空飛ぶ槍

「さ、着いた」

石材の城壁とは違い、コンクリート製の城壁が迎える。

「何か城壁の上に見えるよ?」

下の小窓から外を見ていたジェームズが教える。

「そんなに不思議なものか?」

陸は操縦桿を少し横に倒し城壁が見えるようにして下を見下ろす。

「本当だ、あの丸い筒みたいなものはなんだろうか」

「なんでしょうかね?」

城壁の上には、一定間隔で丸い筒が斜めに2つ1組として取り付けられていた。

「砲塔か?」

エドがそんな予想をつつも着陸に向けて準備をし始めた。

空港の指示に従い着陸した。

「自分は手続きしてくるからあとはよろしく」

陸は空港へと入っていった。

ジェームズとエドは荷物を下ろし、エドは屠龍の点検と整備、ジェームズは荷物の点検と消費した弾薬の補充。

「ジェームズ、あの筒はなんだろうな?」

「さぁ?そもそもあれが飾りなのか武器なのかもよくわからないからな」

そんな会話をしつつ、作業を進める。

「おーい、エド、ちょっといいか?」

「はい?」

陸に呼ばれたエドは作業の手を止め、陸に駆け寄る。

「なんでしょ?」

「いやさね、この人が非常にお冠で、ちょっと話を聞いてくれるか?」

陸はエドを盾にそそくさと逃げる。

「どうかされましたか?」

「君たちの飛行機を危うく撃墜するところだったよ、君たちの飛行機に識別装置は積まれてないのかい?」

「あいにく使う場面が少ないので軽量化のために外してるんですよ」

「それなら、この国の上空を飛ぶならこれを載せて飛んでくれるか?」

男は奥から出してきた銀色の箱をエドに手渡した。

「この箱を飛行機に積むことでこちらのレーダーに味方と写り、攻撃させません」

「もし外すと?」

「アンノウンとしてミサイルが飛んでく」

「ふーん」

エドは銀色の箱を持ち、屠龍に持って帰った。

「エド、それは?」

「識別装置だってさ」

二人に協力を仰ぎ、荷物の間にロープで固定した。

「これでよし」

エドは引き続き屠龍の整備、ジェームズと陸は街に繰り出した。

陸は消費した日用品を買い集める。

「あなたは旅人ですか?」

その時、後ろから子綺麗な服を着た男に話しかけられた。

「誰だ?」

陸は振り返る。

「わたくし、こういうものでして」

「国営兵器工廠第34号.....の人がなんで俺に?」

「単刀直入にお聞きしますが、あの屠龍はあなた方の飛行機ですよね?」

「ああ、そうだがそれが何か?」

「我々の開発した新たな兵器のテストを行っていただきたく」

「ふむ、その兵器というのは?」

「新型のミサイルです」

「ま、いいか、いいでしょう」

陸は男に連れられ、工廠がある場所まで案内された。

途中飛行場に寄って、ジェームズとエドを回収した。

「着きました、ここが工廠です」

大きな倉庫のような場所で、中からは金属を叩いたり、何かが弾けるような音も混ざって聞こえてきた。

「ではこちらに」

3人は奥に案内された。

「今回の実験はこちらの発射試験です」

それは、細い棒を少し尖らし、胴体と後ろに小さな羽をつけたような形だった。

「本来これは、高速で飛ぶ戦闘機から発射されるものですが、今回は実験なので低速のレシプロ機で射撃テストを行います」

「目標は?」

「先に標的となる飛行機を飛ばしそれを索敵、撃墜してもらえればいいです」

「わかった、ちなみに報酬は?」

「報酬ですか?......あなた方が望むのであれば、いくらでも」

「よし、やろう」

「ありがとうございます!ところで、あなた方の操縦士は?」

「自分です」

陸が名乗り出た。

「ではこちらに」

「あの、我々は?」

「あなた方は.....特に何もする必要はありません、帰っていただいても、我が国を観光してもらってもいいですよ」

「エド、ちょいちょい」

「はい?」

陸がエドを呼び寄せる。

「屠龍の点検は済んだかい?」

「後少しで終わりますが?」

「ならエンジンを回しておいてくれないか?なんだか調子が悪くてね」

「了解です」

二人は飛行場に戻って行った。

「ではこちらに」

陸はそのまま飛行場に併設された駐機場に案内された。

「この機体に乗っていただきます」

駐機場には一発のエンジンと、プロペラが付いた機体が鎮座していた。

「Bf 109 Eか」

「操縦などの方法はご存知で?」

「ああ、俺が軍に入った時の訓練機だったよ」

「では特に説明は不要で?」

「むしろ教えてやりたいくらいだ」

「ははは、ご冗談をそれではこれで」

男は去っていた。

「........なんでここにこの機体があるんだ?」

陸は迷わず機体の内部と下部を見た。

「やっぱり、この機体は俺の同期が乗っていた機体だ」

機体の中は全て変わっているものの、機体の外は当時のものがそのまま使われているのかところどころに弾痕や擦れなどが見てとれた。

「撃墜されたはずなのに」

しかし、そんなことを考えているような余裕はない。

「準備はできましたか?」

「ああ、できたよ」

「あとはコックピットに乗って、標的機を撃ってもらえるだけでいいです」

