第8話 竜の炎石と砂漠の豆①

僕の名前はフォルカ。

ここ北の森の奥深くで、小さなカフェ『縄束亭ロープ・バンチ』を営んでいる。

異形の頭を持つ魔人だ。


その日は穏やかな午後だった。

カウンターでコーヒー器具を磨きながら、最近仕入れた豆のことを考えていた。

西の砂漠の山岳地帯で栽培される希少なコーヒー豆だ。

乾燥した気候と高い標高のおかげで、独特の酸味とほのかに甘く華やかな香りが特徴だと聞く。

でも、その希少さゆえにどう焙煎すればいいのか迷っていた。

普通に焙煎してしまうのはもったいない気がするし、なんとかしてこの豆の魅力を引き出したい。

そんなことをぼんやり考えていると、ドアの鈴がカランと鳴った。

入ってきたのは常連のハンター、グレンだ。

彼はいつも通り無骨な笑みを浮かべ、革袋を肩から下ろす。


「おう、フォルカ。今回は面白いもん持ってきたぜ」


そう言ってグレンが取り出したのは、赤黒く光沢のある石だった。拳ほどの大きさで、表面は微かな炎のような光が明滅している。


「これは…?」


「火竜の炎石だ。西の砂漠の山岳地帯に棲むドラゴンが、火を噴くための魔素を溜める『炎袋』って器官に稀にできる石だよ。炎というか熱か。その魔力が詰まってて、扱いを誤ると爆発するって噂もある。どうだ、面白いだろ?」


僕はそっと石を手に持つ。

確かに、微かに脈打つような魔力を感じる。

西の砂漠のドラゴン由来の炎石か…。ふと、仕入れてあったあのコーヒー豆と組み合わせるアイデアが浮かんだ。

同じ地域の産物なら、何か面白い結果になるかもしれない。


「ふむ…いいね。ちょうど扱いに迷ってた豆があるんだ。この石でなにか出来ないか試してみようかな」


そのあとはグレンにコーヒーを淹れながら、この石の話を詳しく聞いた。

彼によると、火竜の炎石は、文字通り炎の魔素が凝縮した非常に不安定で、扱いを間違うと爆発する危険性もある鉱石。

ただ一方、適切に扱えば驚くほどの熱量を安定して供給する特性もあるらしい。

グレンは狩った火竜からこれが出てきた言い、「お前なら何か面白い使い方をするんじゃなかと思ったんだ」と笑った。

僕は石を手に持ったまま、頭の中であれこれとアイデアを膨らませていた。



翌日、店に見慣れた顔がやってきた。

ドワーフのヴィーリ親方だ。

彼は縄束亭の保守と修繕を定期的に手伝ってくれる職人で、がっしりした体格と赤みがかった茶色の髭がトレードマークだ。

今日はいつもの工具箱を肩にかつぎ、鼻歌交じりに現れた。


「よお、フォルカ。店の様子はどうじゃ? またどこか壊れておらんか?」


「いらっしゃい親方。この前床を直していただいてからは、どこも壊れていませんよ」


「それは何よりじゃわい」と、親方がカウンターのいつもの席に座る。

そして何か気づいたように口を開いた。


「ところでフォルカ。何やら変わった石の匂いがするのぅ?」


と、スンスン鼻を鳴らし始める。

確か、ドワーフは石の匂いを感じ取れるんだったか。

それにしても、袋戸の中にしまってある石の匂いがわかるなんてどんな嗅覚してるんだろう。

石の匂いに関しては人狼のカイルといい勝負なんじゃないかな。

僕は関心半分、驚き半分で袋度の中から火竜の炎石を取り出し、親方の前に置いた。


「ほお?こりゃあ珍しい石じゃの」


そう言いながらまじまじと炎石を見つめる親方。

僕は「実は・・・」と親方に事情を説明することにした。

希少なコーヒー豆をこの石の熱量を使って焙煎したいが、扱いが難しいらしく焙煎の方法に悩んでいること。

でも石の熱を制御できれば面白い結果になるかもしれないこと。

僕の話を聞きながらヴィーリ親方は石を手に取り、目を細めてじっくり観察した。


「火竜の炎石か。こいつは確かに面白い。秘めた熱量は物凄いが、とんだじゃじゃ馬のようだわい」


そう言って。一旦石をカウンターに戻す。

そして、しばし思案すると


「なあフォルカ…。こいつをワシに任せてみんか?

