第78話 邪魔するぜ
;うおおおおお爆破爆破爆破!
:アンダンテじゃん!
;今度は煙でなんも見えねえ!!
影から飛び出したアンダンテは、ツバキめがけて爆破の雨を降らせる。尋常じゃないほどの量の爆撃で周囲が白煙に覆われても、なおもその手を止めない。
「オラオラオラ! 弾幕の数なら負けねえぞ!」
「アンダンテ、頭を下げろ」
「うひぃ!」
アンダンテの背後にいる男は、手に持っていた薙刀を躊躇なくアンダンテめがけて振るう。それは咄嗟に屈んだアンダンテの頭上ギリギリを通り、舞い上がる煙ごと断ち切ってツバキに斬撃を飛ばす。
「
「絶対そこでやる必要なかった! 絶対そこでやる必要なかった!」
「……」
「む、無視っ……!」
:ヒュッ……
:モルドーも来たんだ!
:斬撃飛ばしてるの意味わかんないんだよな
:モルちゃん今日も切れてんなア
薙刀を振るった男、ラインバードのモルドーは、自身の後輩であるはずのアンダンテの抗議をまともに取り合わず、ツバキに相対する。到底社会人とは思えないその行動にアンダンテが愕然としていると、ふわりとした雰囲気の少女が慰めるように彼のもとに近寄って来る。ラインバードのメルメロだ。
「ごめんねアンダンテくん。うちのリーダーが……」
「メルメロの姉御……」
「姉御って呼ばないで。二度と。殺すよ」
「ごめんなさい……」
:メルメロさんはまだ17歳だぞ
:メルメロネキの顔こっわ
:これが17歳の貫禄かあ
そんな彼らの和気あいあいとしたやり取を視聴者たちがほほえましく眺めていると、配信の映像が急にガクンと揺れる。そして、異常なほどに目を輝かせた一人の探索者が顔を覗かせた。
「お、カメラこれかな? やっほー、ラインバードのエルダだよっ! 私たちもネゴみんの配信にお邪魔するぜ!」
:エルダああああああああ!!
:お前を待ってたよ
:かわいい!
:デスクトップからいい匂いがしてきた
エルダはカメラを自分たちに無理やり向けさせ、手慣れたように手を振ってみせた。その脇に嫌そうな表情を浮かべているアナーキーを半ば強引に抱き込みながら。
「今日のラインバードは後輩ちゃんを連れて新宿ダンジョンへやってきてます! どう、アナーキー君、今の気持ちとか言っちゃってよ」
「ちょ、エルダさん。あんま喋ってないで参戦しましょうよ……」
:アナーキーくんもいる!
:こいつほんま顔がいいよな
:ステンドホーク応援してるぞー!
エルダはアナーキーの指摘を聞くと、彼を手離してわざとらしくため息を吐く。アナーキーと、彼のそばにいるマインとシルリカは、面倒くさそうに彼女の様子を見つめている。
「真面目ちゃんだなあ。いいじゃんさあ、せっかく配信やってんだし、顔売らないとじゃん。見てよほら、同接やばいことなってるぜ」
「知りませんよ」
「もう、そんなそっけない態度しちゃって。有名人はこれだから。てか、先輩的には今のステンドホークこそ知名度が必要なんだと思うけどなー」
「別にうちはそういうのは……。はぁ、もういいや。シルリカ、放て」
「おっけーアナーキーちゃん。はああ……ワイルドストライク!」
もはや対応する必要は無いと判断したアナーキーは、シルリカに攻撃の命令を下す。シルリカは彼の言葉通り矢をつがえ、魔力で最大限に強化し、放つ。亜音速にも到達するその矢は、空気の壁を突き破りながら進み、正確にツバキの眼球を狙う。
生物の共通の弱点とも言える、目。その表皮に矢じりの先端が到達すると、美しい破裂音とともに矢は砕け散った。
:あ
:あっちゃ~
:前も見たぞこれ
「なんか最近こんなんばっか!」
「いや、十分だ。シルリカはとにかく隙間を縫っての攻撃に集中。そのまま目を狙い続けてくれ」
「うー……はーい」
「わ、私は何をすればいい、ですか」
「あの敵はデバフ効かないそうだから、マインは周囲のゾンビ掃討に注力してほしい。マインのレンジとテクニックなら、他の探索者を巻き込まずに支援できるはずだ」
「は、はい……!」
:なんかアナーキー君前よりかっこよくなってない?
:すまん、キュンとした
アナーキーの指示のもと、マインとシルリカは自分の仕事に取り掛かる。エルダはそんな二人を見ながら、少し不貞腐れたように石ころを蹴っ飛ばす。
「はーあ、私の場違い感すごいなー。もうこのままドロンしちゃおうかな」
「帰ってもいいんで早く服から手を離してください。戦いに行けないんですけど」
「血気盛んだなー最近の子はさ」
「おいエルダ! お前いつまでボケっとしてる! さっさと来い!」
「ちっ、気づいたか。じゃあ、私たちもあの最強無敵ウーマンと戦ってきますか! ほら、アナーキー君もぼーっとしてないで行くよ」
「……はい、了解です」
「不服そ~!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます