第19話 パーティー登録

 「ギルマス!相談が……」

 「何だ?どうしたんだティーよ。そんなに慌てて。」

 「実は来週にイクト君が成人なのでして」

 「それの何が問題なんだ?これでイクトも晴れてランクアップでめでたいじゃねーか。」

 「問題はそこなんです!」



 ◇◇◇ユイナside◇◇◇

 「ああ、いよいよイクトが成人を迎える。」

 「おめでとうございます。これでランクも上がり計画も勢いを増しますね。」


 ユイナに答えたのはファナ。胸が強調されたメイド服に身を包み

部屋のテーブルに朝食を用意しながら答えた。


 「そうよね。今度のイクトの誕生日は成人祝いにランクアップのお祝いもあるしプレゼントも豪勢にしたいわね。」

 「それでしたら剣は如何です?これからの冒険者としての活動では討伐依頼も増えるでしょうし。」

 「そうね。剣も良いわね……。けどやっぱりここは私にリボンを付けて、プレゼントはわ・た・しってキャーー」


 ユイナは自分の妄想で顔を真っ赤にし1人身悶えている。


 「それでしたらいっその事、長いリボンを用意しますのでお洋服を着ずにリボンのみ」

 「キャー」


 それを想像しているのだろう。よりいっそう激しき身悶えている。


 ……ユイナ様可愛い。


 「冗談はさておき、イクト様のランクアップに関して報告が有ります。」

 「え?何?何か問題でも有るの?」

 「問題は無いのですが、少々頑張り過ぎていたようで……。」

 「どういう事?」



 ◇◇◇ティーダside◇◇◇

 「どうしましょう?」

 「まあそうだな……。前例は無いのか?」

 「有るわけ無いですよ。」

 「ま、それはそうだな。通常なら有り得ないわな。」

 「そうですよ。新人期間のFランクの内にDランクまで上がるだけの貢献度を貯めるなんて。」

 「どうするかだよな?そのまま2ランク上げるとするか、とりあえずは1ランクだけにするか。」

 「ですよね……」


 ただ1ランクだけにした場合に姫様から苦情が絶対くるよね。いや、それどころか乗り込んで来るかもしれない。


 「実績は十分なんだよな。ゴブリンの集落の討伐もしているし。Dランクでも集落の討伐は有り得ないくらいだ。」


 通常ならゴブリンの集落の討伐を行うのなら規模にもよるがソロならB級以上パーティーでもCランク以上の冒険者への依頼となる。

 それをヤオが居たとは言えやってのけたのだ。それを考慮すればDどころかCでも構わないくらいだ。


 「しかし、新人を一気に上げたらトラブルの元になりそうだな。」

 「そうですね。イクト君の集落討伐はあまり周知されてません。他の冒険者から見たら新人が何故?となるでしょうね。」

 「だよな。……とりあえず1ランクだけにするか。」

 「その場合は王家から苦情がきませんか?」

 「大丈夫だろ?確かにイクトには王族からの絡みがあったがそんな個人の事、ましてや新人の事なんて把握してないだろ?」


 甘い、甘過ぎますギルマス!イクト君の情報はがっつり収集されてます。私も情報源の1つです。


 「でしたら万が一苦情が来た場合はギルマスが対処してくださりますか?」

 「何を有り得ない心配してるんだ?気にするな。」

 「分かりました。もしもの時はよろしくお願いしますね?」

 「ははは、分かったよ。」

 「それではイクト君は1ランクアップで処理します。しかし貯まった貢献度が変わる訳ではありません。それは?」

 「そうだな……。様子を見ながら次のランクアップを早めにするか。15歳からの場合は早くてだいたい半年か……」

 「そうですね。」

 「なら3ヶ月。3ヶ月でDにしよう。」

 「確かにそれならだいぶ早いランクアップですね。」


 けれど果たしてそんな悠長な事をユイナ様が認めるかしら……

まあ今それを気にしても仕方ないわね。


 と、思っていた時期がありました。


 ◇◇◇ユイナside◇◇◇

 「イクト!誕生日おめでとう!今日で18歳。成人だね。」

 「ありがとう。ユイナ。」


 ユイナはイクトにおめでとうを1番に言う為に朝1番にイクトの部屋を訪れていた。


 「今日はお祝いするからね♡いっぱいご馳走作るから楽しみにしていて。」

 「ありがとうユイナ。今日はギルドに行けばランクアップできるはず!」

 「そうね。念願のランクアップね。それも含めて豪勢にするわね。」

 「楽しみだな。」


 きっとイクトはDランクになって驚きの表情で帰って来る。

 これもひとえにヤオのおかげね。これはヤオ無しではなし得なかったわ。……イクトを狙うような素振りがあるのが問題だけど。