上手くいけば、お前さんの希望通りの焙煎機が作れるかもしれんぞ」


と、新しいおもちゃをもらった子供のような目で僕を見つめてきた。


「本当ですか親方? 願ってもないです!よろしくお願いします」


僕の了承を得ると、ヴィーリ親方は早速既存の焙煎機をチェックし始めた。

店とは別棟の焙煎小屋に行き、普段使っている焙煎機を隅々まで確認していく。

バルブやパイプを一つ一つ確認しながら、その仕組みを把握して、同時にどういう機械を作ればいいのか構想を練り始めた。

その手際の良さに、僕はただ感心するばかりだった。

親方は「大まかな構想はできわい」と、いうと工具箱から大きな紙を取り出し、頭の中を書き出していく。


「ふぅむ。部品の削り出しに板金、熱に耐える素材の選定もせにゃならんか。ちょいと大がかりになるのぉ」


と口ではぼやいているが、その顔はとても楽しげで、ぶつぶつ言いながら更にあれこれ追記していった。

ある程度書き出しが終わると、明日にでも正式な設計を始めると約束して、そわそわとしながら家に帰って行った。


その日の夕方、いつも通りミリアが店に立ち寄ってくれた。

今日もミリアはいつも通りの黒づくめのローブだ。

地味な服だけど、それでも彼女が華やかに見えるのは、その燃えるように赤く、揺らめくように波打つ髪と同じ様に赤く輝くその瞳のせいだろう。

一見、20歳そこそこくらいの女の子だけど、こう見えて焦土の魔女と呼ばれる大魔導士で、僕の古い友人の一人だ。


普段は難解な研究に明け暮れているけど、時折こうして息抜きに店にやってきてくれる。

今日は奥のいつもの席じゃなくて、珍しくカウンターに座った。


「フォルカ、いつもの」


「いつもの」つまり、ホットカフェラテとキャロットケーキだ。

僕はオーダーの準備をしながら彼女に話しかけた。


「実は今日は面白いものがあるんだよ、ミリア」


僕は彼女に火竜の炎石を見せ、焙煎に使おうとしていることを話した。

ミリアは石を手に取り、指先で軽く撫でながらじっと石を見つめている。


「これは…本当に面白いわね。フォルカが面白いと言って、ちゃんとしたものが出てくるなんて思ってもいなかったわ」


彼女はそう言いながらも石から目を放さない。


「熱…いえ、これは炎ね。名前の通り火竜の炎の魔素が凝縮されてる。

確かに焙煎に使えば面白い効果が出そうだけど、ちゃんと扱えるかしら?

