ジム・トンプスン『おれの中の殺し屋』の末尾にこういう一節があります。
ねじれたキューでゲームを始め、あまりに多くを望んで、あまりにわずかしか得られず、よかれと思って、大きな悪を為す者たち。おれたち人間。(中略)おれたち、みんな。
おれたち、みんな。
このお話を読んでいて、この一節をどうしようもなく思い出しました。まさにこの通りのお話ではないか、と。
失ってしまった大切なものを取り戻そうと苦心惨憺した挙げ句、取り返しのつかない罪を犯し、骨の髄まで血にまみれ、もはや救われない怪物に成り果てて生きるしかない。それでもなお、どうしても手の届かないものに手を伸ばさずにはいられない。その大切なものというのは、結局はささやかな愛であって……
その、どうしようもない切なさ、いじらしさに胸を打たれます。しみじみとした物悲しさが染みてきます。そして、この物語はどうしようもなく人間を描いたお話なのだ、とつくづく感じるのです。