第3章 走査線 :3-5 次の作戦と決意
久保田探偵事務所に戻った剛志と彩音、そして久保田は、神崎にミッドナイトブルーでの出来事を詳細に報告した。黒いローブの人物との遭遇、地下通路での出来事、そして襲われた経緯を話すと、事務所内には重い沈黙が漂った。
「なるほど、そんなことがあったのか。」神崎はパソコンに向かいながら言った。「俺もその間に調査を進めていたんだ。蛇のシンボルについて話している掲示板の住民に接触して、実際に会って話を聞く約束を取り付けた。」
「明日、会う予定です。」神崎は続けた。「ただ、警戒されるといけないので、面会は俺一人で行くつもりだ。」
「気をつけてくださいね、神崎先輩。」彩音が心配そうに言った。
「あぁ。十分気を付ける。」神崎は慎重に応じる。彼にとっては手慣れた手法であったが、剛志たちに起こった地下通路での出来事を考えると、いつも通りに進まない可能性もある。
久保田が剛志に向き直り、真剣な表情で言った。「剛志さん、これ以上首を突っ込むと、本当に危険です。私たちに任せて、一歩引いてもらえませんか?」
剛志はすぐに決意を固めた顔で言った。「ありがとうございます、久保田さん。でも、翔太の無念を晴らすために、俺は引き下がれません。もし探偵たちが撤退したとしても、俺はやり遂げます。」剛志の声には確固たる意志が感じられ、迷いなど一切なく、弟のために全力を尽くすという熱い思いが溢れていた。
久保田は深く頷いた。「わかりました。あなたの決意が本物だということはよく分かりました。私たちも全力でサポートします。」
その様子を見ていた彩音は、剛志の決意に感銘を受けた。彼の意志の強さ、思いの強さに触れ、自らも高揚する感覚を感じた。自分でも説明できないその気持ちを落ち着かせようと、剛志に声をかけた。「剛志さん、お茶でも飲みますか?」
剛志は少し驚いた表情で彩音を見たが、微笑みながら頷いた。「ありがとう、彩音さん。君の支えがなければ、ここまで来れなかった。」二人の間に一瞬暖かい雰囲気が漂った。
ガタガタッ。その時部屋の隅から物音がした。キュミちゃんがどこかに走っていく後姿が見えた。
「キュミちゃん、また驚かせちゃったみたいですね。」彩音は苦笑いしながら言った。
「確かに、動物って敏感ですからね。」剛志も微笑みながら答えた。
翌日、神崎は単独で蛇のシンボルについて話していたネット住民との面会に向かうことになった。彼は慎重に準備を整え、約束の場所へと向かう。その間、剛志と彩音は事務所で待機し、次の展開を見守ることになった。
神崎が外出する前に、久保田が再度念を押す。「神崎くん、気をつけてね。何かあったらすぐに連絡するのよ。」
「了解です。必ず情報を持ち帰ります。」神崎は力強く答え、事務所を後にした。
剛志と彩音は、事務所のソファーで次のステップを考えながら待った。剛志は自分が真相にたどり着けるのか不安に感じる瞬間もあったが、彩音の存在がその不安を和らげてくれた。
「剛志さん、大丈夫ですよ。私たちがついてます。きっと乗り越えられますよ。」彩音は優しく微笑んだ。
「ありがとう、彩音さん。君の言葉に勇気づけられるよ。」剛志も微笑み返した。
事務所の時計の針が静かに進んでいく中、二人は次の行動に向けて心を落ち着け、神崎からの連絡を待ち続けた。
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