これはとにかくすごいSF。ぜひ読んでほしい

  • ★★★ Excellent!!!

 “不死病”の蔓延、それに伴う破滅的混乱と大戦争により人類文明は崩壊。あとに残されたのは、不死病によって魂なき不滅を与えられ、永遠のまどろみに陥った人々。そして、人工脳髄と蒸気機関によって仮初めの意識を与えられた不死病患者──永久戦闘機械スチーム・ヘッドたち。
 それらスチーム・ヘッドのうちの一体、今はすでにないWHO調停防疫局所属のエージェント・アルファⅡモナルキアは、重大な使命を帯び、人類最後の都市・クヌーズオーエに向かいます。しかし、その道行きは過酷であり、さらにその果てに待ち構えていたクヌーズオーエは、時空間のねじれによって想像を絶する魔空間と化しており……

 ここまで書いたのはあらすじのほんのさわりです。この物語は連載中で、物語の全貌は未だ明らかではありません。しかしそれにしても何という壮大な物語であることか! これほどの時空的ビッグスケールで展開するSFは久々に読みました。それだけでも本当に楽しいし嬉しい。これでもかと詰め込まれた数々のガジェット、スチーム・ヘッド同士の超高速機動での鍔迫り合いの緊迫感も見所ですね。
 しかしいちばんの魅力はやはりキャラクターたち。まさに題名通りで、主要キャラはほとんど女性。それも、見目麗しい絶世の美少女ばかり……なのですが、それにも増してひとりひとりの個性が際立っていて、それがまたよいですね。キャラクター同士のやりとりもまた楽しい。ラブコメ風のユーモアあふれる掛け合いは軽妙で、思わず笑ってしまいます。
 その一方で、この物語を通底するのは物悲しさ。死を主題とする物語なのだから当然ですけれど……永遠に死ねず、朽ち果てることもできぬまま、人間だったころの記憶と心をかかえて「歴史の終わり」をさすらうスチーム・ヘッドたちの吐露する苦悩……怒りも悲しみも、喜びすらもすりきれて、何のために「生きている」のかわからなくなっていくことへの絶望……そしてまた、時空間のねじれによって、世界そのものが不安定になり、それに伴って自分自身のアイデンティティが根底から揺らぐことへの不安と恐怖……それでもなお、失いたくない大切なものを守りたい、この手に握りしめておきたい、心の中にとどめておきたいという切ない願い……それらが渾然一体となって、本当に不滅のものなどなにもないのだという無常感に至っている。この物悲しさが、個人的にはとても気に入りました。ユーモアあふれるやりとりが、その物悲しさを一層増している感すらありましたね。
 
 ともかくも、この壮大な物語の全貌はいまだ明らかでなく、アルファⅡの目指す最終目的地〈ポイント・オメガ〉については不明のままです。しかし、それだけに続きが待ち遠しい……時空間を越えて展開される壮大な旅路の末に、「終われない」スチーム・ヘッドたちが行き着く先、旅の終わりに見える風景はどんなものだろうかと思ってしまうのです。