたから良かったものの母上は教えてくれませんでした」
「なんだと?言われた通り伝えたと聞いていたが」
「残念ながら確認をとりに行くまで何も」
そこまで聞くと父上は困ったとでも言うように眉間を押さえた。想定出来なかったのだろうか?
「抗議を入れるか?」
「いえ、それよりも父上の庇護をください。まずはスカーレット辺境伯領の税収内訳と冒険者ギルドの細かい収支報告書と魔法素材の売買記録を見る権利が欲しいです。それと視察をしたいので護衛用の隊を一つ貸してください」
資料の用意は約束してもらえたが視察は危ないからと却下されてしまった。少しずつしか進まない事に焦りを感じる。
自室に戻るとすぐにジャックが口を開く。
「護衛隊にも王妃の息のかかった者がいると言う事でしょう。対抗できる手段が無ければ安全面で問題がある。殿下はほとんどの毒を回復魔法で解毒出来るまでになりましたね?怪我を治すための回復魔法も覚えるべきかと。」
「わかった。」
「こちらでも視察の為の手段を探してみます。」
「……ジャックはすごいな。すぐに次とその次をどうするか考えてる。」
僕がそう言うとジャックは少し遠い目をして言う。
「まあ、鍛えられましたからね」
「あと3年でジャックのように出来るようになるのだろうか」
「物心ついたときから教えられましたからね。3年以上の差が付いていなければさすがに悔しいです。それでも殿下だってすぐに出来るようになりますよ。現に今、鍛えられているではないですか」
ジャックは僕に言い聞かせるように言った。とはいえ考えても仕方がない問題だ。もう一つ気になった事も聞く。
「僕よりも山岳地区の保全に興味があるようにも思える」
「それは仕方ありません。あまり知られていない場所にはだいたい新しい魔法のヒントとなる文化が根付いておりますから。後はリズリー派の経済の為でもあったりしますが」
「そ、そうか。具体的にはバトラー商会へのスカル側の魔法素材の融通といったところか?」
「そんなところです。とはいえ今は殿下のお立場が優先。山岳地区も人の物であると言う事が優先です。手入れをしなければあの土地はすぐに竜の物となってしまいますので」
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