第46話その努力、加減難易度高くて危険
気の遠くなるような昼食の時間が終わり移動している時、周りの関心がこちらから離れた時にやっと肩の力を抜けた。
「つ、疲れた…」
「お疲れー、これでだいぶ動きやすくなったわ。」
「もうやりたくない…」
「何言ってんだよ。俺らの為にも定期的にやって貰うぞー」
アイザックが鬼畜な事を言う。
「えぇ…。もう私を様付けで呼ぶアイザックとベンを見たくないよ…」
私がそこまで言って肩を落としていると心配したベンがアイザックに言う。
「今日だけでも十分顔繋ぎになったし、大丈夫じゃないか?ルイーズに相当な負担だろう?」
「定期的にルイーズが気にかける事に意味があるんだ。それにやらない事で俺らが被害を受けたときにその事にこいつは気がつくし、後悔するぞ」
アイザックにそこまで言われたらやるしか無い。
「…わかってるよぉ。頻度は極力減らして…」
それから何度か貴族席で昼食を食べる日を設けた後、アイザックは私1人をそこに放り込んだ。
(アイザックの鬼畜…!!)
しょんぼりと渡されたランチボックスを開けているとセン殿が話しかけてくる。
「ルイーズ殿、珍しいな1人で昼食とは」
「たまにはこういった機会があっても良いと思ったんだ」
私がそう言うとセン殿は事情を察して苦笑した。
「気乗りしないのが隠せてないぞ」
「そんなに分かってしまうか」
「お前の持っているものに目が曇っていなければな。私達の場合、第一印象が最悪だったから。前の席空いてるだろ?使わせて貰うぞ」
「そうかよ、まあ良いけど」
セン殿は従者に私の返事を聞く前に目の前の席に食事の準備をさせた。
以外にもアイザックの事を気に入っていたこいつと話すようになるのは早かった。思い返すと2週間の四半期休みまであと少しであっという間に3ヶ月が経とうとしている事に気がつく。
「少し相談があるのだが…」
思い出に浸っているとセン殿が切り出しづらそうに話始める。何も言わずに続きを促すととても、とても言いづらそうに続けた。
「合同交流会の社交ダンスに意中の子を誘うにはどうすればいいか………私の友人が悩んでいてな、顔を合わせれば喧嘩をしてしまうから、まずは楽しく話すコツを教えて欲しいんだ…」
「…………………友人?」
「…………………友人だ。」
そう言う事にしておこう。とはいえこれといったアドバイスは出来る気がしない。同性同士の感覚で恋バナに興じてただけである。どうしようか…
「あまり異性として意識しすぎない事だと思うがそれと合同交流会まであまり期間が無いぞ。難しく考えずに誘ってみたらどうだ?」
「……難しい事を言う。まあ、頑張ってみるとする。」
「頑張れ」
「……あ、いや。友人がな。」
雑な誤魔化し方で話題を終わらせたセン殿は少し真面目な顔をして忠告してきた。
「平民を友人にするのは構わないが身を削ってまで与えすぎるなよ。加減を間違えればあちらには破滅が待っているし、甘えている事に気がつく事などほぼ無いからな」
「助けたいから助けるじゃ駄目なのか?リズリー領はそうやって発展してきたと聞いているが。それにもし友人がダメな奴になってしまったらその時点で友人ではないだろう?その時点で自分の近くから排除するよ。そもそも2人はそんな奴らじゃない」
「……お前、いつか後悔するぞ」
「はいはい、忠告ありがとう。あ、言っておくけど今やっている事は自分の為でもあるから。」
モヤモヤとしながら片付けをして席を立つ。訓練場に向かい2人と合流した。
「疲れた」
「いつも悪いな。とりあえず、当分やらなくても大丈夫だろ。ルイーズとそれなりに話せる貴族も増えたから」
「…アイザックの兄君の指示でもあるんだろう?」
「あ、バレた?」
「それなりに勘づくよ。背後には第3王子殿下でしょ」
「正解。さすが頼りになるね」
次の週の休み明けに見たセン殿は片側の頬をガーゼで覆っていた。聞けばロゼッタ嬢にそのまま異性として見ないから宣言をしたらしい。全くもって不器用である。少しざまあと思ってしまった私は悪くない。…悪くないが、少しだけ反省した。
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