初戦闘がしょーもなすぎる。
吾輩は樹木である。名前はまだな…
(いて、いてて!)
なんだなんだ!?
まだ人が自己紹介の途中でしょうが!見てみれば、俺の身体を角生えたリスが齧ってやがる。
(ふざけんな、やめろバカ!)
俺の叫びも虚しく、ついに身体に穴が!!
なんて酷い野郎!
でも抵抗できるわけでもないしなぁ。
文字通り手も足も出せない。
しかしやられっぱなしというのもなんだかなぁ。
(なんとかなんねぇかな)
ということで、なにかできることはないか身体に意識を集中させてみると、頭……今は樹冠って言えばいいのかな。
葉っぱとか枝以外にも丸い何かが。どうやら俺は実のなるタイプの木らしい。
(もしこれを落とせれば…やってみっか)
昔やってたゲームに出てきたボスは、リンゴだったかなんだったかを落として攻撃してた。あれを真似てみようと力を込める。
ぷつん、と割と簡単に実は切り落とせた。そしてリスの頭にホールイン!!
リスはびっくりして俺から落ち、逃げてった。
ってか、俺ってばリンゴの木だったのね。
真っ赤に熟して普通に美味そう。食えないけど。
(はて、どうしたもんかな)
かくして静寂が訪れたのはいいが…うーん暇。
その気になれば果実とか葉っぱを落とすことが出来るのはわかったけど、言っちまえばそれだけ。
(……おん?なんか来てんな)
できることもやることも無いしボーッとしてたらいつの間にか夜になっていたようだ。
で、気付いたら目の前に二人の人影が。
(おぉ人だ。すげぇ初めて見た)
そこには剣と盾を持った男が一人と、変な杖を持った耳の長い女の子が一人。
すげー、アニメとか漫画でよく見るタイプの剣士と魔法使いじゃん。
こんな夜中に何やってんだろ、今は何か話してみるみたい?
「────?──」
「──、────!」
ごめん、何語?
何話してるかさっぱりわからんのだが。
……お?なにやってんだあいつら、懐からなんか取り出したぞ。
ブロック状の……木?かな。
あぁ思い出した、昔キャンプで見た薪にそっくり……は?
(マジ?やりやがったこいつら!!)
薪の使い方なんかそりゃ一つだよな、だがあろう事か、アイツら木である俺の前でキャンプファイアー始めやがった!
燃え移ったらどうなる?知らんのか。俺が死ぬ。
(バカやめろオイ!!)
さっきのリスにやった時よりも必死に、俺はリンゴを落とした。
樹木転生 おやさい @Oyasai_Demon
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