第3話 お題「夜明け」「ガラス」「無色透明」

 ワイングラスの中で、

 ルビーレッドの液体が静かに波打っている。

 闇夜の中で、妖しく揺らめく焔。


 どんなに熱い口付けを交わしても、

 ガラス越しのように味気なくて、

 どんなに肌を合わせても、

 布越しのようにもどかしくて、

 身体の奥底で止まない、炎の演舞。


 熱く華やかな心臓は燃えるような太陽に似て、

 燦然と輝き続けている。


 広大な大地へと降り注ぐ流星群。

 深紅の薔薇の花弁から滴り落ちた雫。

 かき集めた欠片達は、形を成すことさえ出来ないまま、今にも砕け散ろうとしている。


 もしこれが儚い夢であるならば、

 燃え尽きて灰となり、全てが無に帰すその前に、

 残らず飲み下してしまいたい。


 夜明けの寸前に、

 無色透明な世界が一気に朱に染まってゆく。

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光風のときめき〜300字掌編集〜 蒼河颯人 @hayato_sm

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