とはいっても、焙煎機を作る技術がない私が言えたことじゃないのだけれどね」


「実はもう、ヴィーリ親方に焙煎機の開発を頼んだところなんだ。親方のことだからうまく仕上げてくれるんじゃないかな」


「ふうん、なら確かにいいものができそうね。新型の焙煎機のコーヒー、楽しみにしておくわね」


そう言って彼女は火竜の炎石をカウンターに置き本を読み始めた。



それから数週間、ヴィーリ親方は自宅の工房と縄束亭を行き来しながら焙煎機の開発を進めていた。

いつもの焙煎小屋の横に仮設の小屋を建て、ある日はいくつも滑車を持ち込み、ある日は細かいパイプを這わせ、既存の焙煎機と比較しながら試作品を組み立てていく。

僕は時折、作業場を覗いて進捗を見ていたが、ヴィーリ親方の集中力には驚くばかりだった。

ミリアも何度か店に立ち寄り、「順調そうね」と横目で見ているようだった。


「どうじゃい、フォルカ。だいぶ形になってきおったぞ」


ある日、ヴィーリ親方が組み上がった試作用の焙煎機を見せてくれた。

鋳鉄で構成された本体に、豆を均等に焙煎するための熱伝導率が高い銅の回転ドラムが付いている。


「これは凄い・・・。鉄の厚みが桁違いです」


「その通りじゃ。本体は石の制御装置も兼ねておる。従来の厚さではその熱量には耐えられそうもないのでの」


「ワシ特別製じゃ」とヴィーリ親方が得意げに笑う。

だが、火竜の炎石を組み込む段階になると、事態は一変した。

石の熱が強すぎて試作用の炉が溶けかけたり、逆に弱すぎて豆に火が通らなかったり、石の熱量がまったく安定しなかった。

その日は試行錯誤を繰り返したけれども、実のある成果にはつながらなかった。


夕刻。

作業を切り上げた親方は、カウンターでいつものモルトウィスキーをチビチビと舐めながら「まいったわい」とぼやいていた。

目線の先には、カウンターに置かれた火竜の炎石。


「難しい顔してますね親方」


「この石がな、じゃじゃ馬過ぎて、どうにも手に負えん。

熱の制御が落ち着かんのじゃ。機械の工夫だけではどうにもならんかもしれん・・・」


その時、ちょうど店にミリアが入ってきた。

彼女はヴィーリ親方の疲れた顔を見て首をかしげた。


「ヴィーリ親方、だいぶ浮かない顔ね。何か困りごと?」


「その通りなんじゃ。この火竜の炎石が言うこと聞かなくてな。熱が強すぎたり弱すぎたりで、どうにもならん」


ミリアは興味を引かれた様子で、炎石を手に取った。

彼女は僕の方を見て「ちょっといじっていい?」と目で聞いてきた。

僕がうなずくと、彼女は指先からごくわずかの魔力を石に向流し込んだ。

すると、石の表面が一瞬輝き熱を放出し始める。

横で見ていた親方が目を丸くする。

その間にも、ミリアが魔力を強めたり弱めたりしながら石の様子を観察している。

暫くして、彼女は完全に熱が冷めた石をカウンターにおいた。


「この石、私なら制御できるわ」


いつも無表情な彼女が、こころなしかどや顔の様に見える。

ヴィーリ親方は目を丸くし、髭を撫でながら考え込んだ。


「ミリアよ、お前さんががその石を制御できるっちゅうなら、ひとつワシに手を貸さんか?

どうにも、その石はワシ一人の手には余るようじゃ」


親方の誘いにミリアは小さく笑う。


「息抜きにちょうどいいわ。いいわ、協力する」


こうして、新型焙煎機の開発ミリアがに参加することになった。



後日、二人の共同作業が始まった。

ヴィーリ親方は焙煎機の物理的な構造を改良し、ミリアは炎石の魔力を制御する魔術刻印と制御機構を設計した。

ある日は外の仮設小屋から金槌の音と魔術の光が賑やかにもれだし、また別の日は店内で二人が喧々諤々の討論を繰り返す日々になった。

僕はただそれを見守りながらコーヒーを淹れる日々が続いた。

ある日、ミリアが設計した仮設の加熱器が出来上がった。

あくまで理論の実証のための不格好な骨組みだったが、石の熱を見事に上げたり下げたりする様子を見て、親方は「なるほどのぅ。石の凹凸で出力が変わるのか・・・。これぁ大したもんじゃわい」と感心した様子だった。


そこから数週間後、試作と小型化、効率化を繰り返し、ついに焙煎機が完成した。

鉄ではなく属性の魔素を帯びた鉄「魔鉄」で作られた本体と、魔術との相性がいいミスリルと銅の合金でできた頑丈で軽量、熱伝導率も抜群なドラムに、炎石を完全に制御するために作られた特殊な炉が備わっている。

