第38話悲惨な過去
テイラーギルド長の息子が亡くなった───レイさんは確かにそう言った。
「…というかテイラーさんって既婚者だったんですね」
「"元"だがね。当時、ギルド長をしていたのはアルマーという公爵でテイラー殿と同じく息子もいたんだ。だが───」
だがテイラー殿の息子さんがどんどん功績を上げていく中、アルマーの息子は依頼失敗率が多くて中々昇格出来なかった。
故にアルマーはギルド長の権限を使って半ば無理矢理ギルドでの昇格条件を緩和して昇格しやすくしてしまったのだ。
レイさんやアテナさんもそれに続くようにしてシルバーランクに昇格していたらしい。
昇格しやすくなったのはいいが、いい事だけでは無かった。
昇格して自身の実力を過信、更に難易度の高い依頼を受けて帰って来なかったという事が続くようになったからだ。
死亡率が高くなった事に国家側は不審に思い、アルマーに当時の昇格条件を国命で強制的に開示させた。
そして見つかる不正の昇格の数々。
アルマーはその不正がバレないように時折正式な昇格を混ぜて自身の息子を含めた多くの冒険者を高ランクに引き上げていた。
そんな中、テイラー公爵の息子が帰らぬ人となった事で大事になり、アルマーは責任を負って国側に多額の賠償金とテイラー公爵にも多額の慰謝料を支払った。
テイラー公爵の奥さんは息子を失った事で心神喪失、あの家に帰ると息子を思い出して辛いとの事で元の実家に帰るもテイラー公爵自身とは少しづつ音信不通になってしまった。
アルマーも、もはや公爵として身を振れなくなった為、夜逃げを企てるが国家はそれを見越していたようで未遂に終わり爵位の剥奪されてただの平民となりその後を知る者は誰もいなくなったらしい。
その後二度と同じような事が起きないようにとテイラー公爵がギルド長に立候補し、就任が決定した。
ギルド長に着任後、緩和されていた昇格条件を厳重化し、裏で不正の昇格が見受けられた場合の処罰も厳罰化した。
こうして昇格には慎重だが可能性のある者に対しては推薦を行えるようになったアイルミロクのギルドは完成したのだった。
「─────そんな過去が…」
「正直当時の私も昇格した事を喜んで2人で更に昇格を…と息巻いていたんだが…今となっては降格を自ら名乗り出て良かったと思ってるよ。あのままシルバーランクにいて自身の実力を過信したまま依頼を受けに行けば恐らくは命を落としていただろうな…」
フゥ…と再びため息を付いていた。
遠くでアーリアさんが集合を呼び掛けている。
「さて、迎え撃つ準備をしよう」
「はい」
俺はレイさんの後に続き、歩き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。