クリスマスに最高で地獄なプレゼント

今日は年に一度のクリスマスだ。

 毎年繰り返してきたクルシミマスとは違って本当のクリスマスだ。

 初めてキリストの誕生を祝ったかもしれない。

 去年までは全力で、イチャイチャするリア充と、こんな時期に生まれたキリストを呪っていた。 あの頃の俺は、めちゃくちゃ荒んでいたなぁ。

 そんな去年までとは打って変わって、今年は俺の家でクリスマスパーティーをする予定だ。 なんと俺に友だちができたのだ。

 それも、学外でも一緒に遊ぶほど親しい友達が。 これは、去年までの高校生活では、考えられないことだ。

 高校では俺は、みんなに別け隔てなく優しくするタイプの陽キャにすら距離を置かれる、究極の陰キャだったのだ。

 話しかけられたら、あたふたした末に小声で吃るし、声をかけられただけで、体がビクッとしてしまっていた。 しかし俺は、そんな状況を変えようと全力で大学デビューをした。

 俺は高校時代、全く友人がいなかったし、部活もやっていなかったので、クソほど時間があった。

 その時間を勉強に使い、そこそこの大学に入れたのだ。 そこそこの大学は、そこそこ民度が良いのだ。

 民度が悪いような知性のないやつは受験の段階でふるい落とされていくからな。

 今年度のはじめに、そこそこの大学にいるそこそこに民度の高い学生たちに話しかけられて、あわよあわよという間に友人ができていた。 俺に友だちができたのは、周りの人たちのお陰じゃないと思いたい。

 そもそも、俺が通っていた高校もそこそこの進学校だったから、民度は良かったのだ。 俺は、なんと大学デビューのためにきちんとした努力をしたのだ。

 第一印象が重要だと知った俺は、目が隠れるほどのThe陰キャの前髪をバッサリと切った。 それに、話しかけられた時にきちんと会話をするために、活性練習も頑張った。

 相手に聞こえる声を出すためにした発声練習は正直辛かった。

 俺は、様々な努力の末に陰キャっぽくない普通の大学生に見えるようになったのだ。

 それでも正直、話題に全くついていけないが、初めてできた友人に話しかけられるだけで十分楽しい。

 ファッションとか、流行とかよくわからない。

 いやぁ、大学デビューできて本当にできてよかった。 そんな、大切な人生初の友人たちの頼みでうちの家を貸した。

 俺は、家が大学に近かったので、実家から通っている。他のみんなは、アパートを借りて一人暮らしをしている。

 だから俺の広い一軒家でパーティーをしよう、となったのだ。

 俺の親は、俺の初めての友人の頼みだからと、泣いて喜んで場所を貸してくれた。 大切な友人に託された使命である、このクリスマスパーティーを絶対に成功させなければ。

 去年までのボッチでのクルシミマスと違って、今年は男女混合のクリスマスパーティーだ。 去年の俺が聞いたら信じないほど、リア充的なイベントだ。 なんかテンション上がってきた。

 それに、初めてのリア充イベントに、めちゃくちゃソワソワする。 期待が膨らむ反面、不安も少しずつ大きくなってきた。

 どうしよう?こんなイベント初めてだから、場違いなこと言っちゃって場を白けさせたりしないかな?

 お酒はまだ年齢的に飲めないから、お酒に飲まれて場をぶち壊すことはないけど、緊張で暴走しそう。

 ただ本当に、俺と友だちになってくれたあいつらには感謝しか無い。 そんな事を考えていると、インターホンが鳴った。

 ピンポーン ドアを開けると、そこには美少女が居た。

「こんばんは。公平」

 遠慮がちに挨拶をしてきたこの美少女は、中川 恵。

 俺の初の友人たちのうちの一人だ。

「いらっしゃい、恵。さあさあ上がって。外寒かったでしょ」

 そう言って、彼女を家の中に招き入れた。

 彼女はコートにマフラー、手袋などで、防寒のし過ぎで丸くなっていた。

 彼女は遠慮がちに家に入ってきた。 靴を丁寧に脱ぎ、きちんと揃えて、置く。

 所作の一つ一つが丁寧で品がある。

 彼女の育ちの良さがうかがえる。 実際彼女は、とある企業の令嬢なんだとか。本人曰く、そんなに大きい会社ではないらしいが、俺でも聞いたことがあるような会社で、腰が抜けそうになったのもいいい思い出だ。

