第7話 切り拓く

「しかし困りましたね……道が塞がれています」

遺跡調査に来た俺たちは奇しくも遺跡へと繋がっているであろう洞窟の入口の崩落跡

を見つけてしまった。

崩落跡は大きく、とてもじゃないが、人が通れる大きさじゃなかった。

とりあえず依頼書の裏面に記載されている遺跡の入口を探して見る事にしたんだが……

ゴツゴツとした岩場に生えた草を掻き分けながら入口を探す俺たちだったが、しばらく探してもそれらしきものは一向に見つからなかった。

途方に暮れながらも3人で再度探し直そうとしたその時だった、俺たちの足元に妙な違和感を感じたのは。

違和感を感じた俺はその場にしゃがみ込み、恐る恐るその違和感の元を摘み上げた。

「焼け焦げた陶器のかけらと護符か……」

陶器のかけらは手に取るとボロボロと崩れ落ち、護符は焼け焦げてはいたが、辛うじて文字を読むことが出来た。

俺はその護符に書かれていた文字を読み上げた。

「火気厳禁!」

何者かが意図的に入口を潰したようだ。

なぜ……誰が……? そんな疑問が一瞬頭を過ったが、直ぐに打ち消した。

理由は分からない、だが……ここが閉ざされた遺跡である事だけはハッキリした。

その事に一抹の不安を覚えながらも俺たちは一度ギルドへと戻ることにするか、このまま入口を探せるかを話し合うことにした。

だが……その話し合いは無駄に終わった。

俺たちが遺跡の出口を探す為に動きだそうとしたその時、

「おい、此処で何をしている!」

俺たちの後ろから声を掛けられたのだ。

慌てて振り返って見ると、背中に背丈ほどもあるハンマーを背負ったガッシリとした体格の男が立っていたのである、男は俺の顔を確認すると、

「よう!カイザン公爵家のエドワード坊ちゃんこんな所で出逢うなんて、やっと冒険者デビューかい?自己紹介が未だしてなかったな、他のメンバーとは初めましてだな!俺は冒険者のエイン・カシウスだ」

この、エイン・カシウスという男サガミギルドでも一番有能な冒険者で和国でも15人しかいないA級冒険者である。その為、公爵である俺の父親はギルドとの協力体制の強化という名目でエインを含めた有能な冒険者を何度か屋敷に招待をしていたので、俺とは顔見知りで挨拶もしているので初めてでは無いのだ。

「はじめまして、私は今回エドワードさんに依頼をだした考古学者のケビン・ストークといいます」

「僕は、ミトゥース・ニードルと申します。」

ケビンとミトゥースがエインに自己紹介をする。

「ところで、エドワード坊ちゃんはこんな所でどうしたんですかい?」

「エドワード坊ちゃんと言うのはやめてくださいよエインさん、実は遺跡の入口部分の洞窟が人為的に崩され遺跡に入ることはできないんです。なのでここで引き返した方がいいかどうか思案していたのですよ」

エドワードの説明をエインは説明途中に被せるように、

「はっ?入口が無いなら他のところから無理矢理入ればいいじゃないか?」

と、簡単げに言う。

「いえ、ここは恐らく古代の文明が作ったものだと思うんです。それを壊すわけにはいかないでしょう?」

「なーるほどね……よしわかった!!それなら俺に任せてくれ!!」

「えっ?どういうことですか?」

「要するにこの洞窟の入り口を塞いでるものだけをぶっ飛ばせば良いんだろ?」

「まあ簡単に言うとそうですね」

「おし、任せろ!すぐ終わらせてくるからな!」

そう言ってエインはどこかに行ってしまった。

(大丈夫かな?)

俺は不安になりながらも待つことにした。

10分後……

「お待たせー!」

「おっ、早いですね……って後ろの方は誰ですか!?」

俺は目の前にいる人物を見て驚いた。そこには筋肉ムキムキで身長が4メートルくらいある大男がいた。

「ああ、こいつはな、小巨人族の奴でな、力仕事が得意なんだよ」

「よろしくなエドワード坊ちゃんよ!」

そう言いながら握手を求めてきた。俺は戸惑いつつも手を握り返した。

「あの、その人はなんていう名前なんですか?」

俺は恐る恐る聞いた。

「ああ、そういえば名乗ってなかったな、こいつの名前はゴーズだ」

「よろしくな!」

「は、はぁ」

(やっぱりこの人怖いんだけど……)

そう思いつつなんとか笑顔を作った。

「で、こいつらを使って入口を開けるぞ」

そう言って取り出したものは大きなハンマーだった。

「おお、すごいな」

「そうだろう?この『ゴーズの鉄槌』は特別製なんだぜ?」

「へぇ~」

(でも、どこから持ってきたんだろう……)

そう疑問に思ったがあえて聞くことはしなかった。

「じゃあいくぞ!」

エインはそう言うと同時にゴーズと息を合わせて振り下ろした。すると轟音と共に岩が崩れ落ちた。

「おお、凄い……一発で」

俺はその光景に感動していた。

「よっしゃ、これで入れるようになったぜ!」

「ありがとうございます!助かりました!」

「いえいえ、お礼を言うのはこちらですよ。本当に助かりました!」

「いえいえ、そんな……」

「ところでさエドワード坊ちゃんはどうしてここに?」

「ああ、それは……」

俺は依頼で遺跡の調査に来たことを話した。

「ほう、それは面白そうだな」

エインの反応から遺跡に何かありそうな予感がする。

「えっ、興味あります?」

「おう、そりゃあ男なら誰もが行きたがるぞ!」

「へぇーそうなんですか」

「ところでエドワード坊ちゃんは、遺跡についてはどれぐらい知っているんだ?」

「えーっと、ほとんど知らないです」

「そうですか……」

「あっ、そうだ!よかったら途中までの地図は要るか?俺とゴーズの依頼は洞窟までの道を安全に通れるようにだったから此処で拾った地図は持ってても必要無いからな。」

「いいんですか!?」

「うん、全然構わないよ」

「では遠慮なく頂きます」

「おう、じゃあ気をつけてな」

「はい、お二人も頑張ってくださいね」

「ああ、じゃあまた会えたらな」

「はい、さようなら」

こうしてカシウスと別れた。

「よし、じゃあ行くか」

そして俺達は洞窟の奥へと進んでいった。

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