第46話別れの挨拶 前編
早朝に目が覚めた俺は明日すぐに出られるように借りてる部屋の片付けをしていた。
「えっと、テーブルの上は綺麗にしたな、椅子も大丈夫、ベッドのシーツは…明日出る前に持ちやすくなるように畳むか。あ、それと棚の中も…」
自分で言うのもなんだけど立つ鳥跡を濁さずの日本人の精神は異世界に来ても変わらないなぁ…
窓も閉め、ここに初めて来た時と何ら変わらない状態になった。
最後にテーブルに銀貨8枚を置いて片付け終了だ。
今日はこの国での最後の日の前日なので挨拶をして回り、明日の早朝馬車でラテゼ魔工皇国に行く予定だ。
「えーっと、挨拶に回るのは武器屋、服屋、教会のルナさん、アンリさんの店、あと回復薬の作り方教わった老婆の所にも行かないと、で、最後はテイラーギルド長でいいか。レイさんとアテナさんには出発の日は伝えてあるから明日馬車が出る前に行くか」
回る順番を決めて宿を出る。
挨拶は結局先程呟いていた順番になった。
「さて、行くか」
俺は服装を正し、挨拶回りに向かった。
◇◆◇◆◇◆
「はい、ありがとうございました」
パタンと扉を閉める。
たった今服屋の挨拶が終わった所だ。
「武器屋オッケー、服屋オッケー、次はルナさんか…」
距離的にもまぁ早足で行けば数分だろう距離。
なるべく早目に終わらせて明日の馬車の時間を調べる為に俺は挨拶回りを急いだ。
◇◆◇◆◇◆
「こんにちはーあ、ルナさんいた」
ドアをノックして教会に入るとルナさんが祈りを捧げていた。
「あ、お久しぶりです。今日もお祈りを?」
「いえ、実は明日この国を出るんで挨拶回りをしてるんです」
あら、わざわざここに?と少し嬉しそうだ。
俺が礼を言って頭を下げるとルナさんは苦笑した。
「そんなわざわざ来られなくても宜しかったんですよ?」
「いや…元々所ではこういった挨拶回りが普通でしたのでやはりそれは忘れないようにやった方がいいかな…なんて、ま、とにかくありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ、挨拶回りに来て頂きましてありがとうございました」
お互いに頭を下げる。
やはりこういうのは忘れないようにやった方がいいよな…と自分でも思った。
色々と話して教会を後にした俺は次の所であるアンリさんの店に向かった。
◇◆◇◆◇◆
「アンリさーん。いますかー?」
「あれ?ジェイル君?どしたの?」
アンリさんに今挨拶回りをしている事を説明する。
「律儀だね~そんなのしなくてもいいのに~」
「ま、気持ち的にもやった方がいいと思いまして、それと竜魔水晶剣もありがとうございました」
「はい、どういたしまして。それでいつ出るの?」
「明日ですね」
あら、急ね。と驚かれる。
すると店の奥からアンナさんが眠そうな目で出てきた。
それも身体中に包帯を巻いて───
「あれー?ジェイル君どしたのー?」
「いやどうしたは俺が言いたいですよ!?どうしたんですかその怪我」
「あー、これね…」
話によるとダンジョンが見つかって以来、アンナさん達のパーティーはそのダンジョンに潜っているがかなり強敵らしく手こずっているんだとか。
その強さはシルバーランク以上でアンナさんの回復魔法も追いつかないらしい。
「無理しないで下さいよ?あ、アンナさんのリーダーにも行かないと…」
「あー、メンバーの所に挨拶回りに行くなら止めときなーかなり重症だから起き上がるのでも辛いらしいよー。ま、ジェイル君が挨拶回りに来てたってのは伝えとくからー」
アンナさんの言葉に甘える事にした俺は転移したばかりの頃の礼を言って次の挨拶する目的地に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。