ミリアが理論を作り、事細かに組み上げた魔術刻印が炉だけでなく熱が通る部分の全てに刻まれ、熱を思うがままに制御できる仕組みだ。

ヴィーリ親方は「どうじゃ。魔鉄は熱に強い炎属性と冷却のための水属性と氷属性を組み合わせた新設計じゃぞ」と胸を張り、ミリアは「ここまでの魔術刻印は、王城に保管されているマジックアイテムでもなかなか見ないレベル」と満足そうに頷いた。


「お二人とも、本当にありがとうございます」


僕が深々と頭を下げると、二人は「久しぶりに楽しかった」と笑ってくれた。

さあ、早速完成品の稼働といこうか。

試作機の段階で普通の豆は何度か焙煎しているけど、完成した実機で焙煎するのは今回が初めてだ。


流石に西の砂漠の希少な豆をぶっつけ本番では使えないので、いつも使っている豆を使う。

いつも使っていると言っても、僕が選んでブレンドした縄束亭のハウスブレンドだ。

しかもただブレンドするだけじゃない。一旦水で洗い、乾燥させている。

こうする事で豆それぞれの個性が突出し過ぎない、バランスが取れたコーヒーに仕上がるんだ。

そうやって手塩にかけて作っているブレンドの豆だ。気合い入れて焙煎するよ。


焙煎機に火を入れる。ゴォン…という始動音とともに、フォボボボ・・・とロースターに火が灯っていく音がする。

火竜の炎石が炉の中で赤々と輝いているのが小窓から見えた。

そのまま、温度計を凝視しながら、火力と温度を調整していく。


100℃を超え140℃に差し掛かった。

ここで豆を投入する。

ロースターのドラムが回転し、中の豆がジャラジャラと姦しい音を奏でる。

焙煎を始めて徐々に温度が上がっていく、煎り上がりの温度を190℃を目指すが、一気に温度は上げられない。

徐々に徐々に、豆の状態を見ながら温度を上げていく。


そしてジャラジャラという音に混ざって「パチ…パチ…」と小さな音が聞こえ始める。


一爆ぜだ。


要られた豆が膨らみ、パチパチと音を立てる。

時間を見ると、いつもより心持ち早い様に思う。

火力が高いのか、これが最後にどう影響するのかわからない。


そして徐々にジャラジャラという音がもっと軽い音になってきた頃、一旦落ち着いた爆ぜる音が、再びパチパチと鳴り始める。


二爆ぜ。


もうすぐ煎り上がりの合図だ。

ここからは一切気が抜けない。時折豆を取り出し、色を見る。

まだ煎りが浅い。うちのハウスブレンドは豆の脂が浮き出るほどの深煎り。

切れのある後味の南方の豆と、香り高い東方の豆をベースに構成してある。

もう少し先の煎り加減が必要だ。


豆を取り出しては戻す作業を繰り返して暫く、豆の脂がつやつやと輝き、茶色からもっと深い茶色、黒ともいえる色になった瞬間、チャンバーを開放する。


大量の煙と共に、煤けたような香ばしい香りが小屋に充満する。

冷却用の回天ざるに豆を広げて、これ以上焙煎が進まないようにする。

吹き付ける冷風とザラザラとかき混ぜられる豆の音だけが小屋になり続ける。

しばらくして、粗熱が取れた頃。

一粒つまんでよく見てみる。


「これは・・・」


不思議な豆だった。完全に冷めているはずなのに、指先がじんわり熱を帯びたような感覚になる。

試しに齧ってみる。

煎られて膨らんだ豆は多孔質化して、生の豆よりもはるかに軽い食感になる。

なんの労もなくカリッという小気味よい音と共に豆は口の中で砕けていく。

口の中に広がる香ばしさと苦み、口の中で砕けながら香りを広げていく。


「・・・美味しい」


つい口から言葉がこぼれてしまう。

その言葉を聞いて、固唾を飲んで見守っていたヴィーリ親方とミリアがほっと胸をなでおろす。


「二人とも、この豆美味しいですよ!

