14.決起
町外れの道路は、散々な有様だった。
舗装の石畳は弾け飛び、周囲の街路樹は薙ぎ倒され、何かが焦げた匂いが漂う。
……が、当の燃えたものといえば、貫かれたように折れて煙を上げていた木々ぐらいだ。警官やら役所のスタッフは呼び出され、一時は首を傾げながら辺りを調べたが、時計塔の音が鳴り響くと、何かを思い出した様に撤収してしまった。
ぼろぼろになった道はそのままに車が通り始める。そこを直そうとする者はおろか、道の破損を目に留める者は居なかった。
その様子を、時計塔の窓から神父が眺めていた。
望遠鏡でも無くては見えぬだろう距離で、彼には瓦礫の惨状も、人の動きも見えていた。水竜の巨体が内から爆発し、飛び散った肉片が煙のように消え失せるのも。
彼は懐から聖書を取り出して開いた。祈りや説法に使うそれを、無造作に一枚破ると、空中に泳がすように手放す。まるで暖炉にくべたように、紙は瞬時に火がつき、燃え上がるや、甲高い鳴き声を響かせて一羽の鷲――否、鷲の上半身と獅子の下半身が合わさった大柄な化け物が飛び上がっていた。至近距離で羽ばたくそれに、神父は言った。
「残滓があれば処理しろ。不審な者が居れば食って良い」
怪鳥は即座に煙を上げている場へと飛び立った。
「ガルグイユを
物静かに呟いた神父は身を翻したが、階段を降りながら……やがてその表情はニヤニヤとし始め、誰も居ない階段で狂ったように笑い始めた。声が幾重にも反響し、狭い塔の中を嘲笑が満たす。
「ハハ、ハハハ……ついに……ついに来た……新たな『灰』が……!」
つかつかと歩み出た先には立派な天蓋と、そこを通り抜ける未だ長い列がある。ファンという名の信者たちの羅列は、嬉しそうに歩いて来た神父には目もくれず、一心不乱に愛する女優を見つめている。唯一、女優――テオドラだけは、歩み寄って来る神父に気付いていた。彼女は目の前のファンに笑顔と握手をし、差し出されたもの――本だの手帳だのにサインを書きながら、奥の椅子にどっかと腰かけて尚、笑いの治まらない神父に言った。
「どうしたの、神父様。随分、騒がしかったけれど」
「ハハ……古い知り合いに、手駒をやられてしまったよ……ハーピー二体にガルグイユまで……」
”やられた”と言う割に、男は不気味なほど嬉しそうだった。
「ハーピーも? ”歌”は大丈夫なの?」
「大丈夫だよ、テオドラ。もう、この町は定時の鐘で制御できる。深い思考を止めるのは楽だろう……危険を感じること無く、穏やかな日常を謳歌するのを、疑わない……」
椅子にもたれて虚空を仰ぎ、男は冷静に在ろうと喋っていたようだが、抑えきれぬ含み笑いに身を揺らし、怪しい笑いを吐き出し始める。
「貴方は大丈夫なの、チェスター?」
「フフ、フフフフ、大丈夫さ、テオドラ……ああ、久しぶりだ、こんな想いは……嬉しくて嬉しくて、おかしくなりそうだよ……!」
酔った者でも、もう少しまともな事を言ったろう。どう見ても既におかしい男は、両手を組み合わせてぶつぶつ呟いた。
「準備をしなくては……もっと、もっと焼こう……焼けば焼くほど……魔は……力は放たれる……フフフフ……」
「楽しそうなところ悪いけど、あんまり辺りを壊さないでね。撮影が終わったら好きにしていいけれど」
「ハハハ……君は魔女にも劣らぬ女だ、テオドラ。欲望に忠実で、勤勉で我儘だ……君が育てる火種は美しい……『灰』を迎える素晴らしい業火になる……!」
女は呆れ顔で苦笑した。
彼女が軽く片手を添えると、目の前に立ったファンは活動を止めたかのように熱烈な表情のまま停止し、辺りの列の人間も魂でも抜かれた顔をした。それを確認するや、女はサインの手を止めて神父に振り返った。
「仕方のない人ね。そこでにやにやしていないで、減ってしまった手駒でも作って落ち着きなさいよ」
女が軽く視線をやると、機械人形のように立っていたスタッフの男が、両の手に捧げ持っていた、香炉のようなものを神父に差し出した。
「……ええ、そうします」
急に神父らしい調子に戻った男はにっこり笑って立ち上がると、香炉を受け取った。
それを大切そうに撫でながら、男は言った。
「テオドラ……明日にも、この辺りは騒がしくなるだろう……君は一度、国外に出た方がいい」
「
「それがいい。君は仕事熱心であると同時に、人道支援に熱心な人だから」
「好い気なものね。気を付けるのよ、チェスター……如何に私たちがベルティナの力を燃やし、”差し替え”ようとも、女王に肩入れした者は油断ならない。彼らは普段は知らぬ顔をしているけれど、女王の名には応じる可能性があるわ」