 リビングに着き、立ち止まると恵が聞いてきた。

  「そういえば、他のみんなはまだ来てないの?」

 恵は、首を傾げて聞いてきた。

 清楚な彼女がその動きをすると、あざとさを超えて可愛い。

「他のみんなは、まだだよ」

 他のみんなは、略語などを多く使っていて、俺の使う言葉との、ことば遣いの差で、少し話しづらい時があるが、恵は常に丁寧な言葉づかいなので、凄く話しやすい。

「じゃあ、今私と公平の二人だけなんだね。なんだか少しドキドキしちゃう」

 ただ、恵は少し少女漫画脳なところがある。

 今みたいに、二人きりになったり、他にも少女漫画に出てきそうなシーンみたいなことが起きると、すぐに脳内変換されて、ラブコメ展開をもう妄想しだすのだ。

「まぁ、でももう少ししたら、みんなも来るでしょ」

 俺は、恵が出す、少女漫画的展開待ってますオーラをぶった切るように言った。

 すると、彼女は顔を赤くして申し訳無さそうに言った。

「申し訳ありません。少々妄想で興奮しすぎたようです。あれ、もう集合時間を過ぎてしまっていますね。みんな大丈夫でしょうか?なにか事故にでもあっていないでしょうか?心配です。他の方々からなにか連絡は来ていませんか?」

 恥ずかしさをごまかすかのようにマシンガントークを繰り出す恵。

 彼女の言うことに従い、スマホを確認する。

 するとそこには4件の通知が来ていた。

『ごめん、急にシフト入っちゃって行けなくなった。みんなで楽しんで!!』

『ごめん、親が急に熱を出しちゃって、看病するから今日行けない。本当にごめん』

『今日行けなくなった、すまん。どうしても外せない用事が入っちゃって』

『今日行けなくなっちゃった。ごめんね。大事な用事が入っちゃった』

 前2つは、2時間ほど前に示し合わせたように来ていた。

 多分、二人は付き合ってるから、クリスマスくらいカップルで過ごしたいのだろう。 それならそうと、事前に言っておいてくれたら良かったのに。

 なんで俺、こまめにスマホで確認しなかったんだよ。

どうしよう。ちゃんと6人分の料理を用意しちゃったよ。

まぁ、残りは後日俺が家族と食べればいっか。

あと2つは、30分ほど前にこちらも示し合わせたように同時に来ていた。

それにしても、こいつらも付き合っているのかな?

どう見ても付き合ってるよな。

隠す気があるならせめて連絡する時間くらいずらせよ。と、心の中でツッコミを入れる。

まぁ、多分そうなんだろうな。

結局、リア充ばっかじゃねえか。

6分の4リア充とかどういうことだよ。

それにしても、どうするんだよ。

このままじゃ、俺と恵みの二人きりになっちまう。

過半数が欠席なんだから、解散しようかな? 二人で祝うのもねぇ?

あぁ、今年もクルシミマスなんだなぁ。

クリぼっち確定演出。

まぁ、今恵にあったから、クリぼっちじゃない判定で良いのかな?

そんなことどうでもいいか。

とりあえず恵に相談してみよう。

声をかけようとしたら、彼女もスマホに視線を落としていた。

「あのー、恵ちょっといい?」

恵は、スマホからあわてて顔を上げた。

そして一瞬キョロキョロすると、すぐに折れを見つけた。

いや、いくらスマホに夢中になっていたからって、眼の前にいる人を見失わないでしょ。

やっぱり恵は、天然だな。

「え、え?!なに?!どうしたの?公平」

明らかにオーバーリアクションをする恵。

これが演技だったとしたら、彼女は名女優になれるんじゃないんだろうか? そんな馬鹿な考えは置いておいて、彼女止めを合わせられたので話しをする。

「他のみんなは、参加できないらしいよ。どうする?」

改めて言うと、少し悲しい気持ちなる。

「そうらしいね。こっちにも連絡きてた。どうするって、どういうこと?」

どうやら、恵の方にも連絡が来ていたらしい。

恵もここ2時間くらいスマホを見ていなかったのかな? 俺と同じように、楽しみすぎてソワソワしてたのかな? いつも来た連絡に対して、すぐに返す彼女にしては珍しいミスだな。