いつものハウスブレンドですが、一段階上の仕上がりになっています!」


そう言って、二人にも煎り上がった豆を渡す。

齧ってみるように促すと、二人ともおっかなびっくり口に含んだ。

ポリポリと二人の咀嚼音だけが響いて、やがて「ほお」とも「ふう」ともつかない声を出した。


「コーヒーの豆をそのまま食ったのは初めてじゃが、なかなかオツなもんじゃのぉ」


「これにウィスキーを合わせたらどうなるじゃろうのぅ」とヴィーリ親方が顎を撫でる。

対してミリアはちょっと微妙な顔をしている。


「豆の香りが鼻に抜けていく。これは確かに美味しいと思う。でも豆の粉が口の中に残るのはいただけない。

私はやっぱりカフェラテでこの豆を味わいたい」


なるほど。らしいといえばらしい、それぞれの感想だ。

とはいえ、今日すぐにこの豆を使ってコーヒーを淹れる事は出来ない。

その事を二人に伝えると、とても意外そうにしていた。


「なぜ?私はすぐにこの豆のカフェラテが飲みたい。キャロットケーキも付けて欲しい。

今日はそのために来たと言っても過言ではない」


ミリアは不満たらたらな様子だ。

そしてヴィーリ親方も同様の様子だ。


「ミリアの言う通りじゃフォルカ。コーヒーの豆とは煎りたてが一番うまいのではないのか?

それをワシらに振舞わんとはどういう了見じゃ?」


僕は二人にその理由を説明する。


「確かにコーヒー豆は焙煎したてが一番だという人もいますね。

でも焙煎したての豆からはガスが出ているので、雑味というか後味が良くないように感じるんです。

なので僕は、焙煎してから4日くらい置いた豆をいつも使っているんですよ」


煎りたてのコーヒーの香りが高いことは認めるし、その美味しさもあると思う。

ただ、僕は4日目の豆の方が好きなんだ。

嗜好品だからどれが正解って事ではないんだけど、どうせなら僕が一番おいしいと思うコーヒーを飲んでもらいたいんだよね。


「とはいえ、やっぱりこの豆、今すぐ飲んでみたいよね」


「「はあ!?」」


好奇心には抗えない。

4日後は4日後として、今はこの豆のコーヒーを飲んでみたくて仕方ない。

さあ!抽出だ!

と、豆を瓶に移し、いそいそと店内に戻って行く。


グラインダーに豆をセットし、均一な粉に挽ていく。

深煎りの豆独特の、サリサリと軽い手応え。

かぐわしい香りが立ち上るが、それだけじゃなかった。

挽かれていく豆から小さな火花の様な赤い光が、立ち上っている。本当に微細で明るいところだと気づかないくらいの光だ。

ミリア曰く「火竜の炎石」の魔力が豆に入り込んでいる」らしく、それが豆が砕けた拍子に飛び出しているらしい。

「別に害のあるものじゃないから、気にしないで」と彼女は言うけど、初めて見るものだからさ。ちょっとびっくりするよね。


粉の分量を量り、抽出していく。

蒸らし用のお湯を注いだだけで、もこもこと粉が膨らんでいく。

ガスが抜けきるとここまで膨らまなくなるから、これは焙煎したての豆ならではだよね。


人数分のカップにコーヒーを注ぐ。

ミリアはカフェラテが飲みたいとの事だったので、かふぇらてにしてある。


「さあ、どうぞ。二人の努力の結晶が作り上げたコーヒーです」


飲んでみると、バランスが取れた風味に、苦味と深いコクの奥に、灯の息吹のような温かい余韻が広がった。

今までのハウスブレンドでは無かった味わいだ。


これなら、あの希少な豆もそのポテンシャルを引き出すことが出来るかもしれない。


「今からあの豆を焙煎します」


二人にそう宣言すると、僕は焙煎小屋に向かった。

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