「君が言う通りだ、テオドラ……大丈夫さ。今日はその一人が現れたが、彼だけだ。他の者が居るならば、あんな無茶な方法でガルグイユを倒すまい……ディルクの子孫が『根』を継承していればそれでも足りるだろうが、それも無い。女王は魔法を隠し、後世の者たちは魔法を知らない。にわか知識で私は止められないよ」
「でも、『灰』は、貴方だけではないでしょう?」
女の呆れた笑みに、男はひどく穏やかに笑った。
「ジェラルドは来ないよ。彼にやる気が有るのなら、とっくに邪魔をしに来る筈さ」
神父は香炉を片手に抱き、女の手をやんわり引いて滑らかな甲に接吻した。
「火の継承者に祝福を。用を済ませたら私もそちらに行くよ」
体が冷たい。
自分は誰だったか。何処へ行く筈だったか。
これから、どうするのか……
「……」
目を覚ますと、ベッドの上だった。
呆けた頭で見渡す室内は、昨夜も借りたソルベット家の部屋だった。
一人には丁度いい広さの室内は、日頃から客を迎えるというだけに、素朴ながら綺麗に磨かれた木の床や、清潔なシーツや布団が備えられていた。やや大きめに感じる窓の前には小さめのソファーが置かれ、手製と思われるチューリップの刺繍が入ったクッションが置かれている。かつては誰の部屋だったのか――壁に飾られたドライフラワーや花模様のランプは女性的な印象を受けるが、ベッドは女性にしては大きすぎるし、コート掛けも背が高い。
……静かだ。
柔らかそうなカーテンの向こうから夕焼けと思しき光が窓から差し込み、辺りに人の気配は無い。はたと気付くと、いつも手元に有った
何処へ……――下の部屋だろうか。
起き上がったレンが灰色の髪を掻き上げて溜息を吐くと、不意にノックが響いた。
ぎくりと身を震わせて振り向くと、ベージュの髪と湖水のような目をした男が、遠慮がちに顔を覗かせた。
「あ、気が付いたんですね」
ロニだ。盆に茶器を乗せ、少々危なっかしい動きで入ってくると、何故か背後を入念に確認してから扉を閉めた。
「……どうかしましたか?」
不安げに尋ねたレンに、ロニは引き寄せた椅子に座りながら苦笑した。
「お昼、食べなかったんでしょう? それどころじゃ無かったと思いますが、イレーネがご立腹なんです。夕飯は意地でも食べさせる気でピリピリしていて」
お茶を注ぎ始める手元を、此処ではない何処かを見るように灰色の目が見つめた。茶葉に花のような香りが混じるのを嗅ぐと、穏やかな時間が動き出す気がした。
一方で、自分には相応しくない気がした。此処は場違いで、自分は異質で、この優しい空間にそぐわない。この中に、居てはいけない気がする……ざわざわと身の内で騒ぐのは、外に出るのを待つ『灰』なのだろうか……
「はい、どうぞ」
笑顔で手渡されたお茶をじっと見つめて、レンは緩慢な動作で受け取った。
「……ありがとうございます」
熱いので気を付けて、などと言いながらロニは自分の茶を含み、熱かったのか、きゅっと身を縮めた。
「水の魔力なんか有っても、熱いものは熱いんですねえ……」
変な事を言う男に、思わずレンは苦笑した。
「私も、熱いものは熱いですよ」
「そうですよね……」
要らんことを言った、という顔で足の方をちらっと見て、ロニは溜息を吐いた。
「マイルズ達に聞きました。大変でしたね」
「いえ、お二人が来て下さったので……呼んでくれたのは、貴方ですよね?」
「はい。人任せですが、僕が行くより頼りになると思って」
「ありがとうございました。私一人だったら……――」
言い掛けて、レンは口をつぐんで首を振った。――今頃、此処には居ない。
察したか、ロニは何も言わずにお茶を飲み、呑気な調子で言った。
「ノーラは下でのんびりしてますよ。マイルズは、少し前に出て行きましたけど、元気です」
「そう、ですか……エトは、どうしていますか?」
「ああ、あの子は下でリシェやイレーネと喋っています。筆談したり、リシェが少しだけ手話ができるので、それとノトリアも交えて楽しそうに――あ、そうだ。勝手に持ち出してすみません。マギアはイレーネが持ってっちゃったんです。曲げられては……いないと思いますけど……」
「大丈夫です。あれらは元々、私の持ち物というわけではありませんから……」
……そう。手元に置いて頼りにするあの二つも、味方でも仲間でもない。自分のものなど、何も……――駄目だ、なんだか良くないことばかり考える。
「勝手に連れて来て、申し訳ありません。ご両親にも……」
「気にしないで下さい。連れてきてくれて良かったと思います。隣町は大変みたいだし……そうではなくても、あの子、あんまり良い環境には居なかった様ですから」