 「それじゃ行ってくる。」

 「いってらっしゃい。」


 イクトを見送る私。新婚のようね♡



 ◇◇◇イクトside◇◇◇

 「ティーさん!」

 「いらっしゃい。イクト君。それとおめでとう。今日で成人ね。これで晴れて君はEランク冒険者です!」

 「ありがとうございます。」

 「具体的には言えないけど、このままいけばDランクへも半年以内にはなれる見込みよ。」

 「本当ですか!?嬉しいな。頑張ります!」


 ギルマスは3ヶ月と言ってたけど、長めに言っておいた方が無難よね。


 「これからは自分で討伐依頼も受けれるようになるけど無理はしないでね?」

 「はい。」

 「それじゃ今日はどうする?」

 「今日はいつもの常設の依頼で……。」


 ふふっ、流石はイクト君。普通は討伐依頼を受けれるようになるとソロでも依頼を受けて行く事が多いのに。ヤオと一緒なの行ったりしているからかな?


 するとそこへ


 「イクト。待たせたカ?」

 「いいえ、全然です。」


 ヤオが現れイクトに声をかける。


 「ヤオ、どうしたの?」

 「今日はパーティー申請ネ。」

 「パーティー?誰と?」

 「もちろんイクトネ。」

 「え!?」

 「今日からイクトも正式に冒険者となるネ。これからは教官としてではなくパーティーメンバーとしてイクトの傍で鍛えるネ。まだまだ教える事は沢山あるネ。」

 「訓練場の教官の仕事は?」

 「やめてきたアル。元々イクトを連れ出すのに良いから教官を続けてただけアル。イクトが普通に依頼を受けれるようになった今、教官を続ける必要性はないネ。な?イクト。」

 「はい。わざわざ僕の為にありがとうございます。」

 「構わないネ。イクトは鍛えがいがあるネ。イクトに教えるのへ私の楽しみアル。という訳でイクトとパーティー登録よろしくアル。」

 「分かりました。パーティー名はどうします?」

 「あちゃー、それは考えてなかったアル。イクト、何か良い名前はナイか?」

 「え?名前、名前、名前……」

 「今すぐに決めないと駄目ではないので今度でも良いですよ?」

 「そうネ。また考えておくアル。」

 「それではこちらに記入を……」

 「分かったネ。リーダー……イクト、と。」

 「え!?何で僕がリーダーなんですか!普通はランクが上のヤオさんがリーダーでしょう?」

 「めんどいからヤ。」

 「いや、めんどいからって……」

 「私はリーダーなんて柄じゃないネ。それに女がリーダーだと面倒事が起きやすいネ。」

 「そうなんですか?」

 「ああー、確かに私も聞いた事があります。」


 とティーダ。


 「体目当てで指名して護衛依頼をされたりとか聞いた事がありますね。」

 「そうアルよ。か弱くて可愛いヤオちゃんだとそんなのがきたら困ってしまうネ。」

 「……まあ、ヤオなら大丈夫だろうけど、それでもリーダーはイクト君の方が良いでしょうね。」


 そうしないとユイナ様が反発しそうだし。


 「そうですか……そういう理由があるのならばそうします。けどEランクの新人がリーダーのパーティーじゃ何か……。」

 「大丈夫よ。新人同士でパーティー組んだりもよくあるから。まあ新人がリーダーでメンバーが高ランクは聞いた事ないけどね。」

 「ですよね?」

 「大丈夫。イクト君ならすぐにランクアップしていくよ。お姉さんが保証するわ。」

 「それじゃ早速依頼を受けるアル。」

 「あ、すいません。今日は常設依頼のみのつもりなんです。」

 「何故アルか?」

 「今日は早く帰るので。」

 「! さてはユイナネ!お祝いと称して美味しい物を食べるアルな?」

 「はい。ユイナがご馳走を用意してくれ「私も行くアル!」」

 「ヤオ、流石にそれは不味いわよ。」

 「何でアルか?」

 「ご馳走でしょう?人数が増えたらその分増やさないといけない訳。」


 それにユイナ様は2人きりでイクト君と良い雰囲気になるのを狙っているでしょうし。


 「ぐっ、確かに量を増やす必要があるナ。……イクトの部屋アルな?ユイナに直接交渉するネ!」


 そう言ってヤオは走って行ってしまった。


 「……イクト君。追わなくて良いの?」

 「無理です。追いつきません。」


 ヤオとユイナ。どんな交渉になるかは不明だがその現場に居合わせたくはない。

 同じ事を思ったのかティーダが


 「それじゃ薬草採取でいいかな?」

 「あ、はい。お願いします。」


 帰ったらどうなっているか恐怖ではあるが無心で薬草を探す事にしようと心に誓うイクトだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る