「このまま二人でクリスマスパーティーをするのか、過半数が休んでるから今日はもう御開にするのか、かな?」

俺としては、二人でもクリスマスパーテェーがしたいな。

家族以外の人とクリスマスを祝ったこと無いから。 それに、今日のために買った食べ物達が無駄になっちゃう。

恵的にはどうなんだろう? やっぱり男と二人は嫌なのかな? それなら彼女の意思を尊重して御開にするんだけど。

彼女は、俺の言葉を聞いて、驚いたような表情を見せた後、言った。

「私的には、二人でクリスマスパーティーをしたいな。せっかくここまで来たんだし。それに、このまま中止にしちゃったら、今日ここに来られなかったみんなが、今日ここに来られなかった人たちのせいでこのクリスマスパーティーが中止になったって思っちゃうんじゃないかな?そういう罪悪感とかで気まずくなるのも嫌だしさ。それに、公平と二人で過ごすクリスマスも楽しそうだし。それに、色々用意してくれてたんでしょ?料理とか。それが無駄になっちゃうのも嫌だしさ。公平さえ良ければ二人でやらない?」

やたらと、力説する恵に圧倒される俺。

よかったぁ。 俺と一緒のクリスマス、嫌じゃないんだぁ。

確かに、あいつらに罪悪感を抱かせたくないしな。

まぁただ、反省はしてほしいけどね。

「じゃあ、やりますか。俺は、料理を冷蔵庫から取り出すから、恵はそこの椅子に座っておいて」

そう言うとすぐに折れは恵に背を向けて、キッチンの方へと向かった。

「ちょっとこの防寒具脱いじゃうから、このハンガー借りるよ」

その恵の言葉に対して振り向きもせずに了承する。 チキンを温め直したり、ビーフシチューを盛り付けたり、パンを切り分けたりしていたら、少し時間が経ってしまった。

急ぎ気味で恵が待っているリビングの方へ料理を運ぶ。

この時料理を運ぶことに集中しすぎていて、恵の変化に気付けなかった。

料理を並べ終えて俺は席につく。

何故か恵は俺の目の前ではなく横に座ってきた。

「いただきまーす」

俺が手を合わせるのに合わせて、恵も言う。

「いただきまーす」

「なにこれ?美味しい」

美味しそうにチキンにかぶりつく恵。

え? えっ?!! いつの間にか彼女は、ミニスカサンタになっていた。

彼女は、セクシーな格好なのを全く気にしていないように豪快に料理を食べていく。

そのアンバランスさがなんだか面白い。

そんな寒そうな格好だから、あんだけ防寒具を着込んでいたんだ。

納得した。 だけど、陽キャのノリって分からねぇ。

ただ、驚きは隠せなく、とりあえず本人を問い詰めた。

「ねぇ、なんでそんな恰好なの?それ、ここまで来るの相当寒かったでしょ。風引いてない?」

恵は、にやってした後、もったいぶりながら答えた。

「ねぇ、気になる?気になっちゃうか。しょうがない、特別に教えてあげよう。元々今日来る予定だった女子三人でサンタのコスプレをする予定だったんだよ。男子に目の保養というクリスマスプレゼントをあげるために。だからさ、存分に見ていいよ。他二人のサンタが居ないから、今日は私のサンタが公平の視線を独占しちゃうね」

思わずドキッとしてしまった。

なんて返したら良いのか分からずあたふたしてしまう。

こういうのがあるから、大学デビューは危険なんだ。

今までの経験が圧倒的に足りないから、こういう展開でうまく反応ができない。

あたふたしてると、更にニヤニヤした恵が追撃を仕掛けてきた。

「そんなチラチラ見ないでも、ガン見しても良いんだよ、ガン見。やーい、照れてる、かーわいい」

清楚な彼女にもこんな、小悪魔的な一面があるんだな。 しかし、恵はそのムーブをしていくうちに段々と顔が赤くなっていった。

もしかして熱? 大変だ。

こんな寒い中そんな薄い服装で来たから?!! 防寒具をいくら着込んだって、中身の服の防寒力が終わってたらあんまり意味を成さないんじゃないか?

こんなドキドキしてる場合じゃない。

「顔赤いけど大丈夫?もしかして熱?」

そっと彼女の手に手を伸ばす。

彼女の手はとても冷たかった。

やっぱり末端が冷え切っている。

このままじゃ、風邪を引いてしまうんじゃないか?

それは大変だ。

もう一度体温を測るためにおでこ同士を合わせて、体温を計ろうとする。

顔を近づけるほど彼女の顔が赤くなっていく。

これはもう熱で限界なんじゃないか?