おっとり笑う湖水色の眼差しを、重く乾いた灰色が見た。
「何故、あなた方は……そんなに優しくなれるのですか?」
問い詰めるような一言だった。
ロニが湖水のような目をきょとんと瞬かせた為、はっと気付いたレンは目を伏せた。
「すみません――……不躾なことを……」
「あ、いえ……えーと……」
カップを置いて、ロニは首を捻ったり窓辺を見たりと視線を泳がせた。
「僕は――流されてるだけの部分もありますけど、レンさんは優しいですよね?」
「わ、私が? そんなこと……」
「だって、僕を助けてくれたのも貴方ですし……エトくんを連れてきたのも貴方ですよ?」
「それは……どちらも私が巻き込んだ話というだけです」
「でも、貴方は見捨てなかった。彼は貴方に助けられたと言っていましたし、僕もそう思います」
「……」
言いくるめられている気がして、レンは頭を抱えたくなったが、静かな湖水色の視線はあまりにも穏やかで、要らぬ思考を許さない。
「そちらは……如何でしたか?」
話題を変えるように聞いたレンに、ロニは図書館での出来事を話した後、困ったように苦笑した。
「『鳥籠』という小鳥の本に関しては、何もわかりませんでした。ノーラも見たことは無いそうなので、明日改めて図書館を調べようと思います」
「小鳥……どの英雄にも
「イレーネもそう言っていました。何か、足りないものがあるのかも」
「……そうですね。ルドラクシャの方はどうでしたか?」
視線の先に有るのは、ロニの片手だ。例の陣を描いた方の手に、貴重品に触れる鑑定士が付けるような手袋をはめている。包帯では周囲を心配させる為、手袋に変えたらしい。
「家では別に良いんですけどね……不意に引っ掻いたりして線が一本消えても、ルーシャが居られなくなるそうなので」
ルーシャ。それがあのドリュアスの真名か。わずか数日の内に召喚まで成功させるとは、偉大な魔法使いを祖に持つだけのことはある。
「それでそのう……例の本は、見つかるには、見つかったんですけど……」
レンが胡乱げな顔をする中、ロニは何が有ったか説明した。隣町と図書館で様々起きる中、木の精霊は一人、ソルベット家の庭で奮闘していたのだが。
それは、図書館での業務を終えたロニが、今日だけで何羽見たか知れない小鳥に取り憑かれながら家に戻った時だ。先にリシェと共に帰していたイレーネが慌てた様子で出迎えた。
「ロニ様……お疲れのところ申し訳ありませんが、先に庭にお出で下さいませ」
何が有ったか聞く間もない――引っ張られて行った先で出迎えたのは、くすんくすんと啜り泣いている小さな少女と、それを小ぶりの樹ごと膝に乗せて、こちらを鬼の形相で見たリシェだ。
「兄さん!」
「は、はい!」
実の妹の大喝にしゃちほこばった兄に、気付いた少女が涙に濡れた顔を上げた。
「こんな小さい子になんて大変なことやらせるのよ!」
全くその通りの御意見に、兄はぐうの音も出ずに気を付けの姿勢で固まった。
どれだけ大変だったのかは、庭を見れば一目瞭然だった。ソルベット家の素朴な庭に、バケツが入るかどうかといった穴が開き、一体どれほど深いのか――底が見えない真っ暗闇の穴の周囲には、掘り返した土が盛られている。途中までノーラが手伝っていた為か、辺りは大雨でも降ったかというほどびしょ濡れで、母に「元に戻す」と安易に言ったのを後悔した。
「ル、ルーシャ……ごめんよ、大丈夫?」
片手を伸べた目下の主人に、少女は髪の葉を震わせて健気に首を振った。
「ルーシャ、せっかく励んだのです。ロニ様にあれをお見せなさい」
「……」
少女はロニとイレーネの顔を見比べていたが、リシェの膝を離れて、シンボルツリーの根本へと向かうと、そこから何かを持ち上げて戻ってきた。
「こ……これは……」
ルーシャが小さな両手で差し出したのは、土まみれというより泥まみれの本だった。汚れているだけならまだいい……正直、持った瞬間に綴じ目が抜けてバラバラになるのではと思うほど、見事に朽ち果てている。どうやら少女は、目当ての物がこの有様なのに責任を感じているようだ。予想を大きく裏切る品に啞然としつつも、ロニは屈み込んで受け取った。
「ありがとう……ずっと一人で頑張ってくれて――」
と、言うなり、その表紙は他愛なく滑り落ちて二つに割れた。ハッとしたルーシャの表情が歪む。下手なことを言ったら号泣するだろう少女を前に、ロニが必死のフォローを喋ろうとした時だ。割れた表紙をつついたのは、いつの間にやらそこに居たカエルだ。ズレた王冠を直した王は、言ってはならないことを言った。