「いつ試験を始めるんです?」

「あと3時間後に始められれば」

「わかった」

「少し飛行場に戻っても?」

「もちろんです」

陸は早めに飛行場に戻った。

「エンジンは回してみたか?」

エドに聞いてみた。

「いや、まだ回してない」

ジェームズはすでに必要なものを買い集め、呑気に昼寝をしていた。

「ちょうどよかった」

「?」

「俺が試験を終えるころになったら、すぐに飛び立てるように準備しておいてくれ」

「なぜに?」

「どうもあいつら、きな臭いんだ、新兵器だから極秘のはずなのに、試験は旅人にやらせるし........」

「.......わかった、回しておくよ」

「それじゃあ、そろそろ戻るよ」

陸は少し急ぎ気味に戻っていった。

「戻りました」

「お待ちしておりました、こちらです」

さっきの飛行場まで案内される。

「離陸してから、そちらの無線機で指示を出します」

「わかりました」

「それではご健闘を」

男は管制塔に帰っていった。

陸はBf 109 Eに乗り込み、当時の訓練を思い出す。

エンジンは好調で、爆音正しく唸り始めた。

「この感覚、懐かしい」

隅々まで眺め、当時を懐かしむように飛行帽を被った。

「さ、行こうか」

滑走路まで出た。

「小林機から管制塔」

『小林機どうぞ』

「離陸の許可をどうぞ」

『離陸を許可する』

「以上小林機」

許可を貰った機体は滑走路を走り出し、スピードをぐんぐん上げていく。

滑走路から飛び立つと、青い空を駆けて走った。

『管制塔から小林機』

「管制塔どうぞ」

『感明送れどうぞ』

「感明良好どうぞ」

『以上管制塔』

無線機のテストも終わり、いよいよミサイルの発射試験に移る。

『無線も良好だ、そのまま喋ってもらって構わない』

「了解」

陸はその後も、機体を上下左右に動かして、運動性能を確かめたり、ミサイル関連の機能がしっかり動作するかを確認した。

『それじゃあミサイルの発射試験だ、今標的機を離陸させたから少し待っててくれ』

滑走路から少し離れた場所を旋回し、標的機を待っていると、滑走路にオレンジ色の機体が6機見えた。

ミサイルは8発。

次々と空に浮かび上がってきた。

『自分のタイミングでどんどん撃っていいよ、後は勝手に追尾してくれるから』

「了解」

一発目を撃とうとした時、無線が鳴った。

「なんだ?」

『あんた、名前は?』

怯えたような声が無線に流れる。

『どうした?』

管制塔からも無線が入った。

「どうにも無線の調子が悪くて、少し切っても?」

無線機を切りつつ、標的機と並走する。

陸は手信号でパイロットに無線の周波数を伝えた。

再び無線機をつけ、周波数を合わせる。

『あんた、名前は?』

今度は少し安堵したような声だ。

「陸だよ」

『俺たちを撃つのか?』

「あなたたち次第ですかね」

『お、俺たちは無理やり乗せられたんだ』

「無理やりというと?」

訓練機の男は話し始めた。

『我々は元々この国の植民地からここに連れて、ただの飛行訓練だと聞かされ無理やり飛行機に』

『この国はこの兵器を使って我々の祖国の全てを破壊しようとしているんだ!』

『それを止めて、祖国が再び反撃するための足がかりを作るために、少しだけだが機関銃の弾もこの飛行機に乗せてきたんだ』

『数時間前に咄嗟に思いついた作戦だが、これにはあんたの助けも必要なんだ』

「.............いいですよ、しかし、これが終わったら私は直ぐにこの国から逃げます、その時の手助けもしてくださいますか?」

『もちろんです!!』

陸は管制塔ともう一度繋ぎ直した。

「無線機直りました」

『よかった、試験は続行できるか?』

「それが、無理になりました!」

陸は無線を切り、識別装置を切った。

「さあ、やろう」

機体を管制塔に向け飛ばす。

「ようやく気付いたか」

滑走路には単発の迎撃機が滑走を始めた頃だった。

しかし、訓練機からの銃撃によりほとんどが飛行不能になった。

訓練機の編隊の中で、陸は管制塔に向かいミサイルを放った。

見事に管制塔に直撃し、そこを抉り取った。

「よし!」

再び無線を灯した。

「これで俺の役目は終了だ失礼させてもらう、工廠を攻撃するも、国外に逃亡するも君たちの自由だ」

『ありがとう,本当にありがとう』

訓練機との編隊を離れ、屠龍のある飛行場へと戻った。

「逃げるぞ!」

既に屠龍はエンジンを回し始め、いつでも旅立てるよう準備が整っていた。

さっさと滑走路に出て、大空に飛び立った。

「ありがとう」

「にしてもなんで管制塔を攻撃したんだ?」

「あの国は、植民地をあのミサイルで破壊しようとしていたんだ」

「ふーん、これにそんな力が」

「これ?」

「ああ、陸が飛んだ後にサイレンが鳴ったから、工廠に行ってみたら誰もいなかったのよ、だから工廠にあったミサイルの設計図を持ち出して次の国で売れればなと」

「........は???」

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