第32話 共同戦線
今、俺とアテナさんは並んで互いに武器を構えている。
そんな中、俺は他に侵入者はいないかを確かめる為に周囲に魔力を薄く広げるイメージで探索魔法を使う。
すると後ろから4体のゴブリンが辺りを見回して歩いて来てるのが分かった。
「アテナさん、後方から4体来てます。どこか高台に登れますか?」
「え?うん、分かった」
俺は武器を構えながらアテナさんが高台に行く援護をする。
4体のゴブリンも俺達に気付いたのかギャアギャア!と威嚇の様な行動をして間合いを詰めてくるがその1体に斜め上から火の玉が飛んできてゴブリンを燃やした。
飛んできた方向を見るとその高台にはアテナさんがいて魔法を連発していた。
これでアテナさんの安全は保証された。
後は俺がゴブリンの意識を自分に集中させてアテナさんから意識を外せばいい。
その為には───
俺はゴブリン達に駆けていき、通り過ぎた所で剣を構える。
これで俺と真反対のアテナさんでゴブリンを挟んだ。
そして俺は自分に標的を向けさせる為に竜魔水晶剣に魔力を入れ、炎を纏わせた。
初めて剣に魔力を込め、竜魔水晶剣本来の性能を使う。
刀身に炎は纏ってるが不思議と鍔と柄には熱が来ない。
恐らく熱を通さない仕組みも組み込まれているのだろう。
突然出た炎にゴブリン達はそれぞれ武器を構えているが後ずさりしている。
その真後ろから炎や雷の球体が飛んできてゴブリン達に直撃する。
1体は焼かれ、もう1体は感電して動かなくなる。
残るは5体。
その中の2体がアテナさんの所に走るが後ろを向いた隙に俺が迫り、炎を纏ったまま1体の首に一閃。
もう1体は足目掛けて再びの一閃。
アテナさんと目が合う───その瞬間に離れると同時に氷の槍が足を負傷したゴブリンの頭を貫く。
残り3体。
その3体は気付けば逃げ始めていて柵の近くにいた。
俺はある事を思い付く。
炎ではなく、そのまま魔力のみを纏い、延長させれば届くのでは?
先程は魔力を刀身だけに纏うようにして込めていた。
だが剣に魔力と留めさせず、溢れる程の魔力を入れて刀身を伸ばすようにすれば当たるのでは無いか?
(…やってみるか)
俺は鋒を少し上になるように構えて魔力を込める。
そして────一気に込める魔力量を増やした。
すると刀身の魔力は伸び、約5m程の長さになる。
俺は振り上げながら走り、ゴブリン達に当たる距離で振り下ろす。
結果は見事に1体のゴブリンを両断していた。
だがまだ終わらない。
振り下ろした剣を残りの1体目掛けて魔力を伸ばしたまま振り上げる。
魔力で延長した刀身はゴブリンの右腹から左肩を斬り、パタリと力無く倒れた。
◆◇◆◇◆◇
「…っく…」
ズキズキと左腕が痛む。
先程は恐らくアドレナリンが出ていて痛みを感じていなかったようだ。
「ジェイル君!!!!」
アテナさんが駆け寄ってきてすぐに鏃ごと矢を抜いてくれた。
「すみません、アテナさん、治癒魔法を…」
「治癒…!?私教会に通ってないから治癒魔法なんか使えないんだけど…」
え?そうなの?てか教会に通わないと治癒魔法って使えないのか…
仕方無く俺は試しにと左腕に右手を翳して傷が癒えるイメージをして魔法を使う。
するとみるみる傷口が閉じていった。
「っえ!?何で!?なんでジェイル君治癒魔法使えるの!?」
あ…やっちまった…
どうしよう…
何かいい言い訳は…
「えっと…これは俺の国で開発された新しい治癒魔法なんです。あまり認知はされてないみたいなので広めるのは控えてもらいたいんですけど…」
俺の言葉に新しい治癒魔法!?と驚いていたがなんとか「分かった」という言葉を聞く事が出来た。
さて、この後は事後処理だ。
倒したゴブリンを近くに纏めて焼き、村の被害状況を見て村長に報告するとしよう。
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