「ズタボロだな」
ロニの顔は引きつり、ルーシャは悲痛な顔をした。
「……ロニさま……ごめんなさ……――」
「だ、だだだ大丈夫だよ……! これはこういうものだよ! 表紙ぐらい、全然問題な、い――」
慌てて繕う間にも、それは手の中でぼろっと崩れた。ぼとぼと落ちる本の破片を眺めながら、ノーラは呆れ顔で言った。
「何が“こういうもの”だ。これほど朽ちては本として成り立つまい」
「ちょっとノーラは黙ってて!」
勢い込んでカエルを黙らせるが、もうその時にはルーシャの目は涙でいっぱいだ。小さなまるいほっぺたを涙が伝い、小さな手がおろおろと押さえる。
「ごめんなさい、ロニさま……わたし、役に立たなくて……」
「あああ、違うよ……! そんなことない、君は一生懸命やってくれたよ……!」
泣かないで、と声を掛ける中、今世紀最高に気の利かない本は遂にぼそっと二つにもげて、原型を失った。ルーシャが声を上げて泣き始める。カエルは気怠そうに崩れた本を摘まんでは眺め、ロニは少女を必死に慰める。
「兄さんッ‼」
結局、柳眉を逆立てたリシェの雷が落ちて、こっちも泣きそうなロニがひとしきり弁解に明け暮れ……崩れた本を丁寧に回収し、しゃくり上げるルーシャが落ち着いて、ようやく場は収まった。
「――では、二人目の『灰の魔法使い』が書いた本ではなかったのですか?」
一部始終を聞いたレンの問いに、ロニは曖昧に首を捻った。
「それが、そうでもないみたいで――」
イレーネが当てが外れたことを謝る中、意外なことを言ったのは発言を許されたカエルだったという。
「ノーラが言うには、微かに気配がするとかで、確かに二人目の『灰の魔法使い』が書いたものらしいんです。ただ、イレーネが言っていた通り、子供向けの魔法指南書みたいで、
「すると……『灰の魔法使い』が書こうとも、全てが『灰の魔法』に通じるわけではないんですね」
「そうみたいです。だから、明日は図書館を改めて調べます」
明日も頑張らなくちゃという顔のロニを、静かな灰色が見つめた。
「……ロニさん、もし、旧時代の魔法が見つかったら……どうするおつもりですか?」
「え?」
「ファウストと、戦うのですか」
「……上司にも、同じことを聞かれました」
すう、と息を吸って、湖水は灰色に向かい合った。
「ファウストが、世界を滅ぼす気なら……戦います」
「死ぬことになっても?」
「それは困りますけど」
素直な回答に、レンは目を瞬かせ、ロニは頭を搔いた。
「……他に言い様がないので」
「それはそうでしょうが……それなら、もう踏み入るのはやめた方が……」
「命は惜しいです……でも、それは戦う理由にはなっても、戦わない理由にはならないと思うんです」
面接で言い辛いことを聞かれたような気になりつつ、ロニは難しそうに首を捻った。
「だって……ファウストが世界に『灰の魔法』を使うつもりなら……結局のところ、戦わないままでも同じですから。一矢報いるほどの力も無いですが、何もしないより良いと思います」
「――私が行けば、それで済むとしても、ですか?」
鋭い一言に、ロニは灰色の目を見た。見交わす視線は、互いに真剣だった。
「貴方だけに、託せと言うんですか」
「そうです。大切なものが沢山有る貴方は、あんな男と戦ってはいけない」
灰色の目は強かったが、それは弱い故に棘を纏い、脆い故に厚い壁で覆っているようだった。
「会ってはっきりわかりました。あの男の目的は私です。『ようやく灰に巡り合える』と言ったのも、一緒に来るように誘った理由も、ノーラ様達が仰った件で間違いないでしょう」
「貴方を『灰の魔法使い』にするつもりなんですか……」
「ええ。だとすれば、貴方はもう関わるべきではない。ディルク様は、子孫が巻き込まれぬ様、魔法を引き継がなかったのですから」
「……でも……」
「女王の生涯を思い出して下さい。彼女の様に妹さんが居る貴方は、きっとその部分を弱点として突かれます。あの男は何者も傷つけるのを厭わない……家族やご友人、育った家に町……歯向かえば、想像でき得る最悪の方法を取るかもしれない。隣町に掛けられた人心を操作……又は支配する魔法が此処にも使われた場合、親しい隣人が敵になることも考えられます」
「起きると、決まったわけではないですよね――……」
「……貴方はファウストを知らない。あの男なら、貴方の妹さんを手籠めにしてから殺す程度のことは平気でやります。それも、普通の手段では殺さないかもしれない。マリアンネの様に、悪魔を与えることだって考えられる。ロニさん……わかってください。貴方にも、人として絶望する意味では『灰の魔法使い』になれる才が有る。私如きにわかることを、奴はきっと見逃さない」