はなが触れそうな距離になった時、恵が弱々しく言った。

「ね、熱じゃないし。ちょっと部屋が暑いだけだし。」

目が合わない。

恵は右斜め上を向いて俺に話していた。

まるで言い訳をしている人のようであった。

俺は、彼女の言葉で少し冷静になった。

いきなり顔を近づけたら、嫌がるだろ。そりゃそうだ。

彼女にはすまないことをした。 後でちゃんと謝ろう。

恵が、ほとんど口を開けずに独り言のようにつぶやいた。

とても小さな声で発せられた、その言葉が何故か聞き取れてしまった。

「急に積極的なんだから…そんなに興奮してるの?…それにしても顔いいなぁ…それに優しいし…」

これはあれだ。

聞かなかったことにすべきなやつだ。

それにしても、ミニスカサンタの恵の破壊力がやばい。

艶のある黒髪がサンタ衣装で映える。

それに加えて火照っているように頬を赤くしているので、破壊力が2倍になっている。

思わず彼女にムラっと来てしまった。

こんな素敵な彼女が居たらなぁ。 そんなことをしていると、彼女は急に顔をさっき以上に赤くして立ち上がった。

「ちょっとお手洗い借りるね」

そう言って立ち上がった瞬間、彼女がバランスを崩してたおれていく。

俺はとっさに動いた。

彼女の方に手を回し、抱きかかえるように受け止めた。

「だ、大丈夫?怪我はないか?そんなフラッとするんだからやっぱり風邪なんじゃないか?」

俺は鼻と鼻とが触れ合うような距離にいる彼女に問いかける。

「ご、ごめんなさい。怪我はないわ。公平が抱きとめてくれたから。多分興奮し過ぎでふらっと来てしまっただけだと思う、だから、風邪とかじゃないわ」

そう言い終わると、恵はなぜか俺の背中に手を回してきた。

それから少しの間、俺と彼女は、抱き合うような体勢で止まった。

気まずい雰囲気が流れる。 するとこの体勢に少しの変化が訪れた。 恵が、俺に胸を押し付けてきた。

柔らかい感触が服越しに感じられる。

俺の心臓の鼓動が一気に速くなった。

薄い生地のサンタ衣装のせいか、体温まで一緒に伝わってくる。 そして、心臓の鼓動まで。

その生々しい感触に、思わず理性のタガが外れそうになる。

君は襲われたいのか?と抗議の意味も込めて俺は恵の目を見つめた。

彼女の顔は、今までで見たことがないくらい真っ赤だった。

恥ずかしさと、ほてりが合わさったような、とろんとした表情をしていた。

彼女にたおれられたら困るから俺から離れることはできない。 しばらく俺と恵みの見つめ合い?にらみ合い?が続く。

なんでこんな事するんだろう? 陽キャだと、こういう事が当たり前に起こっているのかな? 俺には経験がたらなさすぎてわからないよ。

どんな意図があってこんな色仕掛けみたいなことをしているんだろう? そんな事を考えていた。

すると一瞬、体を強く締め付けるように恵はハグの力を強めた。

またなにかするのかと俺の体が硬直する。

すると、校則が一気に緩む。

それに驚いていると、グイッと服を引っ張られて頭が下がった。

その下がった頭は、彼女の目の前にあった。

まつげが触れるような距離。びっくりしていると、不意打ち気味にキスをされた。

最初何をされているのか分からなかった。

ふしぎな感触が口にあるなとしか思わかなった。

今キスをされていると理解するのに、3秒ほどの時間を有した。

キスはみっちり30秒ほどされた。

キスの終わりは唐突だった。 急に口を離され、

「もう限界、お手洗い借りるね」

火照りきった顔で恵がもじもじしながらそう言った。

更に、

「続きはこの後ね」

そう言うと足早に、トイレに去っていった。

恵がトイレから帰ってくる前に、親が帰ってきてしまった。

トイレから出てきた恵の顔は、盛大にお預けを食らった犬のようであった。

親は、

「あらあら、お邪魔しちゃってごめんなさいねー」

と言って再び出ていった。 なんで帰ってきたんだよ。

絶対俺の友だちを見たいから帰ってきただろ。

そのせいで卒業できそうだったもんができなかったんだぞ。

それから少し気まずい雰囲気となり、二人で食事だけして解散した。

気まずくなって無口の恵も可愛かった。

俺は終始ムラムラを抑えるので必死だった。

刺激されたものは、どうにか発散しない限りは、ずっとムラムラし続けるんだと知った。

あれ、絶対ヤる流れだったよね?!!!

あれ、絶対ヤる流れだったよね?!!!!!!

あぁ、なんてタイミングで返ってくるんだようちの両親は!!!

あぁ、なんで俺はまだ童貞なんだ!!!!

まぁ、後日、普通に恵から告白された。

晴れて俺たちのグループは、6分の6がリア充になった。



未だに童貞卒業できてないけどね!!!!!(涙)

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