流行りの安易テンプレに物申す!

ダンジョン内で危機に陥ったパーティから囮として置き去りにされた主人公が、なんとか生還を果たし同じ境遇の仲間達とあらたに救助専門パーティを結成、その「救助隊」の奮闘を描く物語。

定番テンプレである「追放ざまぁ」のバリエーションには違いないのですが、それら作品の多くが展開としてまず追放ありき、その理由や状況に大きく無理があるケースが少なくない中、本作の場合戦闘時に囮として放逐される、そこからどうにか生還を果たすというシチュエーションにも無理がなく、またダンジョンにおける救助依頼がある種の暴利ビジネスとなっているという現状を変えるために救助隊を結成する、といった動機付けもなかなかにヒネりが利いていたように思います。
作中で描かれている数々の救助案件についても、トラブルメーカー的人物とのやり取りであったり、あるいは悪天候や地形的な難所などからの冒険行的脱出劇という方向で見せ場をつくっていくスタイルで、ドラマや活劇で見せ場を作っていく作劇に好感がもてました。

また中盤以降注目だったのは、主人公が救助隊として自分を追放した元勇者パーティと再会し、その場の窮地を切り抜けるために協調共闘を強いられる展開でしょうか。
単純に元のパーティが色々困ってざまぁみろでは終わらず、書き割り的な憎まれ役に終始せずに追放する側の正当性や心理にも迫る事で、主人公と追放した勇者をお互いに並び立つライバルキャラ同士として描き、その両者が意見を衝突させながらも危機を一緒に切り抜けていく展開は、読んでいてなかなかにテンション上がるものがありました。世の安易テンプレに対する作者なりのアンサーという側面を強く感じましたが、ただアンチ的主張に終始するのではなく各キャラの造形や掛け合いなどはあくまで王道的であり、誰もが安心して楽しめる丁寧に作られた物語と感じられました。

…それだけに、登場人物のネーミングがほぼほぼ全員ベタなダジャレになっているの、そこだけやっつけ感が出ちゃってるのが少しざんねんと言えばざんねんだったかも…(敢えてツッコミ待ち…?)

多くの追放もの同様、追放した勇者との関係に決着を見たところで展開としては一区切りついており、お話としてはややコンパクトにまとまっている感もありますが、流行のテンプレに対するある種の問題提起として興味深く読ませていただきました。
ダンジョンが人為的に管理された人工空間であるかのようなほのめかしなど、実は壮大なSF的世界観でした!みたいな含みも個人的にはたいへん気になるのですが、この辺は続編等ちゃんと回収される機会は果たしてあるのかどうか…

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