ロニはぐっと拳を握りしめて押し黙った。レンは尚、説得する顔で言った。
「どうせ、私は失うものは何も有りません。むしろ……この旅が終わるのが、今は怖いぐらいです」
「……え?」
意外な事を口走った男を仰ぐと、彼は本当に何かを恐れるように青ざめていた。
「私はずっと、誰かに隷属して生きてきました」
レンの口調は、やけにはっきりしていた。
「貴族の主人、周囲の大人、ファウスト、ノトリア……多分、私は当の昔に狂ってる。私を縛りつつも、存在を求め続けた彼らを失ったら、何をしたらいいか分からない……空っぽなんです。何処へ行きたいのか、何をしたいのか、私の中には何も無い。仮にファウストに罪を認めさせ、自由になっても、私には何も無い……何をして生きればいいのか、何なら……何を食べたいのか、何が楽しいのかさえ、わからないんです……」
ロニは呆然とレンを見た。
一人、長い年月を歩いて来た男は、何度見返しても同世代の若者にしか見えない。
だが、焼けた足を引き摺り、感じなくても良い罪を感じながら、罰を受けるつもりで働きづめた。普通の人間ならば感じられたろう生き甲斐も、楽しさも、温かさも、全て素通りしてきた。
……ふと、マイルズが以前、取材の件でひどく怒っていたのを思い出した。
彼は、低賃金や長時間労働を強いられた労働者が、親会社を相手取ってストライキを超えた暴動を起こした事件を取材していた。この皮切りになったのが、一人の社員の自害である。彼は真面目で礼儀正しい男だったが、少々不器用だったらしい。彼の作業が遅れたり失敗すると、上司は怒鳴りつけ、人権を害する悪口をぶつけ、かと思えば辞めるなど許さない、仕事をせぬ者など社会悪だ、貴様のような奴は他に行っても上手くいく筈がないと無責任に罵ったという。彼が働き過ぎて体や心を病み、遺書を残して自殺したことで悪習は露出し、遺族に謝罪すれば済むとタカを括った会社の対応に、遺族も労働者も怒りに燃え上がった。ペンの力を疑わないエクスター・ハウス社が徹底的に追い掛けて、会社は文字通りメチャクチャになった挙句に倒産、社長や重役は何食わぬ顔で謝罪会見等々行って難を逃れたかに見えたが、皆酷い末路を辿った。近所では村八分に遭い、恋人や家族に逃げられ、路上でいきなり袋叩きに遭う者、果ては家に押し入られて金品を奪われたり、殺された者も居た。
マイルズが怒っていたのは、何より、社員を死なせた体制だった。
「俺に言わせりゃ、こいつの同僚も家族も同罪だ」
彼は自害した青年が飛び降りた現場に花を手向けながら、渋面で煙草を吹かした。
「同僚は『助けてくれ』と言われなかったから何もしなかったとか抜かしやがったし、家族は『しっかり働いているものと思っていた』だと。バカ共め。ンなこと言えるんなら死ぬもんか。俺は死んだこいつにもイライラしてる……死ぬ前に、ウチの社に来りゃあ良かったんだ。悪口雑言を怒鳴る奴なんか、大好物だってのに……」
如何にもネタの為という乱暴な口調だったが、ロニにはわかっていた。彼がこの事件に対し、起きたこと、その後のこと、全てに腹を立てていることを。
建物との陰になったそこは、昼でも暗く冷たい場所だった。現場には、花が沢山手向けられていた。これだけ、他人を思いやれる人が居たのに、誰も彼を救えなかった。一緒に来たリシェは、知りもしない彼の為に涙し、地に膝付いて祈りを捧げた。
皆、わかっていた筈だった。
「正しい」とは何かを。何が良くて何が悪いか、人に何をしたら良く、何をしたらいけないのか、子供の頃に教えられている筈だった。
「何も……しなくていいじゃないですか……」
灰色の寂しい荒野が見える気がして、ロニは首を振って呻いた。
「貴方は、これまでずっと頑張ってきたんだ。人が頑張れる時間より、ずっと長く……たった一人で。もう休んで良いと思います。自分の好きな事をすればいいじゃないですか!」
「私が何をしてきたかなんて、誰も知りませんし、理解し得ません。世界の為に頑張ってきたと言うんですか? 魔法を忘れた世界で、誰がそんなこと信じるんです?」
「僕が信じます!」
間髪入れぬ声は殆ど叫びだった。
「此処に居ればいい。誰か一緒に居たい人に巡り会えたら、その人と歩き出せばいい。……空っぽなら、新しいものと出会えます。僕は狭い世界しか知らないけれど、楽しいことや美味しいものは沢山知っています。貴方に教えることも、共有することだって出来る!」
「……どうして、そこまで……――」
