第28話 野良でパーティーを組んでみよう
ランクを上げた翌日、俺は早朝からブロンズランクの依頼ボードを見ていた。
やはり1つランクが上がるとアイアンランクよりかは依頼の数が減っている。
そしてその大半が狩猟や討伐の依頼が多数だ。
「まー、そうだろうとは思ってたけどな…」
ランクが上がったとはいえ、大半がモンスターや山賊との戦闘が占めているので迂闊に受ける事は出来ない。
ましてやランクが上がってすぐに依頼失敗は論外だろう。
うーん…と頭を悩ませている時だった。
「ねぇねぇ、お兄さん、もしかしてソロ?」
後ろから突然声を掛けられる。
振り向いてみるとスタッフ型の魔法の杖を持った短い赤髪の女性がいた。
だがその姿は拳闘士のような軽装で一瞬どちらなのか?と迷うくらいだ。
「えっと、確かにソロですけど何か?」
「あ、やっぱり!丁度良かったー。実はね…」
話によると今日はいつも一緒に依頼をこなしてる相方が急遽休む事になって野良でもいいからパーティーを組もうとしていたのだとか。
そしてその際に俺が1人でボードと睨めっこしてたのが目に入って声を掛けたらしい。
「つまり、今日1日だけ組んで依頼をこなしてほしいと?」
「お願い!報酬はちゃんと山分けにするから!」
パンッ!と両手を合わせ、そのまま頭を軽く下げる。
…まぁ今日1日なら別にいいか。
「構いませんよ。それで何を受ける予定だったんですか?」
「ありがとー!依頼はちょっとした村でゴブリンとかの出現が頻繁になったみたいなの。それで今回はその駆除に行くんだけどギルドの方からとある薬品の効果を試してほしいって追加で依頼されたの」
ゴブリンか…
そして二重契約で薬品の試験となると恐らくそういうモンスターに対してその薬品が効果的かどうかを試すのでは無いだろうか?と推測する。
それに今後こうやって野良でパーティーを組むかもしれないから試しに組むのもやってみる必要はある。
「分かりました。えーっと…お名前は?」
「あ、私アテナ。貴方は?」
「俺はジェイルです。それでアテナさん、準備の方がまだならここで待ってますけど…」
「お、もう準備は出来てるのね?なら今すぐ行こう♪」
おー!と1人で拳を高く上げる。
俺にとっては初めてのパーティーだった。
◆◇◆◇◆◇
「へー、ジェイル君ってアイルミロク出身じゃないんだ?え、どこから来たの?遠い所から?」
「まぁ、確かに遠いですね。帰ろうと思うとかなり気が遠くなります」
俺とアテナさんは今被害に遭った農家の家に向かっている。
その最中に俺とアテナさんの出身地の話になって俺の地元がかなり遠い事を話したらそんなに遠いんだー!と驚いた表情を見せるアテナさん。
すみません、嘘です。本当は二度と帰れません…
だが自分の出身国を言っても間違い無く知らないし、仮に行ってみたいと言われても100%無理だ。
…異世界同士を繋げる魔法なんかあったら行けるのかな?
いや、辞めとこう…後々厄介な事になりそうだし…
しばらく歩くと横に岩肌が剥き出しの谷が見えた。
だがその道はかなりデコボコで日も当たらないのか少し薄暗いが気になるのはその谷を封鎖するかのように看板が立てられていた。
「…なんかめちゃくちゃ怪しい谷があるんですけど…?」
「え?あー、"アイル交易道跡地"ね」
「交易用跡地?」
アテナさんの説明によると先程の谷は各村と繋がっていた為、村で作った商品を荷台等で街に運んだり、他国との交易用に整備しようとしていたらしい。
らしいというのはこの工事が中止になったからだ。
理由はその道の悪さにある。
日光がほとんど入らない為、もし雨が降ろうものならその道はぬかるんで最悪荷台の車輪が取られかねないからだ。
以前試しに使おうと荷馬車を走らせたらすぐに車輪が沈んで再起不能になった上、落石もあったのだとか。
確かにそういう危険性が潜んでいるなら誰も使いたがらないはずだ。
その交易道跡地を通り過ぎて民家が何軒か建っている所に着いた。
その周りにはある程度の畑が広がっている。
「じゃあ依頼主さんと話をしてみようか」
「そうですね。依頼主の家はどこなんですか?」
えーっと…とアテナさんが辺りを見回す。
すると…
「あ、あんたらもしかして依頼を受けてくれた冒険者達か!?」
後ろから声を掛けられて振り向くと杖を付いて歩く老人が立っていた。
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