第4話
変な茶髪青年がさって、どれくらいたっただろう。
砂浜に座り、海を眺めている。
特に行くところも、やりたいところもなかったので
そのままずっと座っていた。
ボーっとしていると後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。
「さくら~ちょっと戻ってきてくれないか~?」
振り返ると兄の姿が見えた。
きっと咲さんの手伝いのことだろう。
「わかった~そっち行くからちょっと待て~」
サンダルをもって兄のいるほうへと足を急いだ。
「なに?海入ってたの?」
足に少しついた砂粒を払っているとそう聞かれた。
「足だけね。でも、洗い場がなかったからすこしべたべたする。」
「そりゃ塩水だからな~。川とかだとそうはならねえんだろうけど。」
「そうだね。」
他愛のない会話をしながら踏切を渡り坂を上った。
「「ただいま~」」
元気な声を意識して家の中にいる咲さんへ自分と兄の帰宅を知らせる。
「おかえり~。ごめんね、桜ちゃん。
ちょっと体しんどくなっちゃって居間と台所の片づけ
バトンタッチしてもいいかな?」
「いいよ~」
「ありがとう。私ソファーのところにいるから何かあったら起こして~」
「はーい。」
中身がまだ入っている箱の中身を取り出し、所定の位置を予想して棚に直す。
所定の位置がわからないものはまとめて咲さんに尋ねた。
そういうことが何度もあったけど咲さんは嫌な顔一つせず優しく教えてくれた。
「ありがとうね。本当に助かる。桜ちゃんがいてくれて本当によかった。」
この人は律儀に何度も私にお礼を伝えてくれた。
その彼女の声を背中で聞きながら、作業を続けた。
「よし、これくらいだろう。」
ある程度、リビングも居間も片づけ終わった。
外を見ると、外の色がだいぶ赤に近くなっていた。
咲さんはすっかり熟睡しているみたいだった。
「お、めっちゃきれいになってんじゃん。」
空気を読まない兄が大声でそう言いながら居間にやってきたので、
急いで静かにと合図を送った。
「咲、寝てんのか。」
「うん、疲れがたまってたんだと思うよ。」
「まぁな、桜も疲れてないか?片づけありがとな。」
私の頭に手を置いてそう尋ねてきたので、
その手を兄が気を悪くならないくらいの加減で手を払った。
「全然大丈夫だよ。てか、夜どうする?なんか作ろうか。」
「そうだなぁ。今日は弁当にするか。俺買ってくるよ。」
そのあと兄は弁当を買いに出かけた。
「咲さん、咲さん、ご飯だよ。」
「ん、ありがとう。」
この人は一日に何回この言葉を言うのだろう。
口を開いたらいつも、ありがとうを口にする彼女にきっと兄は惹かれたのだろう。
「翔、どこのにしたの?」
「夏樹惣菜店の弁当だよ。」
「おいしいやつじゃん。ナイス~!!」
「だろ~(笑)」
ほんとに咲さんと兄は本当に仲がいいな
「桜、早くこっち来いよ!弁当冷えちゃうから。」
「うん。」
そして、私たちは兄の選んだ幕の内の弁当を食べた。
食べることは好きではなかった。
誰かと向き合いながら食べることは私にとって苦痛だった。
私の胃腸はとても繊細だったので、少しでも食べる量を間違えれば
上げて下げて大変だった。
だから、ものを口に入れて咀嚼して飲み込むことが怖かった。
でも、今日はすごくおいしく感じた。
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