「見捨てたくない……素通りしたくないんです……僕はもう、貴方を知っているから……」
「貴方にそうまで言わせるのは、何なんですか……?」
ロニは身をすぼめた。……忘れたくて向き合わないようにしていることだ。
「――前にもちょっと言いましたけど、僕……家を継ぐことに反発して……かなり失敗していたことがあるんです。グレてたって言えば、通じます?」
「貴方が? まさか……冗談でしょう?」
「最近の僕しか知らない人は、皆そう言ってくれますね」
恥ずかしそうに頭を掻いて、ロニは苦笑した。
「その時は、何とも思わなかったんです。両親や妹の不安や心配なんて、うるさいだけのお説教にしか聞こえなくて。マイルズなんて、ワルっぽくしてるけど、僕に付き合いながらも、ずっと真面目な良い奴でした。彼が今もウチに厄介になるのは、当時から僕を心配してくれてる名残なんです。あの頃、僕が両親やリシェに心ないことを言うと、真っ先に間に入ってくれたのがあいつでした。おかげで、感情のまま、家族に手を上げずに済みました」
手を上げる程とは思わなかったか、レンが目を丸くしたが、そういえばマイルズは、あの爆走する車はロニの愛車だと言っていた。小型ながら、水竜から逃げ切るスピードが出る車……確かに些かやんちゃな印象だ。
「家族はそう言わないけど……当時の僕のことは怖かったと思います。こんな頼りない体格でも、乱暴な男ってのは怖いものです。何をするか分からないのもそうだし、急に癇癪を起こすのも含めて。うちの家族が壊れてしまわなかったのは、マイルズが居てくれたのと、リシェがしっかりしていたからなんです。おかげで僕は二人に頭は上がらないんですけど」
ロニは苦笑したが、そこには感謝と敬愛が滲んでいた。
「レンさん……僕は御覧の通りの、頼りなくてうっかり者の只の本好きです。でも、人を傷つけてた自分なんかよりはずっと良いと思っています。貴方は優しくて礼儀正しくて、遠慮がちで……なんだかちょっと高貴な人に見えるけど、そうじゃなくたって良いと思う。急にマイルズみたいになられたら、びっくりしちゃいますが……」
「私は……――だからといって……もう、やり直すことは……」
「あ、うん……ですね。”やり直せる”って、僕も言いましたけど……過去には戻れないんだから、歩く道を変えると僕は解釈しています。レンさんはこれから、貴方にとって気分のいい、明るい道を行けばいい。それがファウストと戦わないことだって、それこそ誰にも責められませんよ?」
「……」
「あ、もうこんな時間だ……起きられます? イレーネが怒り出したら、此処までお盆を持って乗り込んでくるかも……!」
急にあたふたと茶器を片付けるロニに、レンは笑みとも泣き顔ともつかない表情で言った。
「貴方には……敵いませんね……」
「え……」
「私は、戦います」
ロニはぴたり止まって、レンを見た。その目は真っすぐに、ロニを見た。
「たとえ、反対されても。……あなた達を、守りたいと思ったから」
灰に染まった目、灰に染まった髪。一歩誤れば、滅びに踏み入る人。その灰色は、悲劇を目の当たりにしたような顔のロニを見て微笑んだ。
「そんな顔しないで下さい。貴方と同じです。意地や
「諦めで……行く先を選ばないで下さいね……?」
「はい。次に歩く場所は、終わってから考えます」
ロニは頷いたが、起き上がって身支度を整える男を見る目は不安だった。
その目は、出会った時よりもいっそう……灰色に見える気がした。
「お、精が出るな、親友」
夕食後、暗がりにせっせとシャベルを動かしていたロニが顔を上げると、又しても人の家に庭から侵入してきた親友が、ランプの灯りの下にやって来た。近くで作業を見ていたルーシャがサッと自らの木の中に逃げ込む。ロニが大丈夫だと声を掛けると、おずおずと顔を覗かせたが、煙草を見て再びサッと隠れてしまった。
「マイルズ……ウチは禁煙だって言ってるだろ」
「へいへい、……で、どうだった?」
火のないそれを咥えた男に、ロニは眉をひそめて家を振り返った。
「……レンさんのこと?」
「そうだ。俺が言った通りになったろ?」
ロニはどこか不服そうにシャベルを地に突き立てて寄り掛かると、頷いた。
「
「フフン、気の毒な性格だ……自分のことを可愛がる気が全く無い。今は何してんだ?」
「夕飯食べてる。多分、イレーネが許してくれるまではテーブルを立てないよ」
「そいつは何より。此処にはお嬢ちゃんだけか」
「私も居るぞ」
声がしたのは、木の上だ。
ソルベット家の庭のシンボルツリーたる桜の枝に寝転んでいたのは、子供程の大きなカエル――ノーラだ。
