第47話 別れの挨拶 中編
アンリさんの所の挨拶回りも終わり、残るは回復薬の老婆とテイラーギルド長の所になる。
「さて、最後はテイラーギルド長だから老婆の所に行くか」
老婆の家は覚えている。
という事で早速向かう事にした。
◇◆◇◆◇◆
10分程度で老婆の家の前に着いた。
ノックをして、出てくるのを待つ。
『はーい』
中から若い女性の声が聞こえた。
…って若い女性…?
孫かな?と考えてるとドアが開く。
中からは同い年位で赤く長い髪が特徴的な女性がエプロン姿で出てきた。
「…えっと…どちら様?」
「あ、私、以前ここの依頼を受けた者で、明日この国を離れるので挨拶回りに来ました。…えっとお孫さんでいいんですよね?」
「まぁそうだけど…って、あ!君が以前私が休んだ時に依頼受けてくれた冒険者だったんだ!入って入って!今ちょうど2人で回復薬作ってたの」
それじゃあお邪魔します。と言って中に入る。
仕事場ではあの時の老婆が紅茶を飲んで休んでいた。
「おばあちゃーん!前に回復薬の依頼してくれた子が挨拶回りに来てくれたよー」
「前に…?あぁ、君か」
「お邪魔してます。いい出来になりそうですか?」
まぁまぁだね。と返しながら立ち上がり、奥からティーカップを持って来てくれた。
「あ、すみません、今日は挨拶回りでこの後すぐギルド長の所に行くので…」
「あらそれは残念。あ、ならちょいと来ておくれ」
突然呼ばれ、老婆の後に着いて行く。
そこには大きめの樽が置かれていた。
老婆が蓋を開け、近くに立て掛ける。
気になって中を見てみるとそこには蜂蜜が入っていた。
「ヨイショ…」
近くに置かれていた小さな樽に蜂蜜を入れようとしていた。
「えっと…何を?」
「ちょいと蜂蜜持って行きな」
「いやいやいや!?俺それが目的で来た訳じゃ無いんですけど!?それにこれで作ってもギルドの方から許可が無いと…」
「許可が必要なのは売る事さね。これを使う人が作った本人なら別に許可も必要無いんさ」
ほれ。と蜂蜜が入った樽に蓋をして渡される。
いや…いいのか?これ…
それに老婆も早く受け取れと視線を送ってくる。
「では…ありがとうございます」
「ん、それでよい。おーい、アンジェ!休憩は終わりだから早く瓶に入れるぞー」
仕事場の方ではーい。と声がした。
俺は再度お礼を言って最後となるテイラーギルド長のいるギルドへ向かった。
◇◆◇◆◇◆
ギルドへ着き、中に入る。
既に時間は昼頃を過ぎたからか、人はちらほらとしかいない。
丁度よく、アーリアさんが受付のカウンターにいた。
「あの、アーリアさん、実は明日ラテゼ魔工皇国に行くので挨拶回りをしてるのですがテイラーギルド長はいらっしゃいますか?」
「挨拶回りですか。わざわざありがとうございます。テイラーギルド長でしたら執務室にいますので御案内します」
そう言ってカウンターの扉を開けて中へと促し、案内された。
「アーリアさんも作戦時の御協力、ありがとうございました」
「いえ、私はギルド役員としてやるべき事をやっただけです」
廊下を歩きながらアーリアさんにも礼を言う。
そして執務室の前に着き、ノックをした。
「テイラーギルド長、ジェイル様がお見えです」
『中に通してくれ』
どうぞ。とアーリアさんに促される。
俺も失礼します。と言って中に入った。
「おや、ジェイル君。何かまた立案でも立ててくれたのか?」
「いや、スタンピードの時のような案なんかそうそう出ませんよ。単に明日この国を出るので挨拶回りをしてるだけです」
そうだったか。と羽根ペンを一旦置き、お互いにソファーに座る。
するとテイラーギルド長が何かを思い出したのか、そういえば…と話題を振ってきた。
「君の立てた作戦なんだが今までの作戦より断トツに生存率が良くてね、正式にあの作戦を国が対スタンピード作戦で採用されたんだ」
……はい?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。