第8話

20時。

 本日分の取材を終え、時計台の入り口に居た。

 未だに高揚感が抜きない。早く、ホテルに帰ってこの感情を文章にしたい。

「本当に素晴らしい夜空でした」

「ありがとうございます。その言葉仲間にも伝えておきます」

「はい。明日もよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします」

 俺はリゲルさんに握手を求めた。リゲルさんは握手に応じてくれた。

「それでは失礼します」

「しつれいします」

「はい」

 俺達はホテルに向かい歩き始めた。

「あ!一つ言う事忘れてました」

 俺達はリゲルさんの言葉で立ち止まり、振り返った。

「なんですか?」

「お休みなさい」

 リゲルさんは笑顔で言った。

「……そうでしたね。お休みなさい」

「おやちゅみなさい」

 俺達はリゲルさんに一礼してその場を後にした。


 ホテルに戻り、夜飾師の事やこの世界の事や今日感じた事をノートパソコンで文章にしている。普段よりすらすらと文章を書けている。きっと、今さっき見た光景で心が満たされているからに違いない。

 エマとキッキはベットの上ではしゃいでいる。無尽蔵の体力だ。疲れを知らないのか。少し静かにしてほしい。

「ジェード、まだー。ききたいことがあるの」

「ちょっと待って。もう終わるから」

「はーい。しずかにまつー」

 エマははしゃぐのを止めて、無言になった。キッキも同じように静かになった。

 今までの事が?みたいだ。それほどに聞いてほしい事なのだろう。早く終わらせて聞いてあげなければ。

――文章を書き終えて、ノートパソコンの画面上に表示されている保存のマークをクリックした。その後、ノートパソコンの電源を落としてから閉じた。

「終わったぞ」

「長い」

「数分だろ。で、聞いてほしい事ってなんだ?」

「あのね、あのね。あの空ってオーロラとか流れ星とかは見れるの?」

「それは分からないな。明日、リゲルさんに聞こう」

 エマの着眼点はいつも面白い。自分では思いつかない事ばかり。俺の視野を拡げてくれる。

「うん。あとね、あとね……うーん、あれ?」

 エマは首を傾げた。

「どうした?」

「わすれちゃった」

「なんだよ、それ」

「しかたないじゃん。……あーねむたくなってきた」

 エマはうとうとし始めた。マイペースだ。まぁ、子供だから仕方がないか。

「寝るのはお風呂入ってからな」

「えーおふろはいるの?あしたのあさはいる」

「だめ。今入るぞ」

「……えー」

「はいは?」

「……はーい」

 エマは不機嫌そうに答えた。

「いい子だ。じゃあ、お風呂入る準備しなさい」

「うん。わかった」

 エマはベットから降りて、リュックを開け、中から着替えを取り出した。

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