第2話
五月十三日、午後三時五十分。東区にある高校の一つ清流高校の屋上。
海野聖飛は、斎川賢斗が操作しているノートパソコンの画面を見ていた。
「賢斗、どうだ?」聖飛は今か今かと興奮気味に訊ねる。
「聖飛さん。急かさないでくださいよ」
「悪い悪い」
自分の気持ちを前に出しすぎた。自分の悪いくせだ。聖飛は反省した。
「……データコピー完了しました」賢斗は、ノートパソコンのエンターキーを押した。
「マジか。さすが、賢斗。やっぱり、お前は天才だわ」聖飛は、ノートパソコンの画面に映るコピー成功を見て、興奮と驚きを隠せなかった。
「これぐらい簡単です。でも、僕は天才ではないです」
「謙遜か?」
「僕は鬼才ですから」賢斗は自慢げに言い放った。
「なんだと?調子に乗りやがって。グリグリの刑だ」聖飛は両手を握り拳にして、賢斗の頭の側面を何度も擦り付けた。
「痛いですよ。データ消しますよ」
「それだけはやめてくれ」聖飛は擦るのを止めた。データを消されるのだけは絶対に嫌なのだ。
ドアが開き、二人の女生徒が現れた。彼女達は、清流高校2年が誇る美人双子姉妹の朝野葵桜と朝野紅礼奈だ。二人は一卵性双生児で、顔がほぼ一緒である。だが、性格は真逆だ。姉の葵桜は知的で大人しいが、妹の紅礼奈は運動好きで荒っぽい。髪型も違い、葵桜はボブで、紅礼奈は長髪を結んだポニーテール。
「聖飛、賢ちゃんに何してんの?」紅礼奈が聖飛に訊ねた。
「お仕置き」
「紅礼奈さん。助けてくださいよ」賢斗は、紅礼奈に助けを求めた。
「早くやめてあげなさいよ」
「うるせぇな。お前はつっかかってくんなよ」
紅礼奈は昔から事ある毎に絡んでくる。それも、むかつく態度で、むかつく口調で。聖飛は紅礼奈に言い返しながら思った。
「何ですって?」紅礼奈は聖飛の言葉に腹を立てた。
「なんだよ。やんのか」
「いいわよ。やってやろうじゃないの」
聖飛と紅礼奈は睨み合っている。顔の距離はあともう少しでキスするぐらいに近い。
「二人ともやめて。喧嘩はよくないよ」葵桜が大声で言った。
「……分かったよ。葵桜の為にやめてやるよ。お姉ちゃんに感謝しな」
聖飛は我に返った。しかし、苛立ちは残っていたのか口調は強めだった。
「うるさいわね。ポンコツ」紅礼奈は苛立ちを消化できていないのか毒を吐いた。
「なんだと」
「痛い。痛いですよ」
「悪い悪い」聖飛はすぐに賢斗の頭から両拳を放した。
「大丈夫?賢ちゃん」紅礼奈は屈んで、賢斗に訊ねた。
「全然大丈夫です」
「そう。それで、あんた達、何してたの?」
「ゲームのデータコピーです。ランキング上位のアカウントを」
「それって違法じゃないの?」
「まぁ、そうですね」賢斗は悪気もなく平然と答えた。
「別にいいだろ。楽しむ用なんだから。外では使わないし」
「……呆れた。賢ちゃん。この馬鹿の言う事聞かないでいいわよ」
「馬鹿だと?こう見えて、学年36位だぞ。300人中」
「私は3位。葵桜は2位だし。直哉は1位よ」
「言い返せない。なんで、俺の幼馴染は賢い奴ばっかりなんだよ。あ、賢斗は成績どうなんだよ」聖飛は助けを求めるかのように一学年下の賢斗に訊ねた。
「僕は学年1位です」
「お前も賢いのかよ。腹立つな」
「どうもです」
「あれ?学年一位の直哉は?」聖飛は周りを見渡した。
「4組の八木さんに呼び出されてたよ」
「……もしかして、また告白されているのか?あいつ、今月で何人目だよ。あぁ、腹立つ」聖飛は再び、賢斗の頭の側面を拳で擦り始めた。
「痛いですって」
「あ、悪い」聖飛は賢斗の頭から手を放した。
「いいですけど。ちなみに今日の人で6人目です」
「6人目かよ。俺はまだ生まれてから一度もされたことないのに」
「直哉君が先にあそこに行っててくれって。すぐに用は済ませるからって」葵桜は直哉に言われた事を思い出して、言った。
「なんだよそれ」
「聖飛さん。痛いです」
聖飛は嫉妬で、自然に賢斗の頭の側面を拳で擦っていた。
「あ、悪い悪い」
聖飛は賢斗の頭から拳を放して、顔の前で合掌して謝った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます