第79話 もうひと踏ん張り
二人は駆けていき、ツバキの戦闘に加わる。アナーキーはモルドーの隣で剣を振るい、エルダはぶつぶつと文句を垂れながらも、彼らの隙をちょうど埋めるように動く。ラインバードとステンドホークの共同戦線、それはまるで一つの生命体のような美しさだった。
思わず見入ってしまうなと、芝崎は心の底からそう思った。
いや、彼らだけではない。剣と魔法による色鮮やかな一瞬が、今この場には溢れていた。
悲鳴、怒号、歓喜、狂騒。どうしようもない死の淵に立たされて、誰もが皆、命の火花を散らして戦っている。己が力を振り絞り、誰彼構わず背中を合わせ、災厄を退ける。
ダンジョンの外に安全が溢れている現代で、そんなくだらない英雄譚を好む者こそが探索者という生き物であり、変えられない
「はは……なんだか懐かしいな」
芝崎は酷使していた体を休ませながら、目の前の光景に過去の情景を重ねていた。敵味方が入り混じって、ダンジョンの存亡を賭けて戦う日々。懐かしく思ってしまうほどに、月日が経ったのだと彼は実感する。
嬉しいことだと、彼は独り
自分の存在意義を探し回っていた若い頃と違い、今の彼は自分がいなくなった後のことをよく考えるようになっていた。いつ死んでもおかしくない仕事だからこそ、より終わりを意識してしまう。故に、こうして皆が手を取り合い、一つの脅威に立ち向かっていけていることが、何よりも尊かった。
「……」
彼は意味も無く隣を向く。そこには当然誰もいない。センチメンタルな気分をキャラじゃないと言って笑い飛ばしてくれる仲間も、そんな仲間をはたいてくれる後輩も、いるわけがない。
(……そうか。羨ましいのかもな)
彼はそう気づくと、思わず口から笑いが漏れてしまう。そんな子供のような感情を未だに持っていたことが、とても可笑しかったのだ。
笑った後にこうも思う。この場所に、あいつらがいてくれたらよかったのに、と。
「さて、そろそろやるか」
芝崎は大きく深呼吸をしながら、背中の筋肉をグッと伸ばす。彼の体はずいぶんと軽くなっていた。足元を整え、自分の位置を確認する。湧き上がる高揚感を適切にコントロールしながら、これからの手順をよく確認する。
最硬の敵、ツバキ。あらゆる攻撃を通さない彼女の、無敵とも思えるスキルを攻略するために。
楽しかった遊びの後は、正しく後始末をしなければならない。それが探索者であり、掃除屋である彼の仕事なのだから。
「さあ、もうひと踏ん張りだ」
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