フラウが贈った詩
流れ星が、一つ、二人の詩に流れ落ちる。
「あ、流れ星!」と、ララが指さす。
「そうだね、ララ」と、フラウが優しく微笑んだ。
二人は、近辺にある宿屋に泊まり、次の日、馬車でガレオスまで戻ったのだった。
「ずっとこのままで・・・二人、ずっと、連理の枝のように・・・」
というのは、ララとフラウの初夜、フラウが思わずララに言った言葉だった。ずいぶん昔のことだ。
数か月前だろうか。ララはそっと思い出していた。
結婚して、月日は走馬灯のように流れていった。
天体観測、ガレオスでのデート、レストランでのデート、お互いの実家を行き来する日々。
フラウは忙しく仕事に取り組んでいた。給料はわりとよかった。
ララは、専業主婦として、家にいたのだった。
「そろそろ子どもを作ろうか」と、ある日、フラウがぽつりと言った。
ララの方を見ないで、ダイニングの椅子にすわり、食器の跡片付けをしているララに向かって言った。
ララは、食器を洗う手を一瞬止め、そのあと、また洗い続けた。
「そうね、私も、もう18になるもの」と、ララ。
「ララ、今夜、作っちゃおう」と、珍しく、フラウが強気に言った。
「え?今日??」と、ララ。
「うん、僕、なんか嫌な予感がするんだ!!」と、フラウが言った。
――その日の夜・・・・
その日は、ガレオスでお祭りのある日だった。
花火がうちあがっており、夫婦で見学して、帰ってきての、フラウの突然のセリフだった。
「永遠(ネブ)の(へ)王(オフ)よ
不死身(ヘカァ)の(ト・)王子(エッタ)よ
命(ネチェル)の神(アンフ)よ。
永遠(アーン)を創り給い(へフ)し方よ。」
と、二人で一緒に、手をつないででもいいのだが、詠唱するのだが・・・。
フラウがララに贈った詩は、素敵な詩だった。
「なぜかは知らないが 心わびて
昔の伝説(つたえ)は そぞろ身にしむ
寂しく暮れゆく ラインの流れ
入日に山々 あかく栄ゆる
美(うつわ)し乙女の 巌頭(いわお)に立ちて
黄金の櫛とり 髪のみだれを
梳きつつ口ずさむ 歌の声の
神(くす)怪(し)き魔力(ちから)に 魂もまよう
こぎゆく舟びと 歌に憧れ
岩根もみやらず 仰げばやがて
浪間に沈むる ひとも舟も
神(くす)怪(し)き魔歌(まがうた) 謡うローレライ」
フラウが、メッセージカードに書いたその詩を、ララに手渡した。
「僕が、ローレライ伝説から、とって自分で書いたんだ、ララ。君の、その美しさに、ローレライを思い起こしてね」と、フラウが言った。
「あら、私は魔女ってわけね」と言って、ララが笑う。
「そうじゃないよ、ローレライは精霊の一種だから。ララは魔法学んでないけど、魔法を学ぶものにとっては、なじみ深い題材なんだ」と、フラウ。
「ララは聖女だよ」と、フラウが言った。
「ありがとう、フラウ」そう言って、二人はキスした。
やがて、ララは一つの命を身ごもった。
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