第25話 色んなクエストを受けよう(木の伐採編)

昼食の準備をした俺は次の仕事場に来ていた。

依頼主の所には挨拶を済ませて道具はもう借りている。


「さーて、早速伐採するかー…と言いたい所だが」


俺は近くにあった切り株に座り、バッグを地面に置く。


「先に昼食行きましょうかね♪」


亜空間から買っておいた焼き鳥?とパンを出し…た所である事に気付く。


「げ、飲み物買ってなかった…口の中パッサパサじゃん…」


どうしようと思っていた時に俺はある事に気付く。

そうだ。水が無いなら作ればいい。


「…けどよくあるファンタジー物で魔法から作った水ってあまり飲めない表現多いよなー…大丈夫だろうか?」


うーん、と悩んでいたが今はとにかく水分を取りたい。

という事で…


「…やってみるか」


俺はバッグから緑茶がまだ少し入ったペットボトルを取り出す。

…いつ飲んだやつだこれ?

だが賞味期限はまだ3ヶ月残ってる。


「んー、ちょっと怖いよなー…仕方無い」


俺は蓋を開け、木々がなっている根元に残った緑茶を棄てた。


「さすがにこれを飲んで体調を崩しちゃ意味無いしな…」


俺は中身を捨て終わると手のひらを出して水の生成を試す。

水は酸素と水素の化合物だ。

なら大気中にある酸素と水素を引き寄せるイメージをすればいい。

俺は目を閉じて頭の中で水分子を想像する。

次にそれを大量に増やすイメージ。

試しに目を開けてみるとそこには小指の爪程の水球が出来上がっていた。


「案外あっさり出来ちゃったな。けどこれならどんどん増やせるから大丈夫だろ」


俺はその水球を更に大きくし、こぶし大にまで大きくする。

そのままではせっかく作った水が勿体無いので俺は先に空にしたペットボトルの中に作った水を入れて蓋をし、激しく振った。


「フゥ…この位振れば洗えたでしょ」


再び蓋を開けて中の水を出し、もう一度水を生成した。

水はペットボトルの半分は埋まり、今の食事で十分な水分を確保出来た。


「さーて、水も確保出来たし改めて昼食にするか」


俺は再び座り、パンと焼き鳥を頬張った。



◇◆◇◆◇◆



腹ごしらえを終え、立ち上がる。


「さーて、仕事するか」


軽くストレッチをして依頼主から借りた斧を持ち上げる。

模造刀を借りていたアパートで振っていたせいか、斧自体の重さはさほど重くは感じ無かった。


「…よし」


俺は木に向かって斧を横に振る。


ゴッ!ゴッ!ゴッ!


斧が気にぶつかる度に鈍い音が響く。


ゴッ!ゴッ!ゴッ!


木を切っている時に気付いたがよくある擬音の「コーン」とかの音は鳴らない。

これが本来の伐採の音なんだろう。

だが暫くして斧を地面に付き、杖代わりにする。


「結構体力いるのな…これ…」


まだ5分も掛かってないが少しづつ体力は削られていく。

少し息を整えて再び斧を振る。


ゴッ!ゴッ!ゴッ!


そういえば…と俺はある事を思い出す。


「確か木を切る時って少ししたらまた反対側からやるんじゃなかったかな」


試しにやってみよう。と俺は反対側に回って再び斧を振る。

しばらくするとメキメキッ…!!!!と音を立て始めたので俺はすぐにその場を離れる。

すると俺とは真反対の方向に木は倒れた。


「や…やっと1本目…!」


時間でいうと6~7分。

今の時間は13時で15時には終わらせる予定だから約2時間。

今の調子で続けられるとしたら…17本は伐採出来る計算となる。

今回の依頼は木の伐採で少なくとも8本は切って欲しいとの事なので時間的には余裕だと思う。

…俺の体力が続けばの話だけど…


「ま、ごちゃごちゃ考えてないでとにかくやるか」


俺は再び新しい木に向かい、斧を振り続けた。



◇◆◇◆◇◆



「だーっ!!!!一旦休憩!」


さすがに斧を振る腕に限界が来て地面に大の字になった。

少し多めの休息だ。

現時点で切った木は5本。

時間的に40分だから1本に付き8分は掛かった計算だ。

我ながらいいペースだと思う。

この調子ならまずノルマは達成出来る。

あとは石炭の時と同様にどれだけ稼げるかが問題だ。

お金は多くて困らない訳は無いからね。

けどこれは…


「さすがにキッついなぁ…」


切り終えた木を見て自分がどれだけ木を切ったか分かる。

ある意味それらを見ただけでも達成感はあった。


「今思うと冒険者ってフリーターだよな…労働基準法無しな上に労働災害もガン無視されてるけど…」


前世でも派遣をやってたから分かるけど行く所によって報酬金額はマチマチだからより多くの報酬で少ない労力で済む依頼に皆が飛び付くのはよく分かる。

けど個人的には初めての事ばかりだから中々に楽しさもあった。


「さーて、続きやりますか!」


俺は立ち上がり、再び斧を握った。

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