第37話スタンピードの対抗策
俺はギルドで自身に必要な物を揃え、交易道跡地に向かっていた。
既に準備は進んでいるようで大勢の冒険者達が崖の上から水魔法を道に撒いた後、それを隠すように藁や大きい葉を上から被せていた。
近接武器を用いる冒険者達は入念な手入れをしている。
この場合、竜魔水晶剣で魔法が使える俺も撒く方の手伝いをしに行った方がいいのだろうか?
それとも周りの剣士達のように武器の手入れをした方がいいんだろうか?
悩んでいる中、アーリアさんが駆け寄ってきた。
「ジェイル様、ただ今ジェイル様の指示通りに魔法使いの三割を使い道に水を撒いた上で藁や葉を被せています。それと以前の依頼で使用されていたという薬品も使い、来るであろうモンスターの誘導にも備えております」
「分かりました。水魔法を使って魔力が尽きた人達にはポーションの配布をお願いします。それと剣士の冒険者達には自己強化のアイテムを配布をお願いしますが、使う際は出来る限り効果時間内にモンスターを殲滅したいので号令と共に使うよう指示をお願いします」
分かりました。と答え、アーリアさんは剣士達の元へ行く。
…やっぱ竜魔水晶剣で魔法が使える俺も水撒きに加わるか。
剣を軽く見て跡地に行こうとした時だった。
「あ!ジェイルくーん!」
呼ばれた方を見るとアテナさんとレイさんがいた。
「アテナさん達も待機ですか?」
「いや、待機は私だけだ。アテナは今魔力を使い切ったからポーションで魔力を回復させた後に再び水魔法を使いに行くらしい」
「いやー、まさか跡地をこんな風に使うなんてさすがギルド長だよねー」
アテナさんの言葉にあれ?と思ったがそういやそうだった。
今回の作戦は発案者は俺だが貴族達から責められないようにギルド長が発案した事になっていたんだ。
だが今思うとここまで冒険者に対して親身になってるのは驚いている。
実は魔力を回復させるポーションもギルドが無償で冒険者に配布しているのだ。
「ここのギルド長って結構冒険者に親身ですよね。他の国のギルド長もそういう人達なんですかね」
俺の言葉に2人は少し暗い表情をする。
あれ?なんか俺言っちゃいけない事でも言っちゃった?
「あ…私魔力回復したから行ってくるねー」
「あぁ」
アテナさんは少し気まずくなりながらもどこか、逃げるようにして跡地に行ってしまった。
アテナさんを横目にレイさんは軽くため息を付いて俺を見る。
「そういえばジェイル君は知らなかったね」
「え?」
ここでは人目が気になるから少し離れよう。と俺を雑木林の方へ連れて行く。
「…この話は私から聞いた事は言わないでくれよ?」
「あ、はい」
え?何?マジで何?聞いたらもう今のままではいられなくなるとかならマジで逃げたいんですけど…
「なんか禁忌に触る事でも…?」
「いや、そういう方の大事ではないから安心して欲しい。ちょっとした悲惨な過去だよ」
"悲惨な過去"────そう聞いて俺は誰かが死んだという想像をしてしまう。
「実を言うと今のギルド長…テイラー殿がギルド長に就任したのは3年前なんだ」
「え?結構最近だったんですか」
というかあのギルド長、テイラーって言うんだ…初めて知ったわ。
「あぁ、元々テイラー殿はギルド長にはなるつもりは無かったんだ。彼の息子が冒険者になって────死んだ後から彼は同じ事を繰り返さないように自身がギルド長になったんだ」
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