「王サマか。アンタが居るのは都合が良い――まあ、聞けよ」
汚れていない花壇の縁に腰掛けると、煙草に火を点けようとした男は、シャベルを持った親友の形相を見て踏み止まった。
「テオドラだが、俺らが怪物から逃げた後……一時間後ぐらいだな、国外に出た」
「え……?」
「人道支援だとよ。隣国で冬にでかい火災が有ったろ? あれの被災地に行きがてら、残った撮影を向こうでするんだと――逃走か、向こうが次のターゲットなのかは知らんが」
「テオドラは……エトが言う通り、魔女なのかな……?」
問い掛けと共にカエルを見上げたロニに、彼は背を向けたまま、マントを春の優しい夜風に泳がせながら答えた。
「わからぬ。……だが、『火』を集めていたのはその女だ。魔法に関り有るのは間違いない。レンを探す中、一度はマイルズと女の居る天蓋を見たのでな」
「俺には『火』ってのは全くわからなかったが、あの女がヤバそうなのはわかる。図書館に戻ったキャロルは、おかしかったんだろ?」
キャロルに関しては、マダム・フリーゼにそれとなく報告しておいたロニは頷いた。
疲れただけと言われれば、その通りにも見えたが、マダムに言わせると、何となく心此処に在らずだったようだ。
「でも……『火』の魔力を持つ人がそんなに大勢居るわけないんじゃ……?」
「その通りだ、ロニ。同じ魔力でも、『火』を持つ者は極めて少ない。あの集団が持っていた『火』は、本人たちの魔力ではない……彼らが其処此処を歩き廻り得たものや、或いは身に宿る魔力を、各々の内に据えられた『蝋燭』が吸い上げ、『火』として成り立つものだ」
「蝋燭って……あの軍人のような……?」
「うむ。だが、目的が違う様だった。各人の蝋燭に溜めた『火』を、女が集めていたからな。そういう意味では蝋燭という表現は適当ではないやもしれぬ」
ロニは何となく嫌な予感に身震いした。
「『火』の魔力を集めて……何を……?」
「さて……色々有る。かつては魔力を元に動く道具や、乗り物の類が有った故、動力の為とも考えられるが、今の世には見られぬ様だ」
女王の手記にも載っていた話だ。今、電気やガスで動く物の多くが、昔は魔法で動いていたらしい。
「他には?」
「魔物を作る材料や、召喚の材料、術者の強化、回復を含めた延命などが妥当かの」
想像はしていた嫌な回答に、ロニとマイルズは顔を見合わせた。
「魔力ってのは便利なモンだな」
春の穏やかな夜気にぼやいたマイルズに、カエルは枝からひょいと降りて来た。
「それは勘違いだ、マイルズよ。魔力は万能ではない。この世界の”決め事”に沿い、必要な力を正しく使わねば何も起きぬ。お前たちも言葉に意味を持たせているだろう? 魔法もそう変わらん。回りくどく、面倒な力なのだ」
「王サマは簡単に使ってそうじゃないか」
「そう見えるのならば、私の使い方が
胸を
「厳密には、魔力があれば寿命が延びるとか、傷が癒えるわけではない。ロニの魔力量が多くとも、勝手に怪我や病が治るわけではないのと同じと考えよ。魔物を作るにしろ、強者を呼び出すも同様だ。悪魔や魔物とは、邪悪性や凶暴性からそう呼ばれるが、世に存在する分にはお前たちやそこらの動植物と変わらぬ。生殖の原理が異なる点では、生命と呼べるかは異論も有ろうが……――」
例によってロニが頭痛がするような顔になってきたので、ノーラは講釈を止めて咳払いした。
「ファウストが作っておるのは別物――”まがい物”ということだ。既存の生命の情報を書き換えるとでも言おうかの……お前たちにわかりやすく言うなら、生命を本と例え、その内容を書き替える方法として一部を焼く為に『火』の魔力を用いている。わかるか?」
「ああ、うん、何となく……」
頷かねば申し訳ないといった顔で答えると、ロニは嫌な事に気付いて眉を寄せた。
「待って、じゃあ――隣町で会った怪物って、元は違う生き物だったの……?」
「恐らく、人間であろうな」
「人間……⁉」
「……王サマの推測は正しいと思うぜ。あのエトってガキの話じゃ、時計塔のある聖堂には神父一人とシスター二人が常勤していたそうだ。シスターは定かじゃあないが、あのガルグイユって怪物の首には神父が付けるストラが絡まってた。俺も偶然って事にしたいが……」
「そんな……」
ショックに喉を詰まらせた青年を、カエルはちらりと仰いで首を振った。
「許せ、ロニ。私とて気の毒には思うが、あの場で救う手立てはなかった。ファウストの魔法は我らのそれと全く異なる術式を持っている故、書き替えられた生命を元に戻すことはほぼ不可能なのだ」
