第22話

朝の空気はひんやりと冷たく、雪が静かに降り積もっている。宿の客室から外を見ると、一面の雪景色が広がっていた。莉子と里子は、朝の静けさの中、早くから目を覚まし、温泉に行く準備を整えていた。


浴衣の上からふわりと羽織った厚手のガウンを着て、二人は温泉へ向かう。宿の廊下を歩く足音は静かで、外の冷たい空気と、温泉から立ち上る湯気が心地よく対比を成していた。温泉につくと、まだ人の気配はなく、二人だけの静かな時間が流れていた。


温泉に浸かると、体全体が温かさに包まれ、雪景色が湯気の中にぼんやりと浮かんでいる。莉子はゆっくりとお湯を肩まで浸し、深呼吸をしてその心地よさに浸る。里子も同じようにリラックスし、ゆったりとした時間を楽しんでいた。


「この温泉、やっぱりいいね。」莉子が穏やかな声で言うと、里子はうなずきながら微笑んだ。「ほんとうに。こんなに静かで、心が落ち着く。」


しばらくの間、二人は静かにお湯に浸かりながら、夜の出来事や感想について話していた。温泉宿の贅沢な体験に感謝の気持ちが広がっていた。


「来年の夏には、海水浴に行きたいね。」里子が突然提案する。


「いいね、それ!」莉子が目を輝かせながら応じる。「海でのんびりするのも楽しそうだし、またこうやって一緒に旅行できたらいいな。」


二人は、来年の夏の計画について話し始めた。どこに行くか、何を持っていくか、そしてどんな海のプランを楽しむかを相談し合った。未来の楽しみを語ることで、現在の幸せな時間がさらに深まっていくように感じられた。


「うん、海での時間もきっと楽しいだろうね。」里子がにっこりと笑いながら言う。


「そうだね。」莉子も同じように微笑む。


二人はその後も温泉に浸かりながら、未来の計画やお互いの夢について語り合い、心地よい時間を楽しんだ。やがて、朝の日差しが差し込み、温泉から出る時間がやってきた。新しい一年に向けての希望と楽しみが、温かいお湯と共に心に残っていた。

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