樹木転生

おやさい

目が覚めたら木になっていた。

吾輩は樹木である。名前はまだない。

え、ちょっと何言ってるかわからない?

安心しろ、俺もよくわかってない。

ただ、自分でも気が付いたら木になっていた。

唯一覚えてるのは急に全てが嫌になって森に入って、何かに足引っかけてズッコケて、そのまま頭ぶつけて……唯一とか言いつつ結構覚えてんな。

まぁあの後死んだんだろうな、常識的に考えて。

あんな森ん中で結構な勢いで、なんの受け身も取らず頭からいったんだ。そりゃ死ぬわな。

で、どうして木になってるのって話よ。

目がないのに見るってのもおかしいけど、まぁ感覚的には視覚に近いから見るって表現しよう。

見れば、辺りには見たことの無い植物、変な角みたいのが生えたリス、羽生えた兎………ははぁ、なるほど?つまりこいつぁあれだ、異世界転生ってヤツか。

いや待てと、まず転生したということ自体が有り得ない話だが、そこはもう実際にそうなってんだから認めるしかない。

だけどさ、転生するにしてもなんかこう、もっといいのがあったろう。

まず人だろこういうのは普通。

まぁ魔物とか動物とか、人外転生なんてのも最近はあるらしいけど…

とにかく選択肢はいくらでもあるな?

そんな中選ばれた転生先、木!

マジで???そんなことある???

何が悲しゅうて木に転生せねばならんのだ。

あーつら。ってか俺どうなんの?

動物……今ん所は小動物的な可愛らしい感じのしかいないけど、この手の世界なら当然猛獣なんて呼び方では収まらない位ヤバい奴もいるよな。

そんな奴らの縄張り争いに巻き込まれてへし折られたりすんのかな。

はたまたここは人間、或いはそれに近い生物が運営してる植林場みたいな感じで、そのうちパッカンと真っ二つって可能性もある。

あーヤダヤダ。どっちにしろお先真っ暗じゃん。

どうせ生まれ変わるんならもっといい感じのが良かったよ。

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