「……僕がノーラを責めることはできないよ……ううん、一緒に行ってくれたことにはお礼を言いたい。マイルズもレンさんも、あの子も無事に帰れたのは、ノーラのお陰だから……」
それでも、冥福を祈る様に両手を置いたシャベルに俯くロニを、マイルズはじっと眺めてから、同じく俯いたカエルに振り返った。
「王サマよ、隣町の連中はあのままにしておくしかないのか?」
「あの状態を作っておる魔法の正体がわからぬ内は何ともできぬ。大抵は、術を行使している者を倒すか、道具を壊すかが主な解除の手段となるが」
「結局、ファウストをどうにかするしかないってか……」
唇をへの字に曲げてから、マイルズはロニに振り返った。
「親友よ、リシェは説得できそうか?」
「できると思う?」
情けない兄の言い分に、親友は反発しなかった。あの娘の性根を良く知る者同士、揃って頭を抱え始める。
「ま……わかっちゃいたがな。まだ教会に行くって言ってるんだろ?」
ロニは頷いた。マイルズらが愛車をでこぼこにして帰還した経緯を聞くなり、制止も聞かずに一度は教会に引返したリシェである。シスターらにチェスターの危険を報せたものの、誰一人として信じなかったらしい。無理もあるまい。ロニ達ですら、ほんの数日前まで、彼は穏やかで優しい神父としか思っていなかったし、未だに危険人物とは思い難い。
「まだ、ファウストが帰っていなくて良かったけど……イレーネが連れ戻してくれなかったら、どんな無茶をしたかわからないよ。今だって、彼女が居なかったら、また飛び出していくと思う」
幸い、聞き出した上では神父は今夜は戻らないと連絡してきたそうだ。
こうした事は珍しくないそうで、その辺りでもシスターらは気にしなかった様だが。
「今の話を聞いちまったら、シスターらをふんじばってでも連れ出そうとするな。それはそれで安全だが、警察なんぞ出てきちまったらこっちがヤバい――そこで、王サマに聞きたいんだが」
「む?」
「イレーネ嬢が言ってたノームって奴らは、使えないか?」
親友の提案を聞いたロニは仰天したが、カエルは面白そうな顔をして腕組みした。
「どうだ? 出来そうか? 建物は例の時計塔ほど高さは無いが、一回りでかい。できれば戻す作業まで頼みたいんだが」
「可能だ。眠りの魔法はイレーネに任せればうまくやる。ノームは支払い次第だが……その程度の建造物、七人揃えば一日とかかるまい」
よし、とマイルズは膝を叩いた。
「ほ……本当にやるつもり?」
「フフン、名付けて『眠り姫』作戦だな。他に案が有るなら採用するぜ」
「無いけど――……酸素とか、大丈夫?」
「空気穴を開けりゃいいんだろ? 本職じゃないお嬢ちゃんでもこれだけ出来るんだ、職人なんて呼ばれる連中なら朝飯前だろう」
褒められたのに気付いたのか、ルーシャがそっと顔を覗かせる。大胆不敵な発想に舌を巻きつつ、ロニは少女と顔を見合わせてから親友に振り向いた。
「支払いはどうする気なんだ?」
「任せろ。イレーネ嬢の話を聞く限り、上手くいく。お前は図書館で魔法を探し出せ。ファウストを止められるかはともかく……どうせ、奴を捕まえて警察には突き出せないんだ、封印なり閉じ込めるなり、何とか大人しくさせる方法を見つけてくれ」
「確かにそうだ……不死じゃあ倒せないわけだし……レンさんには頼みたくない」
「だな。じゃあ、俺はイレーネ嬢と教会に行ってくる。ロニ、愛車を借りるぞ」
「いいけど……今から? 大丈夫なの? 僕も……」
「ダメだ。お前はこの作業も程々にして休むんだ。イレーネ嬢が魔法を使う際に、倒れる可能性があるのを忘れるな。図書館には朝一で行け。いいな?」
てきぱきと言うと、家主同然で裏口から入っていく男を、ロニは真剣な顔で見送った。
「良い友人だな、ロニ」
「うん……」
カエルに頷いて、ロニはシャベルを引き抜いた。
「……僕も頑張らなくちゃ」
呟いたロニを、小さな木の葉の中から少女が見上げた。
「ロニさま、としょかんという所に行くの?」
「うん、明日ね。ルーシャも一緒に行くかい?」
少女は不思議な緑に揺らめく目で、遠慮がちにこちらを見上げていた。
「ルーシャは……失敗したのに?」
「えっ、君は何も失敗していないよ」
驚いた様子で屈み込むと、ちょっぴり葉の中に隠れた少女に笑い掛けた。
「僕はルーシャが来てくれた方が嬉しいな。魔法のことはさっぱりだから……君は頼りになるもの」
少女は恥ずかしそうに葉の隙間で目をぱちぱちしていたが、にこ、と笑って頷いた。
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