第6話 手入れ
《大会から1週間後》
暗い部屋でただ独り目を開けベッドで天井のシミを眺めていた。外は静かで部屋には私だけ。孤独な世界に佇む。
何だか眠れない。2時間前には読書をしていたせいだろうか?思いの外熱中していたらしい。内容を改めて空想しながら振り返る。
【とある時代のアメリカ。当時大規模な戦争があり、若い男達は自国を守る為に戦地へ赴いていた。そんな中、ある4姉妹と母親は戦地へ向かった父親の帰りを長く長く待ち続けていた。個性豊かな4姉妹と母親は微力ながら日々の暮らしを乗り越えていた。そんな日常が知らぬ間に180度傾いていく。急速に変化していく社会、崩壊する兄弟仲、そして帰ってきた父は……。】
現在は父が帰ってきたとこまで読んでいる。早く、早く、明日の夜、ここで、2階の部屋で、机で、本を開いて、ページをめくって、夢想しながら続きを読みたい。私は小説の結末を楽しみに、敢えて明日に残してベッドに横たわった。が、眠れない。目を閉じても頭から離れない。興奮冷めやらぬ。
「あっ!」
明日から部活、再始動するんだった。
突如斜めから閃光を放たれたように、私の頭は、体育館でゆらゆら浮かぶ球を下から眺める光景へ移り変わった。
ここ1週間、部活動は休み。中学1年間で1番重要な大会が終わったのだから、休むことくらい普通だ。
明日から放課後、再び始まる。けど、いつもと違う。いや、これまでとは別物だ。何故なら"2人"がいないから。
流菜さんと音湖さん。
「彼女らは今後OBとして練習に訪れる。」のはすが相当難しいらしい。
流菜さんは複数推薦された強豪校の練習に参加して決めるとのこと。またU15の日本代表合宿もある。彼女は既に世界と戦う日が近づいている。また高度な練習環境に専念する為、地元の社会人チームで暫く練習を繰り返すとのこと。
音湖さんは今年最後の生徒会長の仕事が近付いていた。特に学校行事最大の文化祭が来月に控えており、地域との許可申請や行事運営と全く手を着く暇がない。そこに加えて高校受験の勉強を早い段階で取り組んでいる。どうやら全国屈指の進学校を目指しているとのこと。テストは毎回学年トップの超優等生。流石は生徒会長。付け入る隙がない。
ということで今後は、私含めて丁度6人で部活を行う。実際の公式戦、丁度6人では望めないので1人助っ人を追加しなきゃいけない。これまた大変だ。
大変はもう一つある。
林田さんと田辺さん中心の2年生ズ。彼女らは私に対して針で布を刺す視線を向